オールセラミッククラウンのメリットとデメリットとは?他の材質との違いについても解説

オールセラミッククラウンのメリットとデメリットとは?他の材質との違いについても解説

現在の歯科治療では、齲蝕や外傷などで欠損した部分を人工材料で回復させる修復治療が行われています。さまざまな人工材料が用いられていますが、中でも注目されているのが、オールセラミッククラウンです。

オールセラミッククラウンは、天然歯とほとんど変わらないほど審美性の高いセラミッククラウンです。

今回は、そのオールセラミッククラウンのメリットやデメリットに加え、それ以外のセラミッククラウンとの違いについてもご説明します。

目次

オールセラミッククラウンとは

セラミッククラウンに使うセラミック材料はポーセレンという陶材ですが、天然歯のような色調が得られる反面、強度が弱く割れたり、欠けたりしやすい弱点を持っています。

そこで、ポーセレンを使ったセラミッククラウンの弱点を補うために、内面フレームにジルコニアという強度の高いセラミック材料を使うセラミッククラウンが開発されました。

それが、オールセラミッククラウンです。

すなわち、オールセラミッククラウンとは、セラミック以外の材料を使わない、文字通りセラミックだけで作られたクラウンと言えます。

■オールセラミッククラウンのメリット

オールセラミッククラウンには、審美性の高さ以外にも、さまざまなメリットがあります。

審美性の高さ

オールセラミッククラウンの内面フレームに用いているジルコニアは、光透過性を持っています。

ポーセレンの自然感を活かしつつ、より透明感と自然感を高く再現できるため、オールセラミッククラウンは天然歯と遜色のない仕上がりが得られます。

優れたプラークコントロール

プラークとは、齲蝕や歯周病の原因菌の集合体です。

言い換えると、プラークはお口や歯のさまざまな疾患の原因となり得るため、プラークを取り除くプラークコントロールが、お口や歯の健康増進にとても重要となります。

ポーセレンの表面は、このプラークが付着しにくく非常に衛生的であり、金銀パラジウム合金など、その他の補綴治療と比べると、プラークコントロールがしやすいというメリットがあります。

セラミッククラウンの一種である陶材焼付鋳造冠では、一部露出する金属部分にプラークが付着してしまいます。

陶材焼付鋳造冠と比べてもオールセラミッククラウンは、より衛生的に優れたセラミッククラウンといえます。

金属アレルギーのリスクがない

金属アレルギーは、金属が原因で起こるⅣ型の接触型アレルギーです。

歯科用金属で発症する場合、口内炎や舌炎、掌蹠膿疱症などの病気の原因となりうる可能性が指摘されています。

オールセラミッククラウンなら、金属材料を一切配合していませんから、何らかの歯科用金属に金属アレルギーを示す方であっても問題ありません。

銀歯のリスクと歯科医師がセラミックを勧める理由

強度が高い

オールセラミッククラウンの内面フレームに用いているジルコニアは、1000〜1300MPa(メガパスカル)とたいへん高く、人工ダイヤモンドという別名を持つほどです。

このため、ジルコニアを使ったオールセラミッククラウンなら、高い強度が要求される臼歯部のロングスパンブリッジへの応用も可能です。

生体親和性が高い

セラミックは、生体親和性が高い治療材料です。

アレルギー反応を示すことはないですし、腐食することもありません。

オールセラミッククラウンのデメリット

オールセラミッククラウンにはメリットだけでなく、デメリットもあります。

破折・破損のリスク

オールセラミッククラウンは、ジルコニアを採用したことで内面フレームの破損によるクラウン自体の破損のリスクはかなり低くなりましたが、外層の焼結した専用ポーセレン部分については、そうではありません。

オールセラミッククラウンのポーセレンも、従来の長石ポーセレンと同じ程度の強度しかありませんから、転倒や衝突などにより外力が急激に加わった場合に、欠けたり割れたりすることがあります。

支台歯形成が難しい

外層部のポーセレンの破折のリスクを低減するには、ポーセレン層の厚みに不均等が出ないようにする必要があります。

ポーセレン層の厚さが均一になるように支台歯形成するためには、クラウンの構造や形態を熟知しておくだけでなく、咬合力の分散も考慮しておかなければなりません。

したがって、陶材焼付鋳造冠などそのほかの鋳造冠の形成と比べると、難易度が高くなっています。

加工が難しい

ジルコニアは強度が高いのが利点ですが、その反面、加工が難しい素材です。

ジルコニアが近年普及し始めたのは、ジルコニアの加工に用いるCAD/CAMの精度が向上してきたことが背景にあります。

加工の難度が高いことも、オールセラミッククラウンの価格が高くなる理由のひとつです。

オールセラミッククラウン以外のセラミッククラウン

セラミッククラウンは、オールセラミッククラウンだけではありません。

陶材焼付鋳造冠

オールセラミッククラウンが登場するまで主流だったセラミッククラウンが、この陶材焼付鋳造冠です。

メタルボンド、セラモメタルとも呼ばれます。

オールセラミッククラウンと異なり、内面のフレームに金属が使われており、こちらは歯科技工士によるロストワックス法で作られています。

陶材焼付鋳造冠は、ジルコニアほどの加工の難度はありませんが、ジルコニアと異なり金属には光透過性がありません。このため、透明感や自然感といった仕上がりの点で、オールセラミッククラウンに劣ります。

陶材焼付鋳造冠の治療費は、オールセラミッククラウンより安価ですが、使用する金属の値段が近年、高騰しているためオールセラミッククラウンの価格に近づきつづあります。

e-maxクラウン

e-maxクラウンは、二ケイ酸リチウムガラスというガラス系のセラミック材料を用いたセラミッククラウンです。

従来型のエンプレス(empress)というセラミック材料を使ったセラミッククラウンの改良型として開発されました。

改良型ということで、エンプレス・マックス(empress max)と命名され、その略でe-maxと呼ばれています。

金属材料を全く使っていないため、オールセラミッククラウンと同じく金属アレルギーの方にも問題なく使えます。そして、オールセラミッククラウンと同じく、CAD/CAMで加工されます。

e-maxは、透明感や自然感も優れたセラミッククラウンですが、強度は360〜400MPa(メガパスカル)と、ポーセレンよりは高いですが、ジルコニアほどの強度はありません。そのため、ブリッジとして応用する場合の適用範囲が狭くなっています。

オールセラミッククラウンの治療費

オールセラミッククラウンは、保険診療の給付対象外です。

各歯科医院が独自に治療費を定めていますので、詳しい治療費は相談してもらわなくてはなりませんが、1本あたり10〜15万円ほどが相場のようです。

【まとめ】オールセラミッククラウンのメリットとデメリットとは?他の材質との違いについても解説

今回は、オールセラミッククラウンのメリットやデメリット、そのほかのセラミック治療法との違いについてお話ししました。

オールセラミッククラウンは、天然歯のような審美性の高さが特徴ですが、高い強度を持っているため、ロングスパンのブリッジにも応用できます。

オールセラミッククラウンを選択肢として考慮するなら、その他のセラミッククラウンとの違いを理解した上で選択する必要があります。


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