インビザラインのアタッチメントの特徴と注意点

インビザラインのアタッチメントの特徴と注意点

「いざ!自分で付け外しができるインビザラインで歯列矯正を開始しよう!」と思ったら、「アタッチメントを歯に装着しましょう」と言われて、びっくりした方も多いのではないでしょうか。

マウスピース矯正であれば、歯には何の器具もつけないと思われがちですが、インビザラインでは、実は「アタッチメント」という器具を歯面に装着する症例のほうが多いのです。

では、この「アタッチメント」とは、どのようなもので、何のために用いるのでしょうか。

この記事では、インビザラインのアタッチメントの特徴とその注意点について解説します。

この記事を読むことで、インビザラインのアタッチメントについて理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。

  • アタッチメントの仕組みは?
  • アタッチメントはつけなきゃダメ?
  • アタッチメントはつけると目立つ?
  • アタッチメントは着色しやすい?
  • アタッチメントが取れたらどうすればいいの?
  • アタッチメントをつけると痛みが出るって本当?

目次

インビザラインとは

インビザラインとは、米国のアライン・テクノロジー社が手掛ける、マウスピース型矯正装置のことです。

まず、矯正医が最新の3D光学スキャナーを用いて口腔内の撮影を行い、そのデータをアライン・テクノロジー社に送ります。すると、20年以上の治療実績や臨床症例をもとにした「クリンチェック」という専用のソフトを用いて、治療計画のシミュレーションが行われ、担当矯正医のもとにシミュレーション結果が送られてきます。

矯正医はそのシミュレーションをもとに、治療計画の微調整を行い、治療計画を決定します。それを再びアライン社に送ると、治療開始から終了までの全てのマウスピースが作成されるのです。

このため、治療のたびに型取り(印象採得)を行う必要がありません。マウスピースも2週間ごとに新しいものに患者さん自身が交換していくことができるので、来院回数やチェアサイドの時間も大幅に短縮することができます。

アタッチメントとは

インビザラインのアタッチメントとは、歯の表面に付与する半透明もしくは白色の突起物のことをいいます。

このアタッチメントには、2つの役割があります。

1つは「マウスピースを固定するため」です。

歯並びのでこぼこはあるにしても、歯自体は基本的に丸みを帯びた曲線で構成されています。また、マウスピースの内面もツルツルしているので、マウスピースを歯に被せるだけなら良くても、歯を動かす力をかけていく際はどうしても滑ってしまい、浮き上がってしまうことがあります。

そのため、マウスピースを歯面にカチッと固定し、ずれたり浮き上がったりしないようにアタッチメントを付けるのです。

もう1つは、「歯に最も効果的な矯正力を加えるため」です。

マウスピースのみでは、歯冠部に単純な一方向への力を加えることしか出来ません。それでも、出っ張っている歯を引っ込めるくらいのことは出来るのですが、実際は前に出ている歯を内側に傾けるだけではなく、両側の歯との前後左右的なバランスや歯根の傾き具合、上下の咬み合わせまで調節していく必要があります。

このような、歯を根から動かしたり、捻りを加えたりといった3次元的な動きを可能にするために、アタッチメントを用いるのです。

アタッチメントの材質

アタッチメントは「コンポジットレジン」と呼ばれる素材で作られています。一般歯科では、虫歯治療などでよく用いられる素材です。

大きさや形は一律ではなく、動かしたい歯の形や力を加える方向などに合わせて様々な形態・種類を選択していきます。

大体の大きさの目安としては、3㎜×3㎜程度と思っていただけるとよいでしょう。

アタッチメントの種類

インビザラインのアタッチメントには、「通常アタッチメント」と「最適アタッチメント」の2種類に分けられます。

「通常アタッチメント」とは、矯正医が必要と判断した場合に直接設置するものです。

「最適アタッチメント」とは、インビザライン・アライン社が治療計画のシミュレーションを行った際に必要と判断し、治療計画に組み込まれているアタッチメントです。

こちらはアライン社で作製され、マウスピースと共に送られたものを、矯正医が歯面の指定の位置に正確に設置していきます。

最適アタッチメントは、その役割から5つに分けられます。

オープンバイト用最適アタッチメント

オープンバイト(=開咬[かいこう])とは、奥歯でしっかり咬み合わせた時に、上下の前歯が噛み合わず、すき間が空いてしまう不正咬合のことをいいます。

この場合は、前歯を挺出する(引っ張り出す)力を加えるためのアタッチメントを用います。

主に上顎前歯部に設置します。

ディープバイト用最適アタッチメント

ディープバイト(=過蓋咬合[かがいこうごう])とは、奥歯でしっかり咬み合わせた時に、上下の前歯の咬み合わせが深くなり過ぎて、下の前歯に上の前歯が覆いかぶさってしまい、下の前歯がほとんど見えなくなってしまう不正咬合のことをいいます。

