ガミースマイルは病的なものではなく、審美的な顔貌症状とされています。このため、軽度のガミースマイルは問題となりませんが、過度なガミースマイルは審美的な点から問題となり、何らかの治療が必要となります。
現在、ガミースマイルに対しては、症状や原因に応じた種々の治療が施されています。そのひとつにセラミック治療があります。
このコラムでは、ガミースマイルに対するセラミック治療についてお伝えします。
目次
ガミースマイルとは
ガミースマイルとは、一体どのような状態なのでしょうか。
原因
ガミースマイルの原因は、非常に多岐にわたります。それぞれ単独でガミースマイルを発症しているのではなく、複数の原因が複合して発症しているケースが大半です。
現在、ここに挙げるガミースマイルの原因に対する予防法は確立されてはいません。
歯槽性
歯槽性の原因としては、歯肉増殖症や上顎前歯部の萌出異常、歯冠長の不足などがあります。上顎前歯部の萌出異常には、上顎前歯の唇側転位だけでなく、歯冠位置が高位になっている症例も含まれます。
骨格性
骨格性の原因としては、上顎骨の垂直方向への過剰な成長や、上顎骨の歯槽突起の挺出などが挙げられます。
口唇
口唇に由来する原因は、上口唇の過剰な可動域や上口唇の幅の異常などです。
診断基準
ガミースマイルの診断では、リップラインが用いられます。
リップラインは、笑ったときの上口唇と上顎前歯部歯肉の関係を評価したものです。高位・中位・低位の3段階に分類されています。
高位とは、笑ったときに上顎前歯部の歯肉が歯肉辺縁から3㎜以上露出した状態です。中位は歯肉露出が1〜3㎜以内、低位は上顎前歯の一部が上口唇で被覆されている状態です。
高位であれば、ガミースマイルと診断されます。人口の1割ほどが高位に当たると報告されています。
セラミック治療とは
セラミック治療とは、セラミック系歯科材料を用いた歯科治療全般を指します。
セラミッククラウンやセラミックインレーなどさまざまなセラミック治療がありますが、ガミースマイルの治療に関係するのはセラミック矯正です。
セラミック矯正とは
セラミック矯正とは、セラミッククラウンによる矯正治療です。
セラミック矯正では、歯を移動させることなく、セラミッククラウンの形態によって歯列不正を審美的に改善させます。このため、歯を移動させる歯列矯正に対し、補綴矯正に分類されています。
セラミッククラウン
セラミック矯正で用いられるセラミッククラウンは、現在はジルコニア・オールセラミッククラウンが主流です。オールセラミッククラウンというように、金属材料を一切使わず、全てセラミック系材料で作られているセラミッククラウンです。
また、ジルコニアは人工ダイヤモンドという別名を持つセラミック材料で、強度に加え、透明度が高いのが利点です。ジルコニア・オールセラミッククラウンは、このジルコニアを内面フレームに使っているのが特徴です。
従来のセラミッククラウンでは、内面フレームに金属を使っていました。
これを陶材焼付鋳造冠、もしくはメタルボンドといいます。
ジルコニア・オールセラミッククラウンでは、内面フレームにジルコニアを使うことで、陶材焼付鋳造冠よりも、透明感が高く、天然歯に近い審美性が得られるようになりました。
セラミック矯正の特徴
セラミック矯正治療の特徴をメリットとデメリットに分けてご説明します。
セラミック矯正のメリット
セラミック矯正のメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
治療期間が短い
歯列矯正では、歯を移動させるために時間がかかることから治療期間が2〜3年と長期に及びます。
セラミック矯正なら、印象採得したら、次の段階でセラミッククラウンを装着し、これで治療は終了です。歯列矯正と比べて治療期間が大変短いという利点があります。
色調を選べる
歯列矯正では歯の色を変えられませんが、セラミック矯正なら任意の色を選べます。変色歯であっても自然な色合いにできます。
衛生的
保険診療で多用されるレジン前装鋳造冠と比べると、プラークが付着しにくい傾向があり、プラークコントロールの面で優れています。齲蝕症や歯周病のリスクを抑えられます。
セラミック矯正のデメリット
セラミック矯正にはメリットだけでなく、デメリットもあります。
セラミック矯正のデメリットとは?治療を受ける前に知っておきたい予備知識
支台歯形成が不可欠
セラミック矯正では、セラミッククラウンを装着するために、支台歯形成が欠かせません。支台形成により、支台歯が健全歯だった場合、歯髄炎の発症リスクが生じます。
寿命がある
セラミッククラウン自体の寿命は非常に長いのですが、接着性セメントの寿命があり、長期的な視点でみると脱離のリスクがあります。
破損のリスク
セラミッククラウンはとても強いのですが、咬合圧や外傷などにより破損するリスクがあります。
セラミック矯正の適応となるガミースマイルについて
セラミック矯正で改善が期待できるガミースマイルは、主に歯の萌出異常などの歯槽性のガミースマイルになります。
セラミック矯正単独での治療
ガミースマイルの原因は、先にお話しした通り、複数の原因が複合しているため、セラミック矯正単独での治療は困難な場合がほとんどです。
歯周外科手術との併用
歯槽性のガミースマイルの多くは、歯肉増殖症を併発しています。そこで、セラミック矯正単独ではなく、歯周外科手術を併用するとより効果的です。
歯肉増殖症に対する歯周外科手術は、歯肉切除術です。歯肉切除術は、歯肉切除後、理想的な歯肉形態を獲得するために歯肉整形術とセットで行われます。
歯冠長延長術との併用
上顎前歯部の挺出を伴うガミースマイルでは、挺出している前歯部を圧下させる必要があります。したがって、歯を移動させないセラミック矯正では改善が困難です。
そこで、セラミック矯正と組み合わせ、圧下と同等の効果を得るための処置が歯冠長延長術です。歯冠長延長術とは、クラウンレングスニング術(Crown Lengthning)とも呼ばれる処置で、歯槽骨を部分的に切除し、骨形態を修正します。歯冠長延長術は、歯冠長不足によるガミースマイル治療にも有効な処置です。
【まとめ】ガミースマイルをセラミック治療で改善できるの?
このコラムでは、ガミースマイルのセラミック治療についてお話ししました。
ガミースマイル治療で用いられるセラミック治療は、セラミック矯正です。
ガミースマイルは、さまざまな原因が複合的に組み合わさって起こります。このため、セラミック矯正単独では、ガミースマイルを効果的に改善するのは困難です。
そこでガミースマイルの原因によって、歯周外科手術や歯冠長延長術などの選択肢にセラミック矯正を併用することが多いです。