口臭の種類と原因

口臭の種類と原因

「お口のエチケット」として、人々の口臭への関心が高まっています。しかし、自分のにおいを客観的に確認することはとても難しく、「自分には人を不快にさせる強い口臭があるのでは」と不安に思っている人も多いのではないでしょうか。

ここでは、口臭の種類、原因物質、口臭に影響を与える因子について解説します。

目次

口臭の種類

1998年に治療の必要性に沿った口臭診断分類が構築され、現在では国際的な基準となっています。口臭症の国際分類に基づく診断別比率では、実際に口臭がある患者は約6割(生理的口臭と病的口臭)で、その口臭発生源は、80%以上が歯科の専門領域である口腔局所に限られています。

真性口臭症

社会的容認限度を超える明らかな口臭が認められるものをいいます。

ネギ、ニラ、ニンニクなどを食べた後の口臭は、口の中の食物残渣が直接の原因の場合と、体内で消化吸収されてにおい物質が血流によって運ばれて、やがて肺から呼気として排出されて、息がにおう場合があります。

アルコールも体内で吸収され、肺から揮発性のアルコール成分が排出されるため、お酒に酔った人の吐く息はくさく感じます。喫煙者の口のにおいは、主にタールやニコチンが原因です。

このような飲食物や嗜好品による口臭は原因が特定でき、時間の経過とともに減少する一時的なものなので、病院での治療の必要はありません。そのため、食品・嗜好品による口臭は、口臭症の国際分類のカテゴリーには含まれません。

しかし、タバコは、口臭の発生原因となる歯周病を悪化させることが判明しています。健康のために禁煙に取り組むことは必要です。

生理的口臭

器質的な変化や原因となる疾患が認められないものです。先ほど述べたような、ニンニク摂取などの一過性のものは除きます。

原因疾患がはっきりしていない生理的口臭は、起床時、空腹時、疲労・緊張時に発生し、日内変動があり、その約6割が舌苔に由来するといわれています。

病的口臭

原因疾患がはっきりしている口臭で、歯周病が主原因の口腔由来と全身由来のものとがあります。

口腔由来の病的口臭

口腔内の原疾患、器質的な変化、機能低下などによる口臭です。具体的には、歯周病、多量の舌苔付着、唾液分泌の減少、進行した虫歯、義歯の不潔、口腔癌などの原因が挙げられ、歯科での治療が必要となります。

全身由来の病的口臭

耳鼻咽喉や呼吸器系などの疾患によるもので、医科での治療が必要となります。

仮性口臭症

患者は口臭を訴えますが、社会的容認限度を超える口臭は認められず、検査結果などの説明により訴えの改善が期待できるものをいいます。

口臭恐怖症

真性口臭症、仮性口臭症に対する治療では訴えの改善が期待できないものをいい、精神科領域の症状が身体症状の一つとして現れるもの(心身症)や統合失調症の初期症状にみられる対人恐怖の形をとるものなどがあります。

口臭の原因物質と発生のメカニズム

口臭の主要な原因物質は、揮発性硫黄化合物(VSC: Volatile Sulfur Compounds と呼ばれるガス)です。

揮発性硫黄化合物は口内細菌が、口腔から剥離した上皮細胞や歯肉溝の滲出液などに含まれるタンパク質を分解して、システインやメチオニンなどの硫黄を含んでいるアミノ酸をもとに生成します。発生するにおいの強さは、口腔内の細菌の種類や量、歯・舌・義歯などの清掃不良、唾液分泌量によって異なります。

代表的なVSCは、「硫化水素」「メチルメルカプタン」「ジメチルサルファイド」の3種類です。

表 主な口臭の成分である揮発性硫黄化合物(VSC)のにおいの特徴

硫化水素 卵の腐敗臭
メチルメルカプタン 野菜の腐敗臭
ジメチルサルファイド 磯のにおいのような腐敗臭

また、検出される量は少ないですが、アンモニア、アミン類、インドール、スカトールなどの揮発性窒素化合物、低級脂肪酸、さらにアセトンやアセトアルデヒドなどの揮発性有機物が、口臭のにおいの成分に含まれることがあります。これらの成分は特に、医科疾患に関連した口臭に多く認められる成分です。