この場合は、上下の臼歯部や下顎の前歯部を挺出させる力を加えるためのアタッチメントを使用していきます。

ルートコントロール用最適アタッチメント

これは、歯根から歯を動かしたい時に用いられるアタッチメントです。

1本の歯の歯冠部分に2つのアタッチメントを設置することによって、矯正力を歯根にかけていきます。

傾いている歯を元に戻すときや前歯の歯と歯の間の隙間を閉じるために、歯を平行移動させたい場合などに用いられます。

回転用最適アタッチメント

歯が捻れている場合に、歯を回転させることによって正しい方向に導く際に用いられるアタッチメントです。

犬歯や小臼歯で用いられることが多いです。

アンカレッジ用最適アタッチメント

アンカレッジとは、歯を動かす時の固定源となる歯のことです。

抜歯を行った際に、そのスペースを閉じるために用いられるアタッチメントです。

アタッチメントの注意点

インビザラインのアタッチメントの注意点について、みていきましょう。

アタッチメントって、目立つのですか?

アタッチメントは透明、もしくは歯と同じような色の素材であるコンポジットレジンで作られています。部分的な虫歯の詰め物を想像していただけるとわかりやすいでしょう。

しかし、虫歯の場合は削って出来た穴に詰めるのに対して、アタッチメントは歯の表面につけるので、そのような意味では、至近距離で見ると虫歯の治療痕よりも目立ちやすいということができます。

普段、人と接している距離ではほとんど目立たないのでご安心ください。

着色しやすい?

アタッチメントの素材であるコンポジットレジンは、吸水性があります。

そのため、濃い色の食べ物や飲み物を摂取すると、水分と共にレジン内部に色素が沈着してしまうので着色していきます。

最初は歯の色になじんで目立たないアタッチメントですが、着色してくると目立ちやすくなってしまうので、色の濃いものは出来るだけ避ける、口にした場合は、うがい、もしくは出来るだけ早く歯磨きをするなどの対処が必要です。

もし、着色が強く現れてしまったら交換してもらうことができるのかなど、担当医に確認しておくと良いでしょう。

歯磨きはどうすれば良い?

アタッチメントは着脱式ではありませんので、歯と一緒に歯ブラシで清掃します。

着色だけでなく、アタッチメントの周囲は汚れが付着しやすいので、矯正医のもとで正しいブラッシングの仕方をしっかり指導してもらうようにしましょう。

アタッチメントのでこぼこが痛くない?

アタッチメントは、歯の表面に米粒を付けているようなものです。

尖ってはいないのですが、舌で触るとザラザラするので、最初は気になるかもしれませんが、23日で慣れてしまうことがほとんどです。また、マウスピースを装着すると、マウスピースに覆われてしまうので、舌に触れることもなくなります。一日の大半、マウスピースを装着して過ごすのですから、さほど気にならないでしょう。

しかし、マウスピースを外している時に口腔内と擦れて口内炎が出来てしまうことも稀にあります。そのような時は、矯正用ワックスを用いてアタッチメントのでこぼこから粘膜を守るなどの対処をとります。

アタッチメントをつけたらマウスピースが外しにくくなった!

アタッチメントは、もともと歯にマウスピースをカチッと固定する役割があるため、いざ外そうとすると外しにくくなるものです。

基本的には、歯列の奥の方から外していくと、外しやすいかと思います。歯並びやアタッチメントの設置部位によって、外すコツがありますので、正しい着脱の仕方をしっかりと指導してもらうことをおすすめします。

アタッチメントをつけたら歯が痛くなった!

「アタッチメントを付けたら歯に痛みを感じるようになった」という方は多いかと思います。これは、アタッチメントを設置したことによって、効果的に矯正力が歯へ加わるようになったためです。

矯正は、ワイヤー矯正でもマウスピース矯正であっても、歯に弱い矯正力を持続的に加えることによって、徐々に歯を理想的な位置に動かしていく治療法です。そのため、インビザラインで新しいマウスピースに交換した時やワイヤー矯正でワイヤーの調整を行った時は、暫くはどうしても痛みを感じてしまうのです。

それはむしろ、矯正力がしっかりと歯に加わっている証拠ともいえるのです。

痛みはアタッチメントを付けた時というより、新しいマウスピースに交換した時に生じやすくなります。そして、歯が動くにつれて、痛みが和らいできます。個人差もありますが、大体23日位で痛みが治まることが多いようです。

慣れていくことも大切ですが、どうしても痛みが強い場合は、担当医に相談するようにしましょう。

アタッチメントを設置する時期、除去する時期

症例にもよりますが、多くの場合、初めてマウスピースを装着して矯正治療を開始するタイミングではアタッチメントはまだ付けないことが多いでしょう。

マウスピースの装着に慣れて、23枚目のマウスピースに進んでいくタイミングでアタッチメントを装着していくことが一般的です。また、歯が全て動き終わって、後戻りを防ぐための保定の時期になるまでは、アタッチメントを取り外すことはありません。

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アタッチメントは自分で外せる? 取れてしまったらどうする?

