知覚過敏について【治療・予防・原因・症状】

知覚過敏について【治療・予防・原因・症状】

齲蝕症でもないのに、飲食時に歯に冷水刺激が加わることで一過性の疼痛が発生する、そのような症状が認められた場合は、象牙質知覚過敏症を発症しているかもしれません。

象牙質知覚過敏症とは、どのような病気なのでしょうか。

そして、象牙質知覚過敏症ではどのような治療が行われるのでしょうか。

今回は、象牙質知覚過敏症の症状や治療法だけでなく、原因や予防法も含めてご説明します。

目次

象牙質知覚過敏症とは

象牙質知覚過敏症とは、温度・乾燥・擦過・浸透圧変化、または化学的な刺激が露出した象牙質に加えられることで誘発される一時的な疼痛のうち、その他の異常や病理的要因によらない疼痛のことです。

したがって、齲蝕症、いわゆる虫歯による痛みは、象牙質知覚過敏症には含まれません。

象牙質知覚過敏症の機序

現在、象牙質知覚過敏症の発症機序として最有力な理論が、動水力学説です。

動水力学説とは

動水力学説では、象牙質知覚過敏症の発症のきっかけとなるのが、エナメル質の退縮や歯肉退縮による象牙質の露出です。

象牙質の露出によって、象牙質内部にあって本来露出することのない象牙細管が開口します。

象牙細管内部を満たしている組織液が、外部からの温度刺激を受け、細管内部で膨張収縮を起こします。

この組織液の変化が歯髄を刺激し、象牙質知覚過敏症を起こすのではないかと考えられています。

象牙質知覚過敏症の原因

象牙質知覚過敏症の発症の原因となる象牙質の露出はどうして起こるのでしょうか。

歯肉退縮

歯肉退縮とは、辺縁歯肉が根尖側に移動して歯根が露出した状態のことです。その発現頻度は、子供で8%、50歳台で100%と言われており、加齢とともに増大することがわかります。

歯肉退縮の原因は、不適切なブラッシングや歯の頬側や舌側への転位、小帯の高位付着、長期にわたる歯周炎などです。

露出した歯根表面のセメント質は摩耗しやすいため、摩耗が進行して象牙質が露出します。

辺縁性歯周炎

辺縁性歯周炎とは、歯肉における炎症が歯肉組織内に限局せず、歯周組織にも波及した歯周疾患です。歯周疾患の中でも最も多いのが、この辺縁性歯周炎です。

辺縁性歯周炎では、歯槽骨の吸収が生じるため、これに伴って歯肉が退縮し、歯根が露出します。歯根の露出に伴い、象牙質が露出してしまいます。

楔状欠損

楔状欠損(くさびじょうけっそん)は、犬歯や小臼歯などの頬側歯頚部に生じる摩耗症です。

楔状欠損が生じた歯は象牙質の露出することが多く、象牙質知覚過敏症の原因となります。

強い力での横磨きなど不適切なブラッシングが原因と言われてきましたが、近年、歯槽骨の退縮による歯冠歯根比の変化した歯に対する咬合時の歯頚部への引っ張り応力の集中も原因であると考えられています。

