歯の矯正治療中、それまであまりしていなかった口臭に気づくことがあります。
矯正治療前と生活が変わっていなくても出てきてしまうことがある口臭、これはなぜでしょうか?
このコラムでは、口臭と矯正治療についてお伝えします。
目次
口臭の原因
口臭と一言で言っても、その原因はいくつもあります。
矯正中の口臭についての前に、一般的な口臭の原因について少し知っておきましょう。
生理的口臭
普通に生活しているだけでも発生してしまう口臭です。
言い換えれば生きているだけで発生する口臭ともいえ、ゼロにすることはできないものです。
唾液
口腔内に出てきたばかりの唾液そのものには臭いはありませんが、代謝されたりする中で臭いが発生します。唾が乾くと臭くなるのもこれになります。
また寝る前や緊張、ストレス環境下などで唾液の量が減って口が渇くと口臭が強くなることもあります。
食品
生理的口臭のうち、よくあるもののひとつです。
食べたものそのものの臭いや、それらの成分が肺から排出されて呼気(吐き出す息)に混じって感じられる臭いも含みます。ニンニクやニラなどの臭いをイメージしていただけると分かりやすいです。
病的口臭
生理的口臭以外に何らかの原因があり、発生する口臭によくみられます。
う蝕(虫歯)
う蝕は必ず口臭の原因となるわけではありませんが、う蝕によってできた穴に食渣(食べカスなど)が溜まったりすることで臭いの原因となることがあります。
歯周病
病的口臭として、一番イメージしやすいものと思われます。
プラークにより歯肉に炎症が起き、そこでまた菌が繁殖し歯肉の炎症が続くということが歯周病では起きます。菌が活動や増殖をする際に様々な物質を代謝しますが、その代謝産物による口臭といえます。
代表的なものとして、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドがあり、この中でも、硫化水素とメチルメルカプタンが90%を占めるとされています。
これらの臭いは、よく卵の腐ったような臭いや生ゴミのような臭いと表現されます。
消化管等口腔以外の疾患
歯周病などはなくても、他の疾患によって口臭が生じることがあります。
代表的なものとして、糖尿病のケトン臭や、肝硬変でのメチルメルカプタンやジメチルサルファイドの臭いがあります。疾患によっては、明らかに口腔内由来とは異なるものもあれば、区別のつきづらいものもあります。
心理的口臭
実際には口臭は無いけれども、口臭があると感じてしまうものをいいます。原因はいろいろありますが、特定することは難しい場合があります。
歯列矯正中の口臭の原因
それでは歯列矯正中に出てくる口臭の原因には、どんなものがあるのでしょうか?
清掃不良
歯列矯正の方法がマルチブラケット法(いわゆるワイヤー矯正)であってもアライナー法(インビザラインなどいわゆるマウスピース矯正)であっても、矯正治療中は何らかの装置が常に口の中にあることになります。
マルチブラケット法では、ブラケット(歯に装着した装置)の陰やワイヤーと歯との隙間などに食渣がたまりやすく、磨きづらいためプラークがつきやすくなります。
アライナー法では、マルチブラケット法のように食べ物がはさまることはないですが、アライナーの内面やアタッチメントの周囲など、汚れのつきやすい部位が発生する点は同じです。
清掃不良な部位があると、そこで菌の繁殖が起こり、口臭の原因となります。
ゴム等に染み込んだ臭い
歯列矯正では特にマルチブラケット法において、さまざまな装置を用いることが多く、顎間ゴムやパワーチェーン、リガチャーゴムなど、ゴム製のものもよく用いられます。
これらのゴム製の装置は、基本的に長期間同じものを使用し続けないことを前提としていますが、それでもパワーチェーンやリガチャーゴムは1か月程度は装着し続けることになります。
そして、これらゴム製器具は、水を吸い、臭いがつきやすい性質があります。どんなに頑張って清掃しても、ゴムに染み込んでしまう臭いについては自力で対応するのは難しい面があります。
う蝕
矯正治療中に清掃不良となった箇所からう蝕になったり、全体的に歯肉炎が起きてしまい、口臭の原因になることがあります。
早期発見ができればよいですが、見つかりにくい部位や修復処置のしづらい箇所(特にブラケット周囲)にできると矯正治療の中断もあり得ます。
歯列矯正期間中の口臭予防について
矯正治療中の口臭予防のために気をつけることは、実は普段のケアと大きく変わりません。ただし、いつもより細やかなケアが必要になります。
清掃補助器具の使用
フロスや歯間ブラシなどの補助器具を用いて、ブラシが十分に届かない箇所までしっかり清掃することが大事です。特にマルチブラケット法では、ブラケットの直下や周辺、ワイヤーと歯との間など、思っている以上にブラシだけでは磨ききれないところは多いです。
そのような場所が清掃不良となるため、狭かったり入り組んで複雑な形状のところには、細い器具や先の細かい器具で清掃する必要があります。
定期的なチェックとクリーニング
セルフケアは口臭予防だけでなく、う蝕や歯周病など矯正治療中のさまざまなトラブルに対し有効かつ大切ですが、それだけで100%大丈夫とはなかなか言い切れません。
トラブルの早期発見や対応、自分だけではなかなか手が届かない箇所まで十分な清掃のため、歯科医院での定期的なチェックとクリーニングを受けるのが理想的です。
【まとめ】歯列矯正中に口臭が臭う原因と予防法
口臭にはさまざまな原因があり、矯正治療中の口臭では矯正治療中ならではの原因として、器具そのものの臭いや清掃不良が関わっている可能性があります。
器具そのものの臭いなど自分ではどうしようもないものもありますが、ケアによって予防、改善できる部分も多いです。
矯正治療中、口臭が気になるようでしたら担当の歯科医師や歯科衛生士に相談してみるとよいでしょう。