アタッチメントは専用の接着機構によって歯面に接着しているので、自分で付け外しすることはできません。外す際には「アタッチメントリムーバー」という専用の器具を用いて、歯科医師が除去する必要があります。

しかし、日常生活において、予期せずして外れてしまうことがあります。外れてしまった場合、その日のうちに急いで付け直す必要はありません。

しかし、あまり外れたまま長期間経過してしまうと、予定していた矯正力がその歯1本のみ加わらなくなってしまい、治療計画にズレが生じることが考えられます。外れてしまった場合は、どこの歯のアタッチメントが外れてしまったのかを自分で確認し、矯正医に出来るだけ早く連絡して指示を仰ぐようにしましょう。

差し歯や被せ物が入っていても、アタッチメントは付けられる?

アタッチメントが接着するのは歯面のみです。

御自身の歯面が残っていれば、部分的な被せ物が入っていてもアタッチメントを設置することは可能です。

しかし、歯面のほとんどを覆うような大きな被せ物や差し歯には、アタッチメントを設置することはできません。また、神経がない歯やブリッジは、矯正で動きにくい場合があります。歯が移動したとしても、以前の歯並びに合わせて噛み合わせを製作してあるので、矯正治療が終了した後で、新しい歯並びに合わせて作り直す必要が出てくる可能性があります。

差し歯や被せ物の歯がお口の中にある場合には、事前に担当医に確認するようにしましょう。

ホワイトニングは出来る?

インビザラインでは、矯正用マウスピースにホワイトニングの薬剤を入れて装着することによって、矯正とホワイトニングが同時に出来るというメリットがあります。

しかし、アタッチメントを付けた部分はホワイトニングの薬剤が届かないために、アタッチメントを除去したあとで色ムラが出来てしまいます。

インビザラインでホワイトニングを行う際は、アタッチメントをつける前、もしくは、歯並びが改善して、後戻りを防ぐために装着する保定装置としてのマウスピースの時期に行うのが良いでしょう。

アタッチメントなしでインビザラインはできる?

できるか、できないかでいえば、できます。

しかし、インビザラインの特徴は、矯正力の精密なコントロールにあります。アタッチメントを設置することによって、3次元的な歯の移動や細かい調整を可能にしているのです。また、アタッチメントを使用して、歯に効率的に矯正力をかけることで、治療期間の短縮にもつながっています。

インビザラインの能力を発揮するには、アタッチメントは必要不可欠なのです。

症例にもよりますが、シミュレーションの結果、アタッチメントの設置を勧められた場合は、アタッチメントを使用していくことをお勧めします。

どうしても、目立つところに付けたくない、など部分的なことであれば、担当医に相談してみるのも良いでしょう。歯の裏側に設置するなどの対処ができる場合もあります。

【まとめ】インビザラインのアタッチメントの特徴と注意点

インビザラインのアタッチメントの特徴とその注意点についてまとめました。

この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。

  • アタッチメントとは、歯の表面に付ける半透明、もしくは白色の突起物
  • アタッチメントは、マウスピースを歯面にカチッと固定し、最も効果的な矯正力を歯に伝えるために設置する
  • アタッチメントを設置することによって、矯正における3次元的な歯の動きを可能にする
  • アタッチメントは、コンポジットレジンという素材で作られており、日常生活ではあまり目立たないが、着色しやすいので注意が必要
  • アタッチメント自体が歯に痛みを与えることはないが、アタッチメントを付与することによって、それまでよりもしっかりとした矯正力が歯に加わるため、新しいマウスピースにして23日は痛みが強く出る場合がある
  • アタッチメントを歯面に付与すると、マウスピースが着脱しにくくなるので、着脱のコツを歯科医院で指導してもらうと良い
  • アタッチメントなしでインビザラインを行うことは可能だが、アタッチメントなしではインビザラインの良さを充分に発揮できず、計画通りに歯が動かない、治療期間が長引いてしまうなどの悪影響が考えられる

インビザラインでのマウスピース矯正において、アタッチメントを付与することで、今まで不可能だった3次元的な矯正力を歯に加えることが可能となりました。

適応症例も、従来のマウスピース矯正とは比べものにならないほど多岐にわたるようになりました。また、治療期間の大幅な短縮にもつながっています。

最近では、格安のマウスピース矯正が増えてきました。

その多くは、アタッチメントを付けていないものです。

インビザラインと格安マウスピース矯正における仕上がりの差は、このようなところから生まれてくるのでしょう。

数ある矯正治療の中からインビザラインを選んで治療を行うのであれば、アタッチメントを付与して、インビザラインの特性を発揮させていくことを強くおすすめします。


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