日々の歯磨き(ブラッシング)をがんばっていても虫歯ができてしまったり、歯肉が腫れてしまったり、口の中のトラブルが起こってしまうことがあります。
ブラッシングの重要性はテレビなど、さまざまなところで見聞きすることはありますが、正しいやり方や手順などを教えてもらう機会はほとんどありません。
そこでこの記事では、効果的なブラッシングとその手順を紹介します。
この記事を読むことで、歯磨き(ブラッシング)について理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
- ブラッシングに順番ってあるの?
- 虫歯予防と歯周病予防でブラッシングは違うの?
- 歯磨き粉はどれくらい使うのがいいの?
目次
ブラッシングの手順
ブラッシングのテクニックを見ていく前に、全てに共通する事として、ブラッシングはどのような手順で進めていったら良いか見てみましょう。
ブラッシングは最初に始める場所を決め、そこから一筆書きで進めていきます。
たとえば右利きの人であれば、左上か左下奥の頬側が始めやすいと思います。そこから頬側を右側まで磨いていき、右奥まできたら舌側に移り、今度は左奥に戻るようにして磨いていきます。
頬側と舌側が終わったら、また左奥から咬合面(咬み合わせの面)を右奥まで磨きます。そこまで済んだら、上から磨き始めたなら下に移り、同じようにして進めます。
歯ブラシでの磨きが終わったら、歯ブラシだけでは磨ききれない部位の清掃に移ります。
歯と歯の接点(隣接面)はフロスを、歯肉退縮が起きていたり、ブリッジが入っている場合は歯間ブラシ、少しだけ顔を出した親知らずや複雑な矯正装置がある場合はタフトブラシなど、それぞれ使用して磨いていきます。
目的別のブラッシング法
ブラッシング法には、いくつもの種類があります。
教科書に載っている主なものだけでも5種類ほどあり、教科書には載っていない、オリジナルのものを含めるとさらに数は増えます。
各ブラッシング法には利点と欠点があるため、一つだけのブラッシング法を採用するのではなく、いくつかのブラッシング法を組み合わせる必要があります。
ブラッシングの基本
ブラッシング圧とストロークの大きさは、すべてのブラッシング法に共通する基本となります。
ブラッシング圧は100g程度が推奨され、ブラシを当てたとき歯肉の色がわずかに白くなる程度が目安と言われています。爪を指で押してみると、どの程度の力加減かわかりやすいです。
ストロークの大きさは前後各5㎜程度、全体で1㎝ほどの範囲が推奨されます。
ブラッシング圧やストロークが大きくなると、歯肉退縮やNCCLと呼ばれる歯の根本のえぐれを引き起こし、知覚過敏が発生するおそれがあるため、適正とされる範囲内で磨くよう心がけましょう。
また歯磨き粉の使用も、現在のブラッシングでは重要な要素です。
一定以上の濃度のフッ化物(フッ素)を用いることで、口の中の菌の活動を抑え、虫歯予防ができると考えられています。
「プラークを物理的に除去することが最重要で、歯磨き粉は少量または無くてよい」とする時代もありましたが、今は歯ブラシのヘッド全体に歯磨き粉をつけて、十分な量の歯磨き粉を使うのがよいとされています。
虫歯予防がメインのブラッシング
スクラビング法、フォーンズ法と呼ばれるものがあります。
歯面に垂直にブラシを当て、前後または小さな円を描くようにして動かします。
歯頸部(歯と歯茎の境界付近)や隣接面に磨き残しができやすいため、フロスや次に紹介する方法と併用します。
歯周病予防がメインのブラッシング
バス法と呼ばれるものが一般的です。
歯頸部に、歯面に対して45度の角度で当て、前後に動かします。
毛先は軽く歯肉の中に差し込みます(強さは歯肉の色がわずかに白くなる程度までにとどめます)。
習得が先の方法に比べて難しいとされていますが、歯周病予防と治療のうえで必須のブラッシング法です。
この方法は歯頸部の磨き方に特化しているため、それ以外の歯面については他の方法で磨く必要があります。
ブラシが届きにくい歯へのブラッシング
ブラッシング法として紹介されるものは、ある程度以上きれいに並んだ歯列が前提です。
現実には歯の傾斜や捻転、叢生などにより、ブラシが届きにくいところがあることが多いです。そのような場所は特定のブラッシング法にこだわらず、タフトブラシを使用したり、垂直方向に歯ブラシを動かしたり、毛先を突っ込むようにして磨くなどの工夫が必要になります。
どのようにして磨けばよいかは、歯科医院で磨き方をレクチャーしてもらうのが確実です。
それでもブラシが届かないところは
横向きに生えている親知らずや頬側や舌側に大きく傾いて生えている歯は、紹介してきた方法でも磨ききれないことがあります。
特に親知らずは、その手前の歯に致命的な虫歯を作ってしまうこともあり、どうしてもブラシを届かせられない場所があることは、口腔内の健康にとってあまりよいことではありません。ブラッシングを確実に行えるようにするために、親知らずの抜歯や歯科矯正で磨きにくいところを無くしてしまうことも考えてもよいでしょう。
【まとめ】正しい歯磨きのやり方と手順
歯磨きを効果的に行うためには、歯磨き粉を十分に取って、歯をひとつひとつ順番に磨き、磨きづらい箇所は個別に磨いて磨き残しがないようにしていきます。
この記事では、下記のようなことがわかったのではないでしょうか。
- ブラッシングはスタートを決めて一筆書きで
- 歯磨き粉はヘッド全体に十分な量を使う
- 適度なブラッシング圧とストロークの大きさで歯肉退縮や知覚過敏を予防する
- いくつかのブラッシング法を組み合わせて磨くのが効果的
「自分のブラッシングがこれでいいのかわからない」「磨きにくくて困っている」といった方は、一度、歯科医院ブラッシングの指導を受けるのがおすすめです。個々の口腔内の状態に合った、適切なブラッシング法を提案いただけるはずです。