ワイヤー矯正治療の流れを治療開始から保定完了まで解説

ワイヤー矯正治療の流れを治療開始から保定完了まで解説

矯正治療は、治療期間が長いのが特徴のひとつです。

「そんなに長い間、何をするの?どうして短期間で終わらないの?」

そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ワイヤー矯正治療の流れを治療開始から保定完了まで解説していきます。

この記事を読むことで、矯正治療の中でも最も一般的なワイヤー矯正治療の流れを理解でき、下記のような疑問を解決します。

  • なぜ歯の矯正治療には時間がかかるのか
  • 保定が必要な理由

目次

精密検査

まず矯正治療を開始するにあたり、さまざまな精密検査を行います。

大きく分けると写真撮影、レントゲン、歯型の3つになります。

写真撮影:口腔内写真・顔貌写真

口腔内写真:歯の位置、傾きや咬合(咬み合わせ)関係、歯肉の状態などを確認します。

顔貌写真:顔貌の形や左右差、口唇や口角の位置や状態などを確認します。

レントゲン:セファログラム・パノラマエックス線写真・デンタルエックス線写真など

セファログラム(頭部エックス線規格写真):一定の規格に沿って頭部を撮影するエックス線写真。

矯正における精密検査の中でも最も重要な検査になります。

骨格の診査、歯や顎骨、咬み合わせの状態などを診査します。不正咬合の原因が、顎と歯のアンバランスによるのか、それとも骨格にあるのかなども診査していきます。

パノラマエックス線写真:歯根の向きや、埋伏歯の有無、小児では永久歯の位置や状態などを診査します。

デンタルエックス線写真:歯根の長さ、歯槽骨の状態、う蝕の有無などを診査します。

手のレントゲン:小児矯正の際、手の骨のレントゲンから成長期の段階を診査するために用います。

CT:顎関節の診査や歯根・歯槽骨の精密な診査が必要な場合などに撮影することがあります。

歯型

上下の歯だけでなく、歯肉・口蓋(上顎の天井部分)を含めた型取りを行い、石膏模型を作成します。

11本の大きさ、咬み合わせ、歯の傾き具合や正中(真ん中)の位置、歯列のアーチの大きさなどを診査します。口腔内の状態を再現することが出来るので、治療計画を立てる上での貴重な資料となります。

唾液検査

唾液の質や量、口腔内の細菌の種類や数を調べることにより、う蝕及び歯周病のリスクや対策を行うことができます。最近では、矯正治療前に唾液検査を行う医院が増えてきています。

治療計画の立案・説明・同意

精密検査前の矯正相談とは違い、精密検査によって得られたデータを用いて診査・診断を行います。

それによって、使用する装置や費用、期間、抜歯の有無などの治療方針を説明し、患者様の同意を得ます。

疑問点や不安なことがある場合は、ここでしっかり納得しておくことが大切です。

抜歯・う蝕処置・前処置

矯正治療中は、様々な装置を口腔内に装着します。そのため、セルフケアも難しくなり、う蝕罹患リスクが高くなります。

矯正治療を始める前に、う蝕処置、及びう蝕リスクの高い部分の予防処置を行います。この際、矯正の治療計画を参照しながら処置を行うことが重要です。抜歯予定の歯には、う蝕処置は必要ありません。(暫間処置は必要となる場合があります。)

歯と歯の間の小さなう蝕であれば、歯を矯正移動している最中の、隙間が出来るタイミングで治療を行ったほうが、歯質を削る量が少なく済む場合もあります。歯の形を作る補綴処置の場合は、咬み合わせの問題があるので仮処置までに留めておく必要があります。

