マウスピース矯正の効果はどの程度?適応できない症例は?

マウスピース矯正の効果はどの程度?適応できない症例は?

近年、透明で目立ちにくいマウスピース矯正は、従来のワイヤー矯正に代わる選択肢として非常に高い人気を集めています。「装置が目立たない」「食事や歯磨きの際に取り外せる」といったメリットに惹かれ、治療を検討している方も多いのではないでしょうか。
しかし、マウスピース矯正には得意な症例がある一方で、残念ながら適応が難しいケースや治療を成功させるために不可欠な条件も存在します。

この記事では、マウスピース矯正で歯が動く仕組みや治療の効果、そして適応できない症例を詳しく解説します。
この記事を読むことで、マウスピース矯正の特性や自分に合った治療法かどうかの判断基準を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。

こんな疑問が解決

  • マウスピースをはめるだけで、なぜ歯が動くの?
  • どのメーカーのマウスピースを選んでも効果は同じ?
  • マウスピース矯正ができないのはどんな歯並び?
  • 自己管理が苦手でもマウスピース矯正はできる?
  • スポーツや楽器演奏をしていても矯正は可能?

マウスピース矯正で歯が動く仕組み

マウスピース矯正に使用されるマウスピースは、弾力性のある丈夫な樹脂でつくられています。
このマウスピースは、装着者の歯列にぴったりと装着できるよう、あらかじめコンピューターで歯列をデータ化して三次元データをつくり、それに基づいてデザインされたものです。また、それとは別に患者の歯茎や歯槽骨の状態を診察して「理想の歯並びにするためには、どの歯をどの方向へどれくらい動かせばいいか」をシミュレーションし、マウスピースは装着者の歯にぴったり装着できるだけでなく、動かしたい方向に必要な力が加わるように設計されます。こうして完成したマウスピースを装着することにより、歯は少しずつ矯正されていくというのが大まかな仕組みです。
こうした原理上、歯が動いていくに従ってマウスピースの形も変化させていかなくてはなりません。定期的に歯の状態を診察し、実際に動いた歯の状態を踏まえて次にどう動かしていくかを考え、それにふさわしい形のマウスピースを作って段階的に交換していくという方法がとられます。
マウスピース矯正ではこのような手順で矯正を進めていくのですが、歯を安全に動かしていくためには移動速度の限界があり、動かす方向や歯の状態などの個人差はあるものの、およそ1か月に0.3~0.5ミリ程度が限度とされています。こうした事情から矯正には年単位の時間が必要となることが多いです。
また、計画的に歯を動かしていくためには歯科医師に指示されたマウスピースの装着時間を正しく守り、自分の判断で勝手に何時間も外しっぱなしにしたりしないような自己管理能力が求められます。

マウスピース矯正はメーカーによっての効果や適応範囲が変わる

前述したように、マウスピース矯正は変化していく患者の歯のデータを精緻に計測し、データをコンピューターで解析することにより最適なマウスピースを次々に製作していくことで、最速・最良の矯正効果を得ることが狙いですが、そのノウハウは矯正システムを提供しているメーカーによって異なり「どんなマウスピース矯正も矯正効率や効果は同じ」というわけではないのです。
一概に「どのメーカーのマウスピース矯正が一番優れている」とは言えません。歯科医師の診療方針や技量にも左右されますし、そのメーカーのマウスピースが患者の歯列の状態にどの程度適応できるかどうか、その矯正法でどこまで治るか、という判断は歯科医師の裁量に任されているからです。とはいえ、一般に普及しているマウスピース矯正法なら一定の限度はあるものの「軽度の不正咬合であればほとんど適応できる」と考えて差し支えないでしょう。
多くの矯正歯科では、特定のメーカーのシステムによるマウスピース矯正に特化しています。もしも、メーカーの違いによって矯正方法を選ぶのであれば、各メーカーの特性・長所・限界などを調べたうえで希望するメーカーの矯正治療を得意とするクリニックを訪ね、「自分はその方法で矯正可能な歯並びかどうか」を歯科医師に相談してみましょう。また「この矯正によって自分はどのくらいの満足度を得られるだろうか」というおよそのイメージをつかんだうえで、判断をくだすことも大切です。

マウスピース矯正ができない症例は?

「マウスピースを装着するだけで矯正できる」「自分でマウスピースを着脱できる」など、他の矯正法に比べてメリットの多いマウスピース矯正ではありますが、マウスピース矯正の適応外、つまりマウスピースでは矯正できない不正咬合も存在します。
では、どのような症状に適さないのか、矯正できない例をいくつか紹介しましょう。

顎、骨格、歯によっては適応外の可能性がある

マウスピース矯正の原理上矯正できない症例、またはほかの矯正法と併用しなくては矯正が困難な症例があります。
たとえば、マウスピースは上顎・下顎それぞれに装着するものですから「上顎と下顎の咬み合わせが悪い・大きくズレているといった症例ではマウスピースだけでは矯正は難しいと言えます。こういう場合は、エラスティックゴム(上のマウスピースと下のマウスピースの一部を医療用輪ゴムで結び、ズレを矯正する装置)などの併用が欠かせません。
また、上顎突出症(出っ歯のように見える状態)などの場合もやはりほかの矯正法との併用が必要で、重度の場合は「骨切り術」などの外科手術が必要になることもあります。

自己管理ができない方

マウスピース矯正では、着脱可能なマウスピースを装着して矯正を進めていきます。特に矯正を始めた直後などはマウスピースの違和感などから、どうしてもマウスピースを外してしまいたい誘惑にかられることがありますが、歯科医師の指示通りの装着時間を守らないと矯正効果は出ません。
毎日数時間も勝手にマウスピースを外しておいて「ちっとも治らない」「マウスピースではやはり歯は動かない」などという方もいらっしゃるようですが、そういう自己管理ができない方はマウスピース矯正は不向きかもしれません。

