受け口をセラミック矯正で治せる?適応範囲と治療費について

受け口をセラミック矯正で治せる?適応範囲と治療費について

反対咬合、すなわち受け口は、審美障害だけでなく、咬合機能や咀嚼機能などにも障害をもたらす歯列不正です。

その反対咬合は放置することなく、適切な治療を受けることが大切です。そして、反対咬合の治療法のひとつにセラミック矯正があります。

セラミック矯正とは、どのような治療なのでしょうか。

このコラムでは、反対咬合とセラミック矯正についてご説明します。

目次

反対咬合とは

反対咬合は、上顎と下顎の前歯部の被蓋関係が正常と逆の被蓋関係、すなわち下顎の前歯が上顎の前歯を外側から取り巻くような咬合関係を示す歯列不正です。

反対咬合の中でも、骨格に異常がある場合を下顎前突症と呼ぶこともあります。

臼歯部の咬合関係が正常で、前歯部の被蓋関係だけが反対になっている場合は、前歯部交叉咬合ということもあります。

反対咬合の検査と診断

反対咬合の治療は、『咬合機能の改善』『咀嚼機能の改善』などの口腔機能の改善に加え、『審美障害の改善』『精神心理障害の改善』を目標に行われます。

これらの治療目標を達成するには、治療開始前の検査と診断が重要です。

検査

反対咬合の検査としては、エックス線写真撮影、顎態模型の製作、口腔内写真撮影、顔貌写真撮影が主に行われますが、症状によっては追加で咬合力検査や咀嚼筋筋電図検査、心理検査なども行われます。

エックス線写真撮影では、パノラマエックス線写真のほか、頭部エックス線規格写真、骨格の状態によってはCTなども撮影されます。

診断

検査によって得られた診断資料をもとに、咬合状態の評価、咀嚼機能の評価、歯列の評価、骨格の評価、審美的評価、異常習癖の有無、精神状態の評価などを行い、診断を下します。

反対咬合の原因

反対咬合の原因は、先天的原因と後天的原因に分けられます。

先天的原因

先天的原因には、遺伝子によるもの、染色体異常、ウイルスなどの環境要因、それらの相互作用が挙げられます。

後天的原因

後天的原因には、舌の形態、悪癖、乳歯などがあげられます。

舌の形態異常

舌の形態異常のひとつである巨舌症では、舌が歯列弓の内側に収まりきらなくなるため、下顎の歯列を過度に圧迫します。

このため、反対咬合や開咬などを生じます。

弄舌癖

弄舌癖の中でも、反対咬合などの歯列不正の原因とされているのが舌突出癖です。

舌突出癖は上顎前突の原因にもなりますが、下顎前歯の唇側傾斜を引き起こすと、反対咬合を生じさせます。

乳歯の早期喪失

乳臼歯、特に第二乳臼歯を早期喪失すると、臼歯部の咬合高径が低下します。

このため、機能的な下顎近心咬合となり、反対咬合を示すことがあります。

乳歯の晩期残存

永久歯は、前歯部では乳歯の舌側に萌出することが多いです。

上顎の乳前歯の晩期残存が生じると、上顎前歯が舌側転位を生じ、反対咬合となります。

反対咬合による病態

反対咬合によって生じる病態としては、下記があげられます。

審美障害

反対咬合では、オトガイ部が突出した側貌になります。

側貌の評価法のひとつに鼻尖とオトガイを結ぶE-ライン(Estetic-line)があります。

E-ライン上に口唇が位置しなくなり、側貌の審美障害が生じます。

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齲蝕症や歯周病

ブラッシングが困難になるため、齲蝕症や歯周病の発症リスクが高まります。

咀嚼障害

反対咬合では前歯部の咬合が困難になります。

また、反対咬合の多くが臼歯部の咬合が低位になっているため、臼歯部での咀嚼効率も低下します。

構音障害

反対咬合では低位舌になっていることが多く、特にサ行の発音に悪影響が生じやすいです。

顎関節機能障害

前歯部で咬合しようとすると、下顎を遠心に偏位せざるを得ず、顎関節に過度な負荷がかかります。このために顎関節に機能障害を生じ、顎関節症を起こすことがあります。

セラミック矯正について

セラミック矯正は、前歯部の被蓋関係の改善に適応のある矯正治療法です。

セラミッククラウンを装着することで、歯を移動させることなく被蓋関係を改善させます。歯を移動させず、クラウンにより被蓋関係を改善させることから、補綴矯正に分類されます。

