誰しも芸能人のように白い歯でいたいものですが、歯にはいろいろな変色症状が認められます。
中でも、歯の表面全体がグレーがかっていたり、灰褐色な模様が認められることがあり、こうした症状でお悩み方では、テトラサイクリン歯が疑われます。
テトラサイクリン歯は、どうして発症するのでしょうか。
今回は、テトラサイクリン歯の原因やその治療法などについてお話しします。
目次
テトラサイクリン歯とは
テトラサイクリン歯とは、テトラサイクリンの沈着によって生じる歯の変色症です。
歯の内側から変色してしまうため、内因性の変色症に分類されています。
テトラサイクリン歯の原因
テトラサイクリン歯は、どうして発症するのでしょうか。
テトラサイクリンとは
テトラサイクリン歯の原因となるのが、テトラサイクリン系の抗菌薬です。
テトラサイクリン系の抗菌薬は、皮膚感染症や気管支炎、喉頭炎、扁桃炎、膀胱炎などのさまざまな感染性疾患に適応があります。
歯科領域でも歯周組織炎、歯冠周囲炎、上顎洞炎、顎炎、化膿性唾液腺炎など広く適応のある抗菌薬です。
テトラサイクリン系の抗菌薬には、鉄や亜鉛、カルシウムなどと結合する性質があります。
テトラサイクリン系の抗菌薬はいろいろありますが、中でもミノサイクリン塩酸塩(ミノマイシン®︎)で生じやすいことが知られており、歯牙形成期にある8歳未満の小児に投与した場合に歯牙の着色やエナメル質の形成不全などの副作用が起こる可能性が指摘されています。
テトラサイクリンによる変色歯の発生機序
永久歯の歯胚の形成は、中切歯・側切歯・犬歯・第一大臼歯は胎児期ごろから、第一小臼歯は出生時に、第二小臼歯と第二大臼歯は出生後8か月ごろに始まります。
そして、歯冠は、第一大臼歯の3歳ごろから、第二大臼歯の8歳ごろにかけて順次完成します。
この期間、すなわち出生直後から8歳ごろの期間にテトラサイクリン系の抗菌薬を服用しますと、形成途上の永久歯のカルシウムにテトラサイクリンが結合します。カルシウムと結合することで、テトラサイクリンは象牙質に沈着します。この象牙質に沈着したテトラサイクリンが原因で、歯の変色をきたすと考えられています。
あくまでも永久歯の成長途上にテトラサイクリンを服用した場合に起こる症状なので、永久歯が萌出した後では、テトラサイクリンを服用しても変色を起こすことはありません。
テトラサイクリン歯の症状
萌出直後のテトラサイクリン歯は、黄染とよばれる軽いオレンジがかった色合いを呈していますが、紫外線を浴びることで、酸化が促進され、色合いが次第に暗くなっていきます。症状が進行すれば、やがてグレーや黒褐色を呈するようになります。
したがって、年代で言えば、若年者よりも年配の方に好発し、部位では臼歯部よりも前歯部の変色の方が強く現れます。
テトラサイクリン歯の治療法
テトラサイクリン歯を改善させたい場合には、どのような治療法があるのでしょうか。
全部被覆冠
全部被覆冠、すなわちクラウンでテトラサイクリン歯を覆ってしまう治療法です。
全部被覆冠の種類としては、前歯部に適応されるコンポジットレジン前装冠、セラミックを使う陶材焼付鋳造冠、いわゆるメタルボンドやジルコニアオールセラミッククラウンが挙げられます。
陶材焼付鋳造冠やジルコニアオールセラミッククラウンは、大変審美性が高く、違和感のない自然な歯に仕上がります。
全部被覆冠は、色調の改善効果がとても高いという利点があるのですが、支台歯全面を形成しなければならないのがデメリットです。
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ポーセレンラミネートベニア
ポーセレンラミネートベニアは、前歯部の唇面の色調と形態の改善を目的に、各個調整した薄いポーセレン(セラミック)を唇面に接着する治療法です。審美性と同時に耐久性も高い治療法です。
ポーセレンラミネートベニアは、形成面をエナメル質にとどめなければならず、残存歯質が健全歯の60%以上確保されていることが不可欠です。なお、支台歯が捻転・傾斜・位置不正している症例は、適用外となることもあります。
ダイレクトボンディング
接着性コンポジットレジンで色調の改善を図る治療法がダイレクトボンディングです。
気になる部分だけを選択的に改善できる点や、印象採得や咬合採得がいらず、治療が1日で終わる点などいろいろな利点があります。
保険診療で用いられる接着性コンポジットレジンでは、経年的に黄色味がかってくる傾向がある上、光沢感や透明感に違和感が拭えません。
一方、自費診療用の接着性コンポジットレジンなら光沢感や透明感も本物の歯と同じような感じになりますし、保険診療の材質と比べると色調の変化も起こりにくくなっています。
ホワイトニング
ホワイトニングは、歯を脱色して白くする治療法です。
ホワイトニングは、歯科医院で行うオフィスホワイトニングと、自宅で行うホームホワイトニングに大別できます。
オフィスホワイトニングは、即効性がある反面、後戻りを起こしやすい短所があります。対して、ホームホワイトニングは後戻りを起こしにくく、効果が長持ちしますが、すぐには効果が実感しにくい傾向があります。
重度のテトラサイクリン歯には効果が乏しい場合もあります。
ホワイトコート
ホワイトコートとは、歯牙用の色調遮蔽材料の一種です。
まず歯面清掃を行いプライマーを塗布します。歯面にベースコートを塗布し、未重合層を除去したのち、トップコートを塗布します。
こうして、変色歯の色合いを遮断し、色調を改善させます。ホワイトコートは、歯を削合することなく、即日で処置が終わります。
テトラサイクリン歯と保険診療の関係
テトラサイクリン歯の色調の改善は、美容治療に該当します。
保険診療の給付は、病気に対する治療が対象ですので、テトラサイクリン歯の治療は本来対象外となります。
しかし、テトラサイクリン歯に齲蝕が認められる場合などは、コンポジットレジン前装冠による治療やコンポジットレジンによる治療であれば、保険診療で受けられます。
どちらの治療法も、セラミックほどではありませんが、テトラサイクリン歯の色調の改善効果も見込めます。
陶材焼付鋳造冠やジルコニアオールセラミッククラウン、ポーセレンラミネートベニア、ホワイトニングなどの審美性の高い治療法は、いずれも保険診療の適応を受けていません。
【まとめ】テトラサイクリン歯とは?その原因と治療法
今回は、テトラサイクリン歯についてお話ししました。
テトラサイクリン歯は、幼少期に服用したテトラサイクリン系抗菌薬の沈着によって生じる変色歯です。歯が全体的にグレーがかった色調になったり、灰褐色の模様が生じたりします。
テトラサイクリン歯は内因性の変色症なので、機械的歯面清掃などでは改善できません。
現在、テトラサイクリン歯の改善方法としては、下記などが行われています。
- 全部被覆冠(クラウン)
- ポーセレンラミネートベニア
- ダイレクトボンディング
- ホワイトニング
- ホワイトコート
症状に合わせて適切な方法を歯科医師と相談して選ぶようにしてください。