酸蝕症

歯の象牙質スメアー層は、象牙細管を封鎖するスメアプラグを形成することが知られています。

このため、たとえ象牙質が露出したとしても、象牙細管がスメアー層で覆われていれば象牙細管は封鎖され、物理的刺激が象牙細管内の組織液に作用しにくくなります。

ところが、酸蝕症の原因となるほどの低pH流体は、象牙質スメアー層に作用してスメアー層を取り除いてしまいます。

こうして、ワインやジュースなどの低pH流体を摂取することで象牙質知覚過敏症が引き起こされます。

歯の亀裂

中高年の方では、硬度の高い食べ物を咀嚼することで、歯の表面に微細な亀裂が入り、象牙質知覚過敏症を引き起こすことがあります。

この他にも、外傷で歯に亀裂が入ることも象牙質知覚過敏症の原因となります。

ホワイトニング

歯のホワイトニングでは、高濃度の過酸化水素や過酸化尿素を含んだ薬剤を使用します。これらの薬剤を歯に作用させると、歯の表面を覆っているペリクルが分解されます。

ペリクルを失った歯は、刺激が象牙質に届きやすくなるため、知覚過敏症状を引き起こすと考えられています。

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象牙質知覚過敏症の症状

象牙質知覚過敏症は、物理的な刺激を受けることで5〜10秒程度の疼痛を生じます。多いのが、温熱刺激による疼痛、特に冷水痛です。

また、乾燥や擦過刺激、ブラッシング刺激、糖度の高いものを食べることによる浸透圧の変化などの物理的刺激によっても疼痛を生じることがあります。

象牙質知覚過敏症の治療法

象牙質知覚過敏症の治療法をご説明します。

薬物治療

象牙質知覚過敏症の治療としてよく行われているのが、象牙質知覚過敏症抑制材料で歯をコーティングする薬物治療です。

象牙質知覚過敏症抑制材料を塗布すると、しゅう酸などの成分が歯質に含まれるカルシウムと化学反応を起こし、シュウ酸カルシウムなどの高分子保護皮膜を形成します。

この保護皮膜が露出した象牙細管の表面を機械的に閉鎖することで、象牙細管内の組織液の移動を抑止し、象牙質知覚過敏症を抑制します。

充填治療

楔状欠損などにより象牙質が露出した症例では、コンポジットレジンやグラスアイオノマーセメントを充填して、露出した象牙細管を物理的に封鎖してしまう治療も行われます。

レーザー治療

Nd:YAGレーザーや半導体レーザーなどなどの組織透過型レーザーには、歯髄神経の疼痛閾値を高める鎮静作用があり、象牙質知覚過敏症の疼痛緩和効果が得られます。

また、象牙細管内でのタンパク質変性や凝固作用による象牙細管の閉鎖効果も認められています。

一方、炭酸ガスレーザーやEr:YAGレーザーなどの組織表面吸収型レーザーには、露出した象牙質表面の溶解作用があります。

この作用により象牙細管の開口部を閉鎖できますが、高出力での照射が必須ですので、歯髄の熱損傷のリスクから最近ではあまり行われていません。

麻酔抜髄

麻酔抜髄とは、局所麻酔のもとで歯髄を取り去る処置です。

抜髄処置は、不可逆性で、かつ歯の神経を抜くという侵襲の大きい処置であることから、象牙質知覚過敏症治療の第一選択とはなり得ません。

他の治療法が奏功しない、重度の象牙質知覚過敏症治療の最後の選択肢となります。

象牙質知覚過敏症の予防法

象牙質知覚過敏症の予防は、象牙質の露出を防ぐことにあります。

適切な歯磨き

歯肉退縮の原因はいろいろありますが、その筆頭は、不適切な歯磨きによる辺縁歯肉の摩耗です。

適度な硬さの歯ブラシで、辺縁歯肉を摩耗しないような適切な歯磨き法の指導を行い、辺縁歯肉の歯肉退縮を予防し、象牙質の露出を防ぎます。

正しい歯磨きのやり方と手順

歯牙接触癖の解消

歯ぎしりや食いしばりなどの歯牙接触癖(TSH)は、楔状欠損の原因の一つと考えられています。

歯牙接触癖を解消することも、象牙質知覚過敏症の予防には大切です。

知覚過敏予防歯磨剤を使う

市販の歯磨剤の中には、硝酸カリウムや乳酸アルミニウム、リン酸カルシウムなどを配合した歯磨剤が市販されています。

これらの薬用成分には、象牙細管の閉鎖効果や歯髄の鎮静効果があります。

日常のブラッシング時に、これらの薬用成分が配合された歯磨剤を使うのも、象牙質知覚過敏症の予防に効果的です。

【まとめ】知覚過敏について【治療・予防・原因・症状】

今回は、象牙質知覚過敏症の原因や症状、治療法や予防などについてご説明しました。

象牙質知覚過敏症は、齲蝕以外の原因によって象牙質が露出して生じる一時的な疼痛で、成人の1/7が罹患していると報告されるほど頻度の高い疾患です。

もし、象牙質知覚過敏症を疑われるような症状を認める方は、今回の記事をぜひ参考にしてください。


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