いま、差し歯を何にするか迷っていませんか? 差し歯には保険適用されるものと保険適用されないものとがあると分かってはいるものの、初めてで不慣れな場合、なかなか選ぶのはむずかしいものですよね。
例えば、セラミックククラウンは、保険外の差し歯になります。保険適用の差し歯と保険外の差し歯は数種類あり、その特徴も異なります。そこで今回は、それぞれの差し歯がどのくらいの料金がかかるのか、その費用相場をご紹介します。
目次
保険診療と自由診療で作れる差し歯の違い
まず、保険診療と自由診療で作ることのできる差し歯には、どのような違いがあるのか知っておきましょう。特に自由診療は自費で支払うことになるので、どれくらいの費用がかかるのか特に気になるものです。そこで、次の保険診療で作れる差し歯と自由診療で作れる差し歯それぞれについて、違いを挙げていきます。
保険診療で作れる差し歯:硬質レジンジャケット冠、硬質レジン前装冠、銀歯(金銀パラジウム合金)
自由診療で作れる差し歯:オールセラミッククラウン、ジルコニアセラミッククラウン、フルジルコニアクラウン、メタルボンドクラウン、ハイブリッドセラミック、e-max(イーマックスクラウン)、金歯(ゴールドクラウン)
治療にかかる値段が違う
まず治療にかかる値段が違います。
保険診療は、健康保険が適用されるので、6歳~70歳未満の人は3割負担です。一方、保険外の自由診療では全額負担になります。よって、保険適用される差し歯は安い、特にセラミッククラウンなどの自由診療の差し歯では高いといっていいでしょう。
このことから、自由診療の差し歯であれば、基本的に医療ローンを組んで分割払いにて支払っていくのが一般的です。また、自由診療に力を入れている歯科医院では、セラミック治療などの比較的新しい治療法であるために、症例写真や治療を受けた感想などをホームページ上で掲載して紹介するのが一般的になっています。
こうした中、モニター制度が設けられている歯科医院もあります。口元のBefore・Afterの写真や動画を撮影し、さらにアンケートや感想を提供するモニターになることで、費用が割引になる制度です。高額な自由診療を少しでも安く受けるために、このモニター制度を利用するのも一つの方法です。
また、1年に10万円以上の治療費を支払った場合、医療費控除の対象になり、所得控除を受けられることがあります。自由診療の中にも容貌を美化する目的で歯並びを改善する治療といったものではなく、歯並びが悪くて食事が困難な人がセラミッククラウン治療で矯正を行ったという場合に、医療費控除の対象になることがあります。治療内容によって異なりますが、自由診療でも医療費控除の対象になることは抑えておきましょう。
保険適用の差し歯と、保険外の差し歯は、このように治療費の面で大きく異なります。しかし、大事なのは価格だけで選ばず。それぞれのメリット・デメリットを確認することです。後ほどご紹介する、種類別の差し歯の特徴をしっかり確認しておきましょう。
審美性が違う
保険適用の差し歯と保険外の差し歯のもう一つの大きな違いとして、審美性の有無があります。基本的に、保険が適用される治療は、美しさやきれいさが目的ではありません。よって、保険外の自由診療の差し歯のほうが審美性に優れており、自由度も高くなります。
例えば、保険外のセラミッククラウンの中でも、オールセラミックのクラウンは、セラミック治療の中でも最も美しく、白く透明感があり、天然歯に近いといわれています。差し歯を差していることに気づかれないくらいです。
一方、保険診療でよく知られる銀歯は、銀色に光り、差し歯であることが一目瞭然です。前歯には到底入れられないでしょう。このように審美性についてのメリット・デメリットがあります。
治療後の保証が違う
基本的に、保険診療は治療後の保証がないといってもいいでしょう。保証とは、差し歯を装着した後、何か自然と不具合が起きてしまった場合、一定期間の間、無償でやり直してもらえる制度です。
例えば、セラミッククラウンに3年の保証がついていることがあります。この場合、3年間の間、事故や故意による破損など一部を除き、不具合が起きた場合に無料で再度、セラミッククラウン治療をやり直してもらえるといった保証もあります。
これは保険外診療のメリットといえそうです。
保険外診療で受けられる差し歯の値段と種類
では具体的に、保険外診療で受けられる差し歯の値段と種類をみていきましょう。それぞれの種類によって、前歯と奥歯どちらに適しているかが異なりますし、費用相場も異なります。
オールセラミッククラウン
オールセラミッククラウンとは、100%セラミック、つまり陶材と同じ素材でできた差し歯です。先ほども述べた通り、白く透明感があることから見た目がとても良いというメリットがあります。そのため、前歯の治療によく利用されます。