軽度の反対咬合であれば、セラミック矯正の適応がありますが、オーバージェットが2〜3㎜を超えるようであれば、セラミック矯正での治療は困難です。

セラミック矯正のメリット

セラミック矯正のメリットとして、次のものがあげられます。

治療期間が短い

一般的な矯正治療では、治療期間が2〜3年かかりますが、セラミック矯正なら支台形成の翌週にはセラミッククラウンを装着して治療が終わるため、治療期間が大幅に短縮できるのが利点です。

色調も改善できる

セラミッククラウンは、製作時に任意の色調を選べるので、色調改善も同時に行えます。

抜歯しない

セラミック矯正は補綴矯正なので、歯を移動させません。

歯列弓上の歯の排列位置の過不足の影響を受けないため、抜歯して排列位置を確保する必要がありません。

セラミック矯正のデメリット

セラミック矯正のデメリットとして、次のものがあげられます。

セラミック矯正のデメリットとは?治療を受ける前に知っておきたい予備知識

支台歯形成が不可欠

セラミック矯正は、支台歯形成が必須です。削合された歯は、歯髄炎や齲蝕症を起こすリスクが生まれます。歯髄炎の程度によっては、麻酔抜髄が必要になることもあります。

歯軸と歯冠軸の不一致

歯軸と歯冠軸が一致しなくなることで、歯冠と歯根の交点付近に咬合圧が集中し、歯根破折を生じるリスクがあります。

齲蝕症や歯周病のリスク

セラミック矯正で装着するセラミッククラウンは、天然歯と形態が異なります。

マージン部分のプラークコントロールをしっかりとしておかなければ、この部分から齲蝕症や歯周病を発症することがあります。

破損や脱離

セラミッククラウンが一部欠けたり、セメントの劣化により脱離したりするリスクがあります。

セラミック矯正の治療費

セラミック矯正の治療費は、セラミッククラウンの種類によって異なります。

陶材焼付鋳造冠であれば1本あたり8〜10万円、ジルコニア・オールセラミッククラウンでは1本あたり10〜15万円が相場となっています。基本的にはこの装着したセラミッククラウンの本数分の治療費が、セラミック矯正の治療費となります。

セラミック矯正の費用は?値段の相場と治療の内訳も紹介

セラミック矯正以外の反対咬合の治療法

セラミック矯正以外の反対咬合の治療法は、歯を移動させる歯列矯正になります。

歯列矯正の方法は、以下にご説明する方法があります。

マルチブラケット

マルチブラケットは、歯の表面につけたブラケットとブラケットに設けられたスロットに通した弾性ワイヤーで歯を移動させていく矯正治療です。このためにワイヤー矯正とも呼ばれます。

現在は、マルチブラケットの中でもエッジワイズ法と呼ばれるタイプが主流です。ほとんど全ての歯列不正に適応がある反面、目立ってしまうところがデメリットです。

ワイヤー矯正治療の流れを治療開始から保定完了まで解説

マウスピース矯正

マウスピース矯正は、アライナーと呼ばれるマウスピースを矯正装置として利用する矯正治療法です。

透明で薄く、歯にフィットしたマウスピースを使うため、目立ちにくく、食事や歯磨きのときにはご自身の手で取り外せるのが利点です。

マウスピース矯正のメリットとデメリットは?ワイヤー矯正との違いを比較しながら解説

インプラント矯正

インプラント矯正とは、歯科矯正用アンカースクリューを植立し、これを固定源として歯を動的移動させる矯正手術です。

アンカースクリューは任意の位置に植立できますので、効果的に大臼歯を遠心移動できます。大臼歯を遠心移動できれば、歯の排列スペースを確保しやすくなるため、非抜歯での矯正治療の可能性が高まります。

外科矯正手術

骨格性の下顎前突症では、歯の排列位置を移動させただけでは改善させることは困難です。顎骨の離断手術などの顎矯正手術を行います。

【まとめ】受け口をセラミック矯正で治せる?適応範囲と治療費について

今回は、反対咬合のセラミック矯正についてご説明しました。

反対咬合は、審美障害だけでなく、咬合や咀嚼、発音などの機能障害も伴います。そのため、放置することなく、適切な治療を受けることが大切です。

セラミック矯正での治療を検討する場合は、メリットだけでなくデメリットもしっかりと理解しておく必要があります。


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