口臭に影響を与える因子

口臭の主要な原因物質である揮発性硫化物に特に強く影響する因子を挙げます。

舌苔の増加

舌苔は舌の表面に白っぽく付着しており、口の中の上皮が剥がれ落ちたものや白血球などを含み、細菌が繁殖して、バイオフィルムを形成します。その付着量や色調は個人差があり、さらに口腔や全身の健康状態によっても変化します。

舌苔は、年齢や性別にかかわらず誰にでもできるもので病気ではありません。しかし、舌苔を構成する細菌が角化上皮に多い硫黄を含むタンパク質を分解することによって口臭の原因となることが知られています。舌苔の付着量が多い場合は清掃が必要です。

自分で舌苔の付着量を判断することは難しいと思いますので、気になる人は歯科医院にご相談ください。

歯周病

口臭原因菌の大部分は、歯周病の原因菌であることから歯周病患者の多くに口臭が確認されます。

一般的に初期の歯周病は痛みが少ないため、疾病に罹患しているという意識を持たないままに放置されることが多いです。歯周ポケット内には歯垢(プラーク)が付着し、その内側には歯石が形成されるようになります。プラーク中の細菌は、ポケットからしみ出す滲出液などを栄養源として増殖し、さらなる炎症を惹起するという悪循環を形成します。

歯周病が進行したときに生じる、歯周ポケットからの排膿も嫌なにおいを発します。スケーリングに始まる歯周治療が必要であり、歯周診断に従って治療が行われます。

また、冠内部の腐敗や食渣が溜まるような大きな虫歯が口臭の原因となる場合があります。しかし、この場合は口臭を主訴として受診する患者さんは少ないです。虫歯が原因の場合は、原因歯を治療することで口臭は消失します。

唾液分泌量の低下

唾液はさまざまな働きがありますが、特に浄化作用、抗菌作用、歯質保護作用、緩衝作用、再石灰化作用は口腔衛生学的に重要な意義を持っています。

  • 浄化作用:唾液によって溶解された飲食物を希釈すると同時に、食物残渣などを洗い流します。
  • 抗菌作用:抗菌作用を持つ物質で細菌に抵抗します。
  • 歯質保護作用:歯面に膜を形成し、酸による脱灰から歯質を保護します。
  • 緩衝作用:唾液には緩衝能があり、酸やアルカリが加えられても口腔内やプラーク中のpHが変動しにくいです。
  • 再石灰化作用:唾液中にはカルシウムイオンやリン酸イオンが存在し、再石灰化を促進させます。

唾液の分泌が少なくなり、これらの作用が低下すると、口臭の原因となるだけでなく、虫歯や歯周病になりやすくなる、舌の痛み、物がうまく飲み込めない、口が乾いて話しにくいなど、さまざまな症状を引き起こす原因となります。

加齢とともに唾液の分泌は少なくなるといわれますが、薬の副作用、糖尿病や腎不全などの全身疾患、ストレス、喫煙、シェーグレン症候群など複合的なことが考えられます。

口腔衛生の状態

プラークは、歯の表面に付着する主に細菌からなる構造物です。プラークも舌苔と同様、細菌が含まれており、このような口腔内不潔物は口臭の原因となります。

プラークが長期間放置されると、石灰化し、歯石となります。歯石の表面は粗造なため、多くのプラークが付着するので、口腔衛生上の大きな問題となります。歯石が沈着することで、口臭の原因である歯周病も進行させます。

プラークは、ただ単に歯の表面に付着した細菌の塊というだけではなく、細菌自体が粘着性の高い菌体外多糖を産生して膜を作り、その中で種々の菌が共存する「バイオフィルム」であることが分かってきました。セルフケアだけでは、バイオフィルムの完全な除去は困難であるといわれているので、定期的に歯科医院でプロフェッショナルケアを受けることも大切です。

歯に被せた冠が古くなって穴が開いていたり、隙間ができていたりすると汚れが溜まりやすくなり、口腔内が不潔になります。また、義歯のプラスチック部分は色やにおいを吸着するので、口臭の原因となっている可能性もあります。

【まとめ】口臭の種類と原因

口臭にはさまざまな種類や原因が考えられますが、口臭の大部分は口の中に原因があり、その多くは舌苔と歯周病です。

口臭は気にする人が多い一方で、自己識別が難しいこともあって、強い口臭があっても本人は自分のにおいに気づいていない場合もあります。口臭に悩まれている方は、歯科医院にご相談ください。

口臭予防とチェック方法

口臭ケアと対策


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