セラミック治療後にセラミックの歯が痛い(しみる)原因と対処法

セラミック治療後にセラミックの歯が痛い(しみる)原因と対処法

審美性に優れたセラミック治療は、美しい口元を実現するための選択肢のひとつとなっていますが、治療を終えてしばらく経った後やセラミックの歯を装着した直後に「歯がしみる」「ズキズキと痛む」といった不快な症状に悩まされるケースも少なくありません。せっかく時間や費用をかけて治療したのに、痛みが生じると不安になりますよね。
その痛みは、単なる知覚過敏でしょうか、それとも何か別の問題が隠れているのでしょうか。

この記事では、セラミック治療後に発生する歯の痛みやしみる症状の具体的な原因と、その適切な対処法を詳しく解説します。
この記事を読むことで、セラミックの歯に痛みが生じるメカニズムや考えられる病態、そしてそれぞれの症状に応じた治療・予防方法を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。

こんな疑問が解決

  • セラミックにした歯が急に痛くなったり、しみ始めたのはなぜか?
  • 治療直後の痛みや違和感は、時間が経てば自然に治るものか?
  • 冷たいものや熱いものがしみる、噛むと痛いなど、痛みの種類によって何が原因として考えられるのか?
  • 痛みが続く場合、歯科医院では具体的にどのような治療が行われるのか?
  • セラミック治療後に痛みを予防するために、自分でできる対策や歯科医院で受けられる処置はあるか?

セラミック治療後に痛みが生じる原因

セラミック治療を受けた後、どうして痛みが生じるのでしょうか。

象牙質知覚過敏症

セラミック治療では、セラミックの厚みを確保するために2㎜前後の削除量が必要となります。咬合面などで起こりやすいのですが、エナメル質が菲薄化している場合、形成後に象牙質が露出することがあります。生活歯の歯冠形成後に象牙質が露出すると、象牙細管の開口部が形成表面に現れます。一般的な象牙質知覚過敏症と異なり、象牙細管の開口部が口腔内に直接曝露されるわけではありませんが、セラミッククラウンへの温熱刺激が象牙細管の開口部を通して伝わることで象牙質知覚過敏症を起こします。
また、セラミッククラウンを装着して以降、歯周病により歯肉退縮が生じた結果、歯根が口腔内に露出するようになると、象牙質知覚過敏症を引き起こすことがあります。

知覚過敏について【治療・予防・原因・症状】

歯髄炎

歯髄炎は歯の歯髄に生じる炎症症状です。形成時の冷水刺激や擦過刺激などが原因となって生じるほか、クラウン装着後の温熱刺激も歯髄炎の原因となります。

咬合干渉

咬合干渉とは、正常な咬合状態を障害する歯の接触です。
咬合干渉を引き起こすのは、早期接触、咬頭干渉、無接触です。早期接触とは、閉口時に上下顎の歯の1本や数本が早期に接触する状態です。咬頭干渉は、下顎を左右にずらす動きをしたときに、下顎の動きが障害される咬合接触です。無接触とは、他の歯が咬合しているときに、全く咬合していない歯のことです。
これらの咬合干渉が生じると、セラミッククラウンの破損のほか、咬合性外傷を引き起こすことがあります。

不良習癖

疼痛の原因となる不良習癖は、過度な咬合力をもたらす歯ぎしりやクレンチング(食いしばり)、タッピング(歯牙接触癖)が代表的です。
不良習癖によって生じた過度な負荷は、歯周組織の生理的許容範囲を越えて歯周組織を傷害します。その結果、咬合性外傷を発現し、痛みを誘発します。

二次齲蝕

二次齲蝕は再発した齲蝕のことです。

生活歯の場合、二次齲蝕を生じると歯髄炎を生じると痛みを感じるようになります。

歯周病

優れた性質を持つセラミック治療ですが、セラミッククラウンを装着した後、適切なプラークコントロールを行っていないと、歯肉炎や歯周炎を引き起こします。特にセラミック矯正では歯軸と歯冠軸が一致しなくなることなどにより、歯間部歯肉の歯肉炎が起こりやすい傾向があります。
歯肉炎や歯周炎は、歯肉の腫脹や圧痛などの痛みの原因となります。

根尖性歯周炎

根尖性歯周炎とは、歯髄の感染から根尖孔を通って歯周組織に生じた細菌感染によって引き起こされる歯周病です。根尖性歯周炎には急性と慢性がありますが、痛みを生じるのはほとんどの場合、急性根尖性歯周炎です。
急性根尖性歯周炎では、根尖部の歯根膜に炎症症状が発現し、組織圧が高まることで咬合痛や打診痛、歯の挺出感が生じます。炎症が強まると痛みは増し、硬いものを食べると激痛を生じることもあります。温熱刺激で痛みは増しますが、冷刺激では一時的に痛みは寛解します。

歯肉膿瘍や骨膜下膿瘍

急性根尖性歯周炎が歯槽骨に波及すると、骨膜下に膿瘍を形成します。これを骨膜下膿瘍といいます。膿瘍の形成が続き、骨膜下から歯肉の粘膜下にまで拡大すると歯肉に波動を触れる膿瘍を形成します。これが歯肉膿瘍です。
いずれの膿瘍も内圧が高まっているため、腫脹部位に接触すると圧痛を認めます。