例えば、出っ歯やすきっ歯などの悪い歯並びに対する矯正治療にもよく利用されます。ただし、セラミックの審美性は、技工士の腕でも大きく左右されるため、セラミックを入れたから仕上がりがいいというわけではありません。
歯科用セラミックは歯科技工士が一から作りますが、最近ではコンピューターの活躍で設計と製作までを機械が一部支援することによって作るCAD/CAMシステムが急速に広まってきています。いまではコンピューターの支援なしでは、歯科技工物はできないと言っても過言ではありません。
また、オールセラミックはプラークがつきにくく変色しないというのもメリットです。しかし衝撃に弱く、強い力が加わると割れてしまうという欠点もあります。
金属に比べると強度が落ちるため、噛み合わせの強い部分には使用できない場合があるのです。また、薄く作ると強度が心配なので、厚く作られることが多いです。そのため、土台となる歯を削る量もその厚みの分だけ多くなるのもデメリットといえます。
オールセラミッククラウンの費用相場は次のようになります。
2本以上になると歯科医院によってはセット価格で多少割安になることもあります。
- 1本:約8万~18万円
- 2本:約19万~36万円
- 4本:約38万~72万円
- 6本:約48万~108万円
また、実際のオールセラミッククラウンの治療では、上記の本歯代と共に、治療内容によっては下記の費用がかかってくることがあります。仮歯代については必ずかかってきますのでチェックしておきましょう。
- 仮歯:約8千円/1本
- カラー・形のデザイン:約10万円/1本
- 土台・芯:約2万円/1本
- 神経治療:約1万円/1本
- 抜歯:約1万円/1本
ジルコニアセラミッククラウン
ジルコニアセラミックという材質は、オールセラミックの強度的に脆い欠点を改善したものです。セラミックの歯の裏打ちに人工ダイヤモンドのジルコニアを使用しており、非常に強固な構造になっています。ダイヤモンドは世界一固い鉱石です。
遮蔽性といって、中の色に影響を受けないのもジルコニアセラミックの特徴の一つです。例えば元の歯がとても黄色かったり、神経が死んでしまって黒ずんだりしている方はオールセラミックですと透けてきてしまうことがありますが、ジルコニアセラミックではそのような心配がないというのもメリットです。
また元の歯にすでに太くて長い金属の土台が入っている場合、できれば金属ではないものに交換したいですが、無理に除去しようとすると歯が根から割れてしまうリスクが伴います。
割れてしまった根は、抜歯するしかありません。抜歯をするとその部分のみではセラミック治療を行うことができなくなります。こうしたリスクを減らすため、金属の土台を無理して除去せず、ジルコニアセラミックの遮蔽性を利用して黒い色を隠すことが可能になります。
金属のデメリットである金属アレルギーのリスクもなく、装着後、歯茎が黒くなる恐れもありません。また表面にセラミックを盛って作成するので、色の表現性も高く数十種類から選べ、透明感も出せます。
値段が高いのもデメリットといえますが、前歯の歯並びの矯正のほか、奥歯の小臼歯、大臼歯などの力の加わる歯や、歯ぎしりなどをする噛み合わせの強い方にも安心して使っていただけます。
ある発表論文では、壊れる確率は10年のうち10%以下と言われており、とても信頼性の高い、安定した材質といえます。歯は付け爪と異なりずっと長く使うものです。美しさだけではなく、機能に耐えうる強度と、体への安定性(生体親和性)もきちんとしていなければなりません。
ジルコニアセラミッククラウンの料金相場は、次のようになります。
- 1本:約10万~20万円
- 2本:約20万~40万円
- 4本:約40万~80万円
- 6本:約60万~120万円
フルジルコニアクラウン
フルジルコニアクラウンは、100%ジルコニアでできた差し歯です。
ジルコニアセラミックの構造は、セラミックが表面に焼き付けられている形になりますが、こちらではセラミックを含みません。そのため、強度がより強まり、小臼歯や大臼歯などの奥歯により適しています。このように強度については、ジルコニアセラミック同様、またそれ以上のメリットがあります。
また、強度が高いことから、オールセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンよりも比較的、薄く作ることができ、歯を削る量が少なくて済みます。
デメリットとしては、セラミックがないので見た目が透明感や色の白さに劣るというところです。
値段が気になるところですが、費用相場はジルコニアセラミックよりも若干低くなります。
- 1本:約6.5万~13.5万円
- 2本:約13万~27万円
- 4本:約26万~54万円
- 6本:約39万~81万円
