歯科で用いる補綴物(詰め物・被せ物)の中で、最も審美的な素材といえば、セラミックです。
セラミック歯は、審美性だけでなく機能性にも優れているため、歯科医院でも勧められることが多いかと思います。
そんな時、どのセラミック歯を選べば良いのか、迷ったことはありませんか。
この記事では、セラミックの種類ごとの特徴とその値段の相場について、保険適応されるセラミックとその特徴および費用についても解説します。
この記事を読むことでセラミック歯の値段の相場を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
- セラミック歯の種類の違いは?
- セラミック歯の費用を抑える方法とは?
- 保険適応のセラミックと自費診療のセラミックは何が違うの?
目次
セラミックの種類と値段
セラミックとは、無機物を加熱処理することによって、焼き固めたもののことを指します。そのため、使用する無機物によって様々な種類のセラミックがあります。
ここでは、歯科で用いられる代表的なセラミック6種を解説します。
オールセラミック
オールセラミックとは、「セラミックだけで作られた素材」ということなので、医院ごとにその組成は異なります。
代表的なものとしては、アルミナ系のセラミックのフレーム(補綴物の土台となる部分。クラウンの最も内側の層)の上にポーセレンセラミックを焼き付けたものになります。
審美性に優れており、天然歯のような白さと透明感、微細な色調の再現を可能とします。
オールセラミックの費用相場
オールセラミッククラウン:80,000~200,000円
セラミックインレー:40,000~80,000円
※インレーはフレームなしになります
e-max
二ケイ酸リチウムを主成分としたセラミックで、フレームから歯冠部に至るまで全て同一素材で作られているため、破折しにくい特徴があります。
素材自体は天然歯と同程度の強度で、対合歯が削れてしまう危険性や歯根に大きな負荷がかかることを防ぐことができます。
もちろん審美性にも優れます。
e-maxの費用相場
e-maxクラウン:60,000~150,000円
e-maxインレー:40,000~60,000円
ジルコニア
セラミックの中でも最も硬い素材で、人工ダイヤモンドとも呼ばれます。
強い咬合力が加わる奥歯やブリッジにも応用が可能ですが、強度が強すぎるために対合歯が削れてしまうリスクがあります。
ジルコニアは加工が難しく、他のセラミックと比べると微細な色調の再現や透明感などの審美的要素が劣りますので、臼歯部で選択されることが多くなります。
ジルコニアの費用相場
ジルコニアクラウン:60,000~120,000円
ジルコニアインレー:40,000~80,000円
ジルコニアセラミック
ジルコニアのフレームにポーセレンセラミックを焼き付けたものです。
強度に加えて審美性も優れています。
ジルコニアセラミッククラウンの費用相場
ジルコニアセラミッククラウン:80,000~240,000円
メタルボンド
金属のフレームにポーセレンセラミックを焼き付けたものです。
表面のセラミックの審美性は高いのですが、土台の金属が光を通さないため、他のセラミック素材と比べると透明感に劣ります。また、金属を使用するため、金属アレルギーや歯肉の黒ずみなどの可能性があります。
昔はセラミックのフレームを作る技術に乏しく、このメタルボンドがよく使われていたのですが、現在では下火になりつつあります。
メタルボンドの費用相場
メタルボンド:80,000~150,000円
ハイブリッドセラミック(CAD-CAM冠)
保険治療で用いるレジン(プラスチック)に、セラミックの粉末を混ぜ合わせて強度を強くしたものです。セラミックというより、レジンの改良版のようなものでしょう。
審美性はセラミックのような透明感はなく、のっぺりとした印象になります。強度は天然歯よりも弱く、セラミックや金属と比較して破折のリスクが高くなります。吸水性があるために着色・変色が生じます。
最大のメリットは、金属を用いない白色の補綴物を安価で得ることが出来る点にあります。
近年、条件付きではありますが、ハイブリットセラミッククラウンの保険適応が普及してきています。
ハイブリッドセラミック(CAD-CAM冠)の費用相場
ハイブリットセラミッククラウン : 38,000~80,000円
ハイブリットセラミックインレー : 20,000~50,000円
保険適応のセラミック
2016年4月から一部の歯において、今まで自費診療であったノンメタルの補綴物が保険の適応となりました。それから少しずつ適応範囲が広がり、現在、様々な歯科医院で普及しつつあります。
保険適応されるセラミックとその適応範囲
保険適応されるセラミックとは、先述した種類の中の「ハイブリットセラミック」のクラウン(被せ物)になります。ちなみにインレー(部分的な詰め物)には、保険適応されません。
一般的にはCAD/CAM冠と呼ばれ、コンピューターを用いて補綴物の設計を行い、ハイブリッドセラミックの塊で出来たブロックを機械で削り出して製作していきます。
保険が適応される歯は、一番奥の第二大臼歯以外の前から6番目までの歯です。
治療するには、例えば前から6番目の歯に関しては、「7番目の歯が上下左右揃っており、しっかりと咬合している」などの細かい条件があります。また、歯科診療所がこの治療を行う場合、あらかじめ管轄の厚生局に届出をする必要があります。
ご自身の歯が適応となるのかは口腔内のチェックが必要となりますので、歯科医院で相談してみることをおすすめします。
