齲蝕や歯周病の予防には、デンタルフロスなどの歯間部用清掃用具を使用した、歯間部のプラークコントロールが必須です。
また、口臭のうち治療対象となる病的口臭では、歯間部の歯周病からの臭いの発生が多く、歯間部をきれいに保つことができるかどうかが口臭の予防にたいへん重要です。
今回は、お口の健康を保つために欠かせないデンタルフロスの効果や使用方法などについてご説明します。
目次
デンタルフロスについて
平成28年に行われた厚生労働省の歯科疾患実態調査結果によりますと、デンタルフロスや歯間ブラシなどの歯間部用清掃用具を使って歯を清掃している人の割合は、男性で30.6%、女性で46.3%でした。
デンタルフロスの使用率はあまり高いとはいえません。
使用率を高めるために、まずデンタルフロスがどういうものかを理解してもらう必要がありそうです。
デンタルフロスとは
デンタルフロスとは、歯間の食物残渣(しょくもつざんさ)やプラークの除去を目的とした細い糸状の歯間部用清掃用具です。
歯間部は歯ブラシの毛先が届きにくく、歯ブラシだけではなかなかきれいに清掃できません。
そこでデンタルフロスを歯ブラシと併用することで、プラークコントロールが効果的に行えるようになります。
デンタルフロスと歯間ブラシの使い分け
歯間部用清掃用具にはデンタルフロスの他、歯間ブラシがあります。
正常な歯列であれば、歯間ブラシの最も細いタイプである4SやSSSで歯間部の清掃が可能です。
しかし、歯列が叢生になっている場合や小臼歯などに多い舌側転位歯、歯根の近接した歯では、歯間ブラシを挿入することは困難です。このような歯列は、デンタルフロスでなければ歯間部を清掃できません。
一方、歯肉退縮した大臼歯の根分岐部はデンタルフロスでは清掃できず、歯間ブラシが必須です。
清掃したい歯や歯列に応じて、使い分けることが大切です。
デンタルフロスの利点
デンタルフロスを使えば、歯ブラシでは届かない歯の隣接面や歯肉溝内部のプラークを除去することができます。
歯周病は、歯間部の歯肉炎から発症し、歯周炎に発展していく傾向があることが指摘されています。
デンタルフロスを使うと歯間部のプラークコントロールが向上しますので、歯周病のリスクを低減する効果が得られます。
齲蝕症の原因菌もプラークの中に潜んでいますので、歯周病と同様にリスクを低減できます。
また、デンタルフロスは全身的な健康にも関係があるとする研究報告もあります。
2016年に日本で行われたデンタルフロスなどの歯間部清掃用具の使用頻度と全死亡のリスクに関する研究では、歯間部清掃用具の使用者では使用しない人と比べて死亡リスクが低下し、特に週5回以上使うと26%もリスクが下がったそうです。
このようにデンタルフロスには、数多くのメリットがあります。
デンタルフロスの種類
デンタルフロスは、ロールタイプとホルダータイプに大別されます。
ロール(糸巻き)タイプ
デンタルフロスを糸巻きで束ねたタイプです。
使うたびに引き出して、適切な長さに切断して、指先に巻いて使います。
ロールタイプのデンタルフロスは、繊維の滑りをよくして歯間部に挿入しやすいようにしたワックスタイプと、滑りにくいけれどもプラークを絡め取りやすいアンワックスタイプに分けられます。
中には、歯間部に挿入すると唾液を吸収して糸がスポンジ状に広がる製品もあります。
ホルダー(ハンドル付)タイプ
デンタルフロスがホルダーに取り付けられているタイプです。
ホルダーの形状は、F型とY型があります。
F型は前歯部の歯間部に、Y型は臼歯部の歯間部に適しています。
デンタルフロスの使い方
では、デンタルフロスの効果的な使用方法についてご説明します。
デンタルフロスの使用頻度
デンタルフロスの使用頻度は毎食後が理想的ですが、少なくとも1日1回は行うことが推奨されています。
ロール(糸巻き)タイプの使い方
- デンタルフロスを40cmほど引き出して切断します。
- 両手の中指に2〜3回程度巻きつけて、15cmほどの長さにして張ります。
- 指で掴んで1〜2cmほどの長さにつかみます。
- 歯間部に当てます。
- 左右に動かしながら、少しずつ挿入します。
- 上下に動かして、プラークを除去します。
- 終わったら、舌側の指に巻きつけているデンタルフロスをほどき、頬側、もしくは唇側から引き抜きます。
ホルダー(ハンドル付)タイプの使い方
- 歯間部にデンタルフロスを当てます。
- デンタルフロスを左右に動かしながら挿入します。
- 上下に動かして、プラークを取り除きます。
- 終わったら、左右に動かしながら、上方に取り出します。
デンタルフロスの使用上の注意点
デンタルフロスを使う上で、ご注意いただきたいことをご説明します。
両隣接面をしっかり擦る
デンタルフロスをただ挿入しただけではプラークコントロールはできません。
隣接面にデンタルフロスをしっかり当てて擦らなくてはなりません。
歯肉溝まで入れる
デンタルフロスを効果的に使うためには、歯肉溝の中までフロスを挿入することが大切です。
歯肉を傷つけないように
コンタクトポイントを通過する際には強い力が必要です。
通過した後、勢いよく挿入を続けると歯肉を損傷するリスクがあるので注意が必要です。
ひっかかったりほつれたりする場合は
挿入したデンタルフロスが引っかかったり、ほつれたりする場合は、隣接面齲蝕を生じている可能性があります。
【まとめ】デンタルフロスの効果的な使い方と最適な使用頻度
今回は、デンタルフロスの効果的な使い方などについてご説明しました。
デンタルフロスを適切に使用すると、齲蝕や歯周病の予防効果だけでなく、全身の健康を保つ効果も期待できます。
「Floss or Die」つまり、デンタルフロスをきちんとしないと(歯間部の清掃をおろそかにしていると)、死んでしまいますよ(冠動脈性心疾患のリスクとなり、死に近づきますよ)という言葉もあります。
今回の記事を参考に、デンタルフロスを効果的に使うようにして、健康を増進しましょう。