メタルボンドクラウン
メタルボンドクラウンとは、内側のフレームが金属でできており、外側にセラミックが焼き付けられている構造をしている差し歯です。
メタルボンドのメリットは、オールセラミックと比べると歯を削る削除量が多少、少ないことです。これは中身が金属なので、強度が高く、多少薄く作ることができることが理由です。また、前歯、奥歯の小臼歯、大臼歯といったどの部位にでも対応できることも強みです。
熱伝導率がセラミックと比べて優れているので、熱を実感しやすくなります。
メタルボンドのデメリットは、色調がオールセラミックに劣る点です。内面が金属なので透けてしまうためです。また金属アレルギーの方にはリスクがあります。
- 1本:約8万~15万円
- 2本:約16万~30万円
- 4本:約32万~60万円
- 6本:約48万~90万円
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックは、レジンという歯科用プラスチックにセラミックの粉末を混ぜたものです。構造としては内側も外側もすべてハイブリッドです。見た目は白く美しいので、前歯に向いています。強度については比較的割れにくいですが、奥歯の小臼歯や大臼歯には使用が避けられています。
ハイブリッドセラミックは、レジンが持ち得なかった強度や耐久性、見た目がセラミックによって補われています。しかし完全に強度が高いわけではないので、それほど大きなメリットではありません。また、セラミックよりも安価に利用できることから、多少審美性は劣るにしても費用を下げたい人に向いています。
ハイブリッドセラミックの費用相場は保険適用されない場合に次の値段になります。
- 1本:約4万~8万円
- 2本:約8万~16万円
- 4本:約16万~32万円
- 6本:約24万~48万円
第一小臼歯と第二小臼歯は保険適用されます。また金属アレルギーの場合でCAD/CAM装置というものを使用して人工歯を作った場合は、第一大臼歯と第二大臼歯にも保険適用になります。その場合、3割負担で1本当たり約1万円の負担になります。
e-max(イーマックスクラウン)
e-max(イーマックスクラウン)は、ニケイ酸リチウムガラスセラミックという成分を使用したセラミックの一種です。いわゆるガラスでできています。透明感があり、とても色も綺麗な素材であるがゆえに、透明感もあり、審美性に優れています。
オールセラミック同様に美しい見た目のメリットもありますが、同時に、耐久性・強度が高いともいわれているため、奥歯の小臼歯や大臼歯にも適用できます。
ジルコニアセラミックと比べて白く透明感がありますが、クリアランスの状態によっては、ジルコニアのほうがきれいに仕上がる可能性があります。
とはいえ、柔軟性があり、生体親和性も高い素材なので、ジルコニアセラミックと同様、セラミック治療において最先端の材質として注目を浴びています。
e-maxの費用相場は、次のように幅があります。
- 1本:約5万~15万円
- 2本:約10万~30万円
- 4本:約20万~60万円
- 6本:約30万~90万円
金歯(ゴールドクラウン)
金歯のゴールドクラウンは、その名の通り、金を使った差し歯です。金はとても長持ちするといわれている素材で、20年以上持つという話もあります。適合もよく、天然の歯に近い強度と硬さであるため、噛み合わさる歯が傷つきにくいというメリットがあります。
二次虫歯という土台となる歯の虫歯の再発を防ぎ、アレルギーも起こしにくいことから、ゴールドクラウンはとてもいい材質といわれています。しかし、その金色の見た目は、どうしても目立ってしまいデメリットです。奥歯の小臼歯や大臼歯に利用されるのが現状です。
金歯の費用相場は、次のようになります。
- 1本:約4万~9万円
- 2本:約8万~18万円
- 4本:約16万~36万円
- 6本:約24万~54万円
保険診療で受けられる差し歯の値段と種類
続いて、保険診療で受けられる差し歯の値段と種類についてみていきましょう。こちらもそれぞれの種類によって、前歯と奥歯どちらに適しているかが異なりますし、費用相場も異なります。
硬質レジンジャケット冠
硬質レジンジャケット冠とは、MMA(メチルメタクリレート)という素材に金属の粉が混じった硬質レジンがすべてに使われている差し歯のことです。
硬質レジンは、とても強度の高い樹脂、プラスチックと考えてください。異なる色合いのものを何層にも塗り重ねられており、天然歯に近い自然な色合いを出すことができます。審美性が高いので、前歯と犬歯に使用でき保険適用になります。
奥歯には基本的に保険が適用されませんが、小臼歯は噛み合わせても強度に問題ないと歯科医師が判断すれば保険が適用されます。大臼歯は保険が適用されません。
