矯正治療中は歯磨きがとても難しいですね。
さまざまな形の矯正装置が装着されるので、矯正経験者であれば歯磨きのしにくさは誰しもが抱える悩みかと思います。
実際、矯正治療中のう蝕・歯周病の発生頻度は少なくありません。
う蝕の治療によって、矯正治療を中断せざるをえなくなることもしばしばあります。
この記事では、歯科矯正治療中の歯磨きのやり方、そして、おすすめのアイテムについても紹介します。
この記事を読むことによって、専用のアイテムを使った矯正治療中の正しい歯磨きの方法が理解でき、下記のような疑問や悩みが解決します。
- 矯正治療中の虫歯や歯周病が不安
- 矯正治療中は口臭がきつくなるのが心配
- 裏側矯正ってどうやって歯磨きするの?
- 矯正中に虫歯や歯周病になって歯列矯正を中断したくない
目次
口腔内の磨きにくい3大箇所とその磨き方(可撤式矯正装置・保定装置)
矯正治療といっても、可撤式(取り外しのできる)装置もあります。インビザラインや保定装置がそれに該当します。ですが、長時間歯に装置を装着していることにはかわりがないので、通常の状態よりも、口臭やう蝕、歯周病のリスクは高くなります。
せっかく装置を外すことが出来るので、この機会に口腔内の磨きにくい場所を理解し、その磨き方を習得しましょう。
臼歯部咬合面
歯の咬合面には、複雑な溝が刻まれています。ここを磨くには、歯ブラシの毛先を溝の中まで届かせる必要があります。
まず、咬合面に直角に歯ブラシの毛先を軽く当てます。そこから小刻みに前後に歯ブラシを動かします。大体2本ずつ、往復で10回位磨いていきましょう。
歯頚部(歯と歯肉の境目周辺)
口臭や歯周病の予防に大変重要な部位です。
歯ブラシを歯と歯肉の境目の部分に軽く当てます。その時、垂直に当てるのではなく、上の歯は斜め下から、下の歯は斜め上から当てて、歯肉をマッサージするようなイメージで磨きましょう。
歯間部
歯間部はどうしても歯ブラシが届きにくい部分なので、デンタルフロスおよび歯間ブラシの併用をおすすめします。フロス及び歯間ブラシは、ただ歯と歯の間に入れるだけではなく、歯に沿わせるように動かすと効果的です。
この3か所の歯磨きの方法は、可撤性装置を用いた歯列矯正中の歯磨きだけでなく、ワイヤー矯正や裏側矯正を行っていくうえでも基本となるものです。
歯列矯正を開始する前までに、この3か所の磨き方はマスターしておくようにしましょう。
ワイヤー矯正中の磨きにくい3大箇所とその磨き方
矯正治療中、特にワイヤー矯正の場合はどうしても磨きにくい箇所が出てきます。
矯正装置の形状を考えた上で、どこに汚れが残りやすいかを理解し、どのような器具を用いて、どうやって磨いていけば良いのかを理解していきましょう。
ブラケット周囲
ブラケットとは、ワイヤー矯正の際に、歯の表面(裏側矯正の場合は舌側)に装着する四角い矯正装置です。ブラケットと歯との境目の部分は汚れが付着しやすいので、ブラケットの周囲4辺を清掃する必要があります。
ブラケットの上と下の辺の部分は、先述した歯頚部と同じように、歯とブラケットの境目に歯ブラシの毛先を当てて、1歯ずつ磨きましょう。
ブラケットの左右の縦の辺の部分は、その上から横向きのワイヤーが通っているので、非常に磨きにくい部分です。まずは、歯ブラシを縦にして、歯とブラケットの境目に歯ブラシの毛先を当てたら上下に動かすというよりも、振動を与えるようにして磨きましょう。それでも落としきれない汚れは、ワイヤーの裏に歯間ブラシやデンタルフロスを通して磨きます。
ワンタフトブラシという、一本の毛束の歯ブラシを用いるのも良いでしょう。
裏側矯正の場合は、ワンタフトブラシをメインに使って磨いていくことをお勧めします。
ワイヤー下歯間部
ワイヤー矯正は、歯の真ん中にワイヤーが通っているため、容易にデンタルフロスを通すことが出来ません。
歯肉に近い部位は、歯間ブラシを用いると良いでしょう。SSSなど、ごく細いタイプのものがおすすめです。
歯肉縁から、歯肉を傷つけないように上顎は下方に向かって、下顎は上方に向かってゆっくり挿入し、左右の歯面に沿わせるようにして動かします。また、歯間ブラシを使用する際には一緒にブラケットの縦の辺の部分も磨くようにしましょう。
歯と歯が接している場所や、歯が重なって隙間がない場合は、デンタルフロスを用います。まずはフロスの一端をワイヤーと歯面との間に通し、通した先を歯間部に通し、歯間ブラシ同様、左右の歯面に沿わせるようにして動かします。この際、一緒にブラケット周囲で歯ブラシの毛先が届かなかった部分も清掃しましょう。
歯間ブラシやデンタルフロスは、ブラケット周囲を清掃するのにも効果的です。歯間部を清掃するタイミングで、ブラケット周囲も清掃していくと効率がよくなります。
最初はなかなかうまくいかないかもしれませんが、毎日行っていると次第に慣れてきます。また、便利な補助的アイテムなどもありますので、のちほどご紹介する物と併用して使っていきます。
歯頚部
歯頚部のすぐ上にブラケットがあるために、食べ物が停滞しやすく、汚れも残りやすくなります。
歯頚部は、基本的には可撤式矯正装置・保定装置と同じように磨きます。