前歯部と臼歯部の違いについて
CAD/CAM冠の前歯と臼歯(奥歯)には、大きな違いがあります。
臼歯部は、単色のハイブリッドセラミックブロックを削りだして作るため、のっぺりとした印象になりがちでした。
しかし、前歯部に関しては「3層以上の色調の積層構造を有したハイブリッドセラミックブロックを用いる」と定められているので、臼歯部と比較すると前歯部は切縁から歯頚部にかけてグラデーションを付与することができます。しかし、ブロック自体は既製品なため、ご自身の歯に合わせて調節できるわけではありません。
オールセラミックなどと比較すると、色調再現性の差は明らかに出てしまいます。
費用は、保険診療のため全国一律となります。
保険治療の場合は、歯肉の状態などを整えてから被せなければいけないという決まりもあるため、自費診療のように補綴物のみの費用というわけにはいかず、口腔内の状態によって料金に個人差が出てきます。
歯の形を整えて、補綴物を入れるまでの大体の費用としては、前歯部・臼歯部共に8,000~10,000円位をみておくと良いでしょう。
セラミックの費用を抑えるポイント
セラミックは、様々な材料とその特性があり、自費診療のものですと、どうしても高額になりやすいです。
そこで、セラミック治療の費用を抑えるポイントについてまとめました。
ハイブリットセラミックを選択する
保険のハイブリットセラミック(CAD/CAM冠)を用いることにより、大幅に費用を抑えることができます。しかし、値段だけをみて決めるのは危険です。
保険診療のCAD/CAM冠の場合、2年間はやり直し(再製作)が出来ないという決まりがあります。
そのため、2年以内に破折などによって壊れてしまった場合は、自費診療でやり直す必要があります。CAD/CAM冠の強度でも最低2年間は使用できそうなのか、しっかり診断した上で選択する必要があります。
マウスピースを用いる、定期健診を活用する
補綴物の破折の原因として、歯ぎしり・食いしばりによる過重負担が多く挙げられます。
就寝時の歯ぎしり・食いしばりや仕事・スポーツなどで力むことが多い(=食いしばりしやすい)方は、マウスピースを装着することによって補綴物の破折を予防し、長く使うことが出来るようになります。
また、定期的に歯科医院で検診を行うことにより、咬み合わせのチェックや2次う蝕を予防することによって、補綴物を長持ちさせることができます。
たとえ高額なセラミックで治療を行ったとしても、その補綴物を長持ちさせることによって、費用対効果も良くなりますし、再治療により自分の歯を削ることもなくなります。
また、根や歯周組織の状態が悪い歯であれば、強度の強いクラウンではなく保険診療のクラウンで、あまり負荷がかからないように(咬合を弱めに)調節していくという方法もあります。
長期的に考えて、治療内容を選択することをおすすめします。
【まとめ】セラミック歯の値段と相場は?費用を抑えるポイントも解説
セラミックの種類ごとの特徴と、その値段の相場についてまとめました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
- セラミックには、その組成によって強度や審美性、費用が異なる。
素材 | オールセラミック | e-max | ジルコニアセラミック | メタルボンド | ハイブリットセラミック |
審美性 | 〇〇〇 | 〇〇〇 | 〇〇〇 | 〇 | 〇 |
強度 | 〇〇 | 〇〇 | 〇〇〇 | 〇〇 | 〇 |
費用 | クラウン:80,000~200,000円 インレー:40,000~80,000円 |
クラウン:60,000~150,000円 インレー:40,000~60,000円 |
クラウン:80,000~240,000円 | クラウン:80,000~150,000円 | クラウン:38,000~80,000円 インレー:20,000~50,000円 保険適応クラウン:8,000~10,000円程度 |
- 保険適応のセラミックはハイブリッドセラミックという素材で、正しくはセラミックというよりもレジンというプラスチック系の素材であり、CAD/CAM冠と呼ばれ、審美性および強度は自費のセラミックに劣るが、安価でメタルフリーの白い歯を選択することができるというメリットがある
- 保険のCAD/CAM冠を用いることによって、費用を抑えることができるが、強度が強くないため、症例は選ぶ必要がある
- 補綴物を長持ちさせることによって費用対効果が高くなる。具体的には、マウスピースを用いる、定期健診を行うことなどがある
自費診療の料金の大半が、材料費及び、歯科医師と歯科技工士さんへの技術料です。
同じ種類の中での価格の違いは、素材の良し悪しや歯科医師と歯科技工士さんの技術力の違いであることが多いということができます。
値段の安さだけで選ぶのではなく、その歯科医院でセラミック治療の症例を多く手掛けているのか、セラミック治療に自信を持って勧めているのかなども確認していくと良いでしょう。また、補綴物の料金の中には、型取りや仮歯の代金などが含まれているのかなどもチェックしておきましょう。
セラミック歯はどうしても「値段が高い=長持ちする」と考えてしまいがちなところもありますが、そうではありません。
その補綴物で治療した場合、その歯及び周囲の歯が、長く健康でいられるのかという視点に立つことが重要です。自分に合った最適な補綴物を選択できるよう、歯科医師としっかりと相談していくことをおすすめします。