抜歯の予定が入っている場合は、このタイミングで抜歯を行うこともありますし、歯の移動状態や顎の成長などをみながら、抜歯を行うか否かを決定していくこともあります。

口腔内のクリーニング

装置の装着前に、歯石やプラークの除去を行います。

矯正装置が歯面にしっかりと接着できるよう、歯の表面清掃、研磨も行います。

矯正装置の装着

ワイヤー矯正は、歯を動かす力を与えるワイヤーと、歯面に接着して歯にワイヤーの力を伝えるブラケットの2つによって構成されます。そして、バネやゴムなどの装置を適時組み込んでいきます。

歯面清掃

ブラケットを装着する歯の表面を、専用のペーストとブラシを用いて清掃します。

エッチング

歯の表面にエッチングという酸処理剤を塗布し、その後の接着剤が歯面に強固に接着するよう処理を行います。

ブラケットの装着

ブラケットに接着剤を塗布し、歯面に接着していきます。この際、最も重要なのはブラケットの位置になります。適正な矯正力が歯に伝わるよう、専門の器具を用いながら位置を決定し、歯面に接着していきます。

その後、接着剤を硬化させるために紫外線照射を行い、歯面にブラケットを装着します。

形態修正・研磨

全てのブラケットを装着し終えたら、余剰な接着剤などを削り取り研磨を行います。

ワイヤーの装着

ブラケットにワイヤーを通します。

これより、動的治療が始まります。

定期的な調整・クリーニング

一か月毎の間隔を目安として、お口の中の状態をチェックし、動的治療の経過をみます。それに伴い、ワイヤーの太さやブラケットの位置などの調整を行います。

動的治療では、歯に矯正力を少しずつかけることによって、歯や歯周組織、顎骨に余計な負担をかけることなく、歯を適正な位置にゆっくりと動かしていきます。また、矯正治療中にう蝕や歯周病に罹患しないよう、ブラッシング指導や機械を用いた口腔内清掃なども定期的に行っていきます。

必要があれば、抜歯やう蝕処置なども行います。

リテーナー(保定装置)の作成

歯の適正な位置への移動が終了したら、ブラケットを除去する前に歯型を採り、あらかじめリテーナーを作成します。ブラケットを除去した日に、保定装置をお渡し出来るようにするためです。

保定に使うリテーナーにはいくつか種類があり、大きく分けると取り外しのできる・できない、ワイヤーの有無などの違いがあります。それぞれの症例によって使い分けていきます。

ブラケットの除去・歯面研磨

動的治療終了後、歯面に接着したブラケットを除去します。歯面に残った接着剤なども取り除き、歯面の研磨を行います。

リテーナーによる保定(静的治療)

ブラケットを除去したその日から、リテーナーによる静的治療が始まります。

動的治療直後の歯は不安定な状態にあり、そのままにしておくと元の位置へ戻ろうとする力がかかります。そのため、リテーナーを用いて歯を正しい位置に留め、歯の周囲の骨や歯肉、筋肉が安定するまで経過を観察する必要があります。

ブラケットを外してから半年間は、最も後戻りがしやすい期間になりますので、食事と歯磨き以外は常にリテーナーを使用します。その後は経過を見ながら徐々に使用時間を短くしていきます。

個人差がありますが、一般的には動的治療と同じ期間リテーナーを使用します。歯科医院への通院の目安は36か月おきとなります。

保定完了

矯正治療によって移動した位置で歯および歯周組織、咬み合わせなどが安定してリテーナーの必要がなくなったら、矯正治療は終了となります。

【まとめ】ワイヤー矯正治療の流れを治療開始から保定完了まで解説

ワイヤー矯正治療の流れを説明していきました。

この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。

  • ワイヤー矯正治療の流れ
  • ひとつひとつの治療工程の重要性
  • 保定完了までが矯正治療であるということ

矯正治療は、とても長い期間を必要とする治療です。

そのすべての時間に意味があるということを理解していただき、患者様・矯正医・歯科衛生士が一丸となって、治療に臨むことが大切です。

歯並びの乱れでお悩みの方は、まずは一度、矯正医に相談してみましょう。


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