妊娠をしている方

マウスピース矯正そのものが妊婦さんの体に悪いというわけではありませんが、「常にマウスピースを装着していなくてはならない」という状況は少なからずストレスを感じるものです。「矯正開始後時間が経過し、マウスピースをつけた生活にも慣れた頃に妊娠がわかった」というようなケースは別として、妊娠中に矯正を開始するのは避けたほうがいいでしょう。
なお、妊娠中は体質が変化し、一般に「虫歯になりやすくなる」とされています。マウスピース矯正であればマウスピースを外してしっかりと歯のケアができますが、ブラケット矯正など、歯に矯正装置を固定してしまうような矯正法ではケアが行き届かず、虫歯になるリスクが高くなるかもしれません。

マウスピース矯正が向いている方

では、今度はマウスピース矯正への適応性が高い=マウスピース矯正が比較的向いている方にはどのような例があるのかを見ていきましょう。

楽器の演奏をしている方

フルート、トランペットなどの管楽器の演奏には口が重要な働きをします。唇・舌のデリケートな動きに対して、ブラケット矯正などの矯正装置が邪魔になることがあるのですが、マウスピース矯正の場合はマウスピースがなめらかな樹脂製ですから、「慣れ」は必要であるものの、比較的演奏への影響は少ないと言えます。

格闘技や激しいスポーツをする方

ボクサーは歯の保護用マウスピースをつけて試合に臨みます。これは矯正用のマウスピースとは形状・用途が異なりますが、「マウスピースを装着する」という点においては同じで、マウスピース矯正への適応性は高いといえるでしょう。
また、同様の理由で格闘技やフットボール、競技時に奥歯を噛みしめるウエイトリフティングなどの選手にもマウスピースを装着している人が多いようです。

セラミックや銀歯などの差し歯をしている方

マウスピース矯正で歯が動く理由は「歯に一定の力をかけつづけると、歯を支える歯槽骨に骨代謝(力が加わる方向の骨が溶けて吸収され、反対側では新しく骨がつくられる現象)がおきて歯槽骨の骨格が少しずつ矯正に応じて変形していくから」です。このためセラミックや銀歯などの差し歯であっても、歯槽骨さえ正常であれば歯は動かすことが可能です。
とはいえ、念のために歯科医師の診察を受け、矯正治療が可能かどうかを確認しておきましょう。

留学を考えている方

これはすべてのマウスピース矯正に可能とは限りませんが、たとえばインビザラインのようにグローバルに展開している矯正システムメーカーの場合、渡航先の国・地域にもインビザラインに対応している医療機関があれば、そちらに矯正データを引き継いで矯正を継続するといったことが可能です。もちろん渡航する国や地域にもよりますが、あらかじめ渡航先や留学期間がわかっているのであれば、連携のできる歯科医院があるか歯科医師に相談してみてください。

【まとめ】マウスピース矯正の効果はどの程度?適応できない症例は?

マウスピース矯正の効果と適応範囲、そして治療が難しいケースについて詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。

この記事のおさらい

  • マウスピース矯正は、理想の歯並びに向けて設計された装置を段階的に交換することで歯を動かす
  • 歯を動かせるペースには限界があり、一般的に1ヶ月で0.3〜0.5ミリ程度
  • 採用しているメーカーや歯科医師の診断によって、適応できる範囲や効果が変わってくる
  • 重度の不正咬合や骨格的な問題がある場合、マウスピース矯正単独では治療できないケースがある
  • 1日20時間以上の装着など、患者自身の徹底した自己管理が治療成功の鍵を握る

マウスピース矯正は、精密なシミュレーションに基づき段階的に歯を動かしていく画期的な治療法です。目立ちにくく衛生的であるなど多くのメリットがありますが、重度の骨格的な問題がある場合や装着時間を守るなどの自己管理ができない場合には、十分な効果が得られないこともあります。
まずは自分の歯並びが適応範囲内かどうか、信頼できる歯科医師に相談することが納得のいく矯正治療への第一歩となります。
マウスピース矯正の特性を正しく理解し、ご自身のライフスタイルや歯の状態に最適な治療計画を立てていきましょう。歯並びに関する悩みがある方は、まずは専門のクリニックでシミュレーションやカウンセリングを受けてみることをおすすめします。


関連記事

叢生・乱杭歯の原因と矯正治療

叢生・乱杭歯の原因と矯正治療

インビザラインとワイヤー矯正はどっちがいいの?仕上がり・費用・期間などを徹底比較

インビザラインとワイヤー矯正はどっちがいいの?仕上がり・費用・期間などを徹底比較

インビザラインは抜歯症例も対応できる?抜歯する場合のメリットやデメリットも解説

インビザラインは抜歯症例も対応できる?抜歯する場合のメリットやデメリットも解説

インビザラインができない人の特徴と適応外の症例

インビザラインができない人の特徴と適応外の症例

矯正治療中の歯磨きのやり方とおすすめのアイテムも紹介

矯正治療中の歯磨きのやり方とおすすめのアイテムも紹介

インビザラインの治療期間と期間を短縮する方法と伸ばす原因

インビザラインの治療期間と期間を短縮する方法と伸ばす原因

マウスピース矯正の種類22ブランドを徹底比較【2022年版】

マウスピース矯正の種類22ブランドを徹底比較【2022年版】

過蓋咬合とは?その原因と大人と子供の矯正治療

過蓋咬合とは?その原因と大人と子供の矯正治療