矯正治療中は、歯の位置だけではなく歯肉や歯槽骨の形も変化します。普段よりも刺激に敏感に反応しますので、優しく、丁寧にしっかり磨くことを、いつも以上に気を付けましょう。
自分の歯磨きの癖を理解し、効果的なセルフケアを行う方法
歯磨きは、矯正治療に関係なく、子供の頃から毎日行っているものですね。そのため、いつのまにか磨き方に自分の癖がついている人がほとんどです。右利きの方は、右の犬歯付近の清掃がおろそかになりがちであったり、いつも歯ブラシが当たっていない箇所があったり・・・。
矯正治療中の歯磨きも同じです。慣れてくる頃になると、思わぬ癖がついて、単純なところであっても磨き残しが出てきたりしやすいのです。
セルフケアを頑張っている方こそ、定期的に歯科医院でチェックしてもらうことがとても重要です。
歯科医院でのPMTC
歯列矯正中は定期的にPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning:専門家による機械を用いた歯面清掃)を行います。
清掃を始める前に、汚れが残っている箇所、及びその部位の磨き方を毎回教えてもらうようにしましょう。また、セルフケアの際に磨きにくい場所や、気になるところなども積極的に質問することが重要です。PMTCを単なる定期清掃と考えず、衛生士さんとセルフケアの仕方を共有する場と捉えると、非常に有意義なものとなります。
自宅でのセルフケア
歯科矯正中の歯磨きで一番大切なのが、やはり自宅でのセルフケアになります。
ワイヤー矯正(特に裏側矯正)の場合は、一本一本ていねいに磨く必要があり、フロスや歯間ブラシ、ワンタフトブラシなども併用していくと、一回の歯磨きにとても時間がかかります。
これを一日三回行うのはなかなか大変です。そんな時は、一日の中で一回はかならず時間を確保して、しっかり磨く習慣をつけましょう。理想的なのは、最も菌が増殖しやすい就寝前です。
歯磨きの際は、鏡を見ながら行います。裏側矯正の場合は、デンタルミラーという、歯科医院でも使っている小さな鏡も準備しましょう。
最初は染め出し液を使用し、汚れを赤く染めてから磨くとわかりやすく効率的です。慣れてきてからも、時々染め出し液を用いてチェックを行うようにしましょう。磨き方に癖が出てきたときにも、気がつきやすくなります。
歯磨き粉は、多くつけてしまうと長時間磨きにくくなってしまいますので、ごく少量、もしくは最初はつけずに行います。また、セルフケアの一環として、フッ素の使用をおすすめします。
主にフッ素配合の歯磨き粉、フッ素ジェル、フッ素洗口液の3つの方法があります。
フッ素配合の歯磨き粉の場合は、汚れをすべて落としたあとで、適量(15歳以上なら2㎝程度)を歯ブラシの上に出し、歯磨き粉を歯全体に行きわたらせるように軽く磨いてから、10〜15mlの水で1回だけうがいをすると効果的です。
ここで大切なのは、どの方法を選ぶかよりも、継続していくことです。また、インビザラインや保定装置など、可撤式(取り外しの出来る)装置を使用されている場合は、マウスウォッシュ(洗口剤)の併用をおすすめします。
口腔内に装置が入っていると、唾液による自浄作用が働きにくくなります。マウスウォッシュで口腔内の細菌数を減少させた上で、装置を使用すると良いでしょう。その際は必ず、歯磨きを行った上でお使いください。
矯正中の口腔内清掃に便利なおすすめアイテム
フロススレッダー:フロスを通しにくい場合に、簡単にフロスを挿入しやすくする補助アイテムです。お裁縫の針に糸を通す「糸通し」に似ている構造。
スーパーフロス:一片の先が硬くなっており、歯間部やワイヤー裏に通しやすくなっています。中央付近にはスポンジのような肉厚なフロス部分があり、汚れを落としやすく、その先には普通のフロスもついているので、一本で何役もの働きが出来るフロスです。
カモノハシ型矯正用フロッサー:フォルダーがついたフロスです。ブラケットが装着していても、歯間部に挿入しやすい形状に作られています。ブラケット周囲の清掃などは難しいのですが、外出先での手軽な清掃アイテムとして便利です。
矯正用歯ブラシ各種:ワンタフトブラシ以外にも、矯正用の歯ブラシは様々な形、大きさのものがあります。まずは歯科衛生士さんに相談してみるのが良いでしょう。
歯列矯正は、個人差が大きい治療です。自分のお口の中の状態、使用している矯正装置の種類などを総合的に判断して選ぶのが一番おすすめです。
【まとめ】矯正治療中の歯磨きのやり方とおすすめのアイテムも紹介
歯科矯正中における歯磨きの方法および、おすすめのアイテムについて説明してきました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
- 歯に矯正装置を装着した際の歯磨きの仕方
- 可撤式(取り外し可能)の矯正装置、保定装置使用時の歯磨きについて
- 歯科医院におけるPMTCへの取り組み方
- 自宅でのセルフケアの注意点
歯列矯正中に、最も大変なのがご自身での歯磨きかもしれません。
しかし、矯正期間中に正しい歯磨きを行うことによって、矯正中の虫歯や歯周病の発生を抑えるだけでなく、矯正終了後もお口の中の健康を保っていくことが出来るかと思います。
歯列矯正について、疑問や困ったことがあれば、まずは矯正医・歯科衛生士に相談してみましょう。