メリットは、見た目も強度も比較的高い上に、保険が適用されることから、コストパフォーマンスが高い点にあるでしょう。
デメリットは、そうはいっても大臼歯に使用すると不安があるほど強度が心配な点にあります。やわらかいことから、折れたり、摩耗したりする傾向もあります。また、レジンは変色する特性があることから、時間の経過とともに黄ばんでくる恐れもあります。
硬質レジンジャケット冠の費用相場は、次の通りです。
- 1本:約3千~6千円(3割負担)
- 2本:約6千~1.2万円(3割負担)
- 4本:約1.2万~2.4万円(3割負担)
- 6本:約1.8万~3.6万円(3割負担)
硬質レジン前装冠
硬質レジン前装冠(ぜんそうかん)は、表側の目に見える部分は硬質レジンで白い見た目がありますが、裏側は金属で作られている構造をしています。前歯の見える位置は白いですが、噛み合わせ部分と裏側は金属の色をしているということです。
一見、メタルボンドと似ていますが、メタルボンドはセラミックで覆われている一方、硬質レジン前装冠は、硬質レジンで覆われている点が異なります。
メリットとしては、裏が金属なので、強度が高いことから、噛み合わせの強い人でも使えるということになります。
しかしデメリットとして、白い部分は硬質レジンであることから長く使うと変色し、光沢も失われて、見た目が厳しくなります。また、すり減りやすく、プラークもつきやすいところがあります。
保険適用範囲は、前歯と犬歯のみで、小臼歯と大臼歯については保険は適用されません。
この硬質レジン前装冠の費用相場は、次のようになります。
- 1本:約5千~1万円(3割負担)
- 2本:約1万~2万円(3割負担)
- 4本:約2万~4万円(3割負担)
- 6本:約3万~6万円(3割負担)
銀歯(金銀パラジウム合金)
銀歯は、銀色をした差し歯で、金銀パラジウム合金の素材を使用してつくられたものです。
銀歯は保険適用され、さらに安価であるというメリットから、審美性よりも手軽さ、汎用性がある点などが特色です。ある程度強度が高いのもメリットです。
しかし見た目が銀色であり、審美性が低く、目立つという点から、銀歯が前歯や犬歯に使われることがないことから適応症例が限られるともいえます。
デメリットとして金属アレルギーが起きやすいという点があります。また差し歯を差していると、歯茎が黒ずむ恐れがあります。
銀歯の費用相場は次のようになります。
- 1本:約3千~5千円(3割負担)
- 2本:約6千~1万円(3割負担)
- 4本:約1.2万~2万円(3割負担)
- 6本:約1.8万~3万円(3割負担)
セラミッククラウンの土台
セラミッククラウンの治療を行うときに、土台を作成する場合、別途、費用がかかります。歯の欠損が大きい場合、天然歯を土台として使えないため、人工の土台を立ててそこへ差し歯を差すのです。その土台には、さまざまな種類があり費用相場も変わってきます。
ファイバーコア
ファイバーコアは、レジンという歯科用プラスチックに、グラスファイバーのピンで補強された土台です。自然な歯に近い見た目や硬さ、弾力などがメリットで、透明感のあるセラミッククラウンの土台としても天然歯の再現性が高いのが特徴です。
保険が適用されず、値段は約1万円~3万円ほどになります。
レジンコア
レジンコアは、歯科用プラスチックに金属のピンで補強されている土台です。強度や耐久性がファイバーコアより低いのが欠点です。またピンが金属なので、透けて見えてしまい、審美性に劣ります。
レジンコアは保険が適用されるため、安価で治療が受けられます。値段は3割負担で500円~1,000円ほどです。
ゴールドコア
ゴールドコアは、金合金や白金(プラチナ)加金などの金属を使った土台です。強度も耐久性も高く、金属といっても金属が溶け出すことはありません。ただし、歯根の破損の恐れはあります。
ゴールドコアは、保険は適用されません。値段は約1万円~3万円ほどです。
メタルコア
メタルコアは、金属だけでできた土台で、強度が高いメリットがありますが、硬すぎて歯根が折れることがあります。また、金属が溶け出す恐れや金属アレルギーの恐れもあります。
また、透明感のあるクラウンの場合、金属が透けて見えてしまうので審美性にも劣ります。
メタルコアは、保険が費用され、3割負担で値段は500円~1,000円ほどです。
【まとめ】保険と保険外の差し歯の値段と種類
保険適用されるものと保険適用されない差し歯、それぞれの種類の特徴と値段を紹介してきました。特にセラミッククラウンは保険が適用されず、費用もそれなりにかかりますが、その分、審美性や強度、長持ちするなどのメリットもあります。
いずれも値段だけで決めず、それぞれについてのメリット・デメリットどちらも考慮して、最も適した差し歯の種類を選ぶのをおすすめします。