歯根破折

歯根破折を生じると歯根周囲の歯周組織に炎症症状が発現するため、痛みを感じるようになります。レントゲン写真に写ってこないような歯根の亀裂によっても、同様の症状が現れることがあります。

セラミック治療後に生じる痛みの症状

セラミック治療後に生じる痛みには、いろいろな症状があります。

冷水痛や温熱痛

冷刺激や温刺激によって誘発される痛みです。
冷水痛の原因としては象牙質知覚過敏症が代表的ですが、軽度の歯髄炎によっても生じます。温熱痛は歯髄炎の代表的症状です。

咬合痛

咬合痛は咬合時に発現する痛みで、打診痛ともよばれます。根尖性歯周炎や歯根破折などによって発現するほか、咬合性外傷や咬合干渉によっても生じます。
咬合していない状態では咬合痛は生じませんが、歯の挺出感や浮遊感を感じることがあります。

歯肉部圧痛

歯肉の腫脹部位を圧迫することで生じる痛みです。歯肉炎や歯周炎、歯肉の膿瘍を形成した場合に生じます。

セラミック治療で生じた痛みの治療法

セラミック治療後に痛みを生じた場合の治療法についてご説明します。

経過観察

セラミッククラウンを装着した刺激による痛みの場合、支台歯がセラミッククラウンに慣れるにしたがって、自然に痛みが消失することも多いです。そのため、装着直後の痛みに関しては、しばらくの間経過観察となります。

咬合調整

咬合干渉や咬合性外傷など、咬合痛を感じる症例では咬合調整を行い、セラミッククラウンの支台歯に過度な咬合圧がかからないようにします。

麻酔抜髄

歯髄炎による痛みの場合は、局所麻酔のもとセラミッククラウンを除去して、歯髄、すなわち歯の神経を取り除く麻酔抜髄を行います。根管治療が終わったのち、改めてセラミッククラウンを装着します。

歯周病治療

歯周病による痛みの場合は、抗菌薬による消炎ののち歯周病治療を行います。

歯周病の原因と症状とは?治療法と予防法も解説

口腔内消炎手術

歯肉膿瘍や骨膜下膿瘍を形成し、かつ波動を触れる場合は口腔内消炎手術を行い、膿瘍部位を切開し排膿させることで内圧を低減します。

薬物療法

根尖性歯周炎や膿瘍を形成した症例では、抗菌薬の処方も行われます。第一選択はペニシリン系の抗菌薬ですが、ペニシリン系にアレルギーの既往がある場合は、マクロライド系の抗菌薬が選択されます。
基本的には内服薬が選ばれますが、腫脹が顔面に及ぶほど著明な場合や嚥下痛、開口障害、リンパ節腫大、発熱を伴うような場合は注射剤の適応となりますし、症状によっては入院となることもあります。

口腔内装置

歯ぎしりやクレンチング(食いしばり)、タッピング(歯牙接触癖)により歯周組織が障害されている場合は、口腔内装置、いわゆるマウスピースを装着します。
口腔内装置によって、セラミッククラウンの支台歯に過度な咬合力が集中しないようにします。口腔内装置の厚みは症状によって異なりますが、一般的に多いのは3㎜ほどの厚さです。

セラミック治療の痛みの予防法

セラミック治療後の痛みを予防する方法もあります。

象牙質レジンコーティング

生活歯にセラミック治療を行う場合、露出した象牙質に対しレジンコーティングを行い、象牙質表面に硬化皮膜を形成することで象牙細管の開口部を封鎖します。この作用により、セラミッククラウン装着後の痛みを予防します。

根管治療

支台歯に根尖病巣が認められる場合、セラミック治療に先立って根管治療を行うと根尖性歯周炎のリスクを下げることができます。また、齲蝕が歯髄に近接するほど拡大している場合は、麻酔抜髄をあらかじめ行っておくと歯髄炎の痛みを予防することができます。

口腔内装置

咬合に関係する不良習癖や咬合干渉などが認められる場合は口腔内装置を製作し、セラミッククラウンの支台歯に過度な咬合力が集中しないようにする方法もあります。

【まとめ】セラミック治療後にセラミックの歯が痛い(しみる)原因と対処法

セラミック治療後の歯の痛みやしみる原因と、それぞれの症状に合わせた対処法について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。

この記事のおさらい

  • セラミックの歯に痛みが生じる原因は「象牙質知覚過敏症」「歯髄炎」「咬合干渉」「二次齲蝕」「歯周病」「歯根破折」など、非常に多岐にわたる
  • 痛みやしみる症状には「冷水痛・温熱痛」「咬合痛(噛んだ時の痛み)」「歯肉部圧痛」といった種類があり、原因によって症状が異なる
  • 痛みの治療法は、一時的なものと判断された場合の「経過観察」から、「咬合調整」「麻酔抜髄(神経を取る治療)」「歯周病治療」「口腔内消炎手術」まで、原因に応じた適切な処置が必要
  • 痛みの予防法として、治療前の「象牙質レジンコーティング」や「根管治療」、また「口腔内装置(マウスピース)」の利用などが有効

セラミック治療は、歯の機能と審美性を回復させる優れた治療法ですが、治療後に痛みやしみる症状が生じるリスクが全くないわけではありません。
大切なのは、その痛みを放置せず、原因を正しく突き止め、適切な治療を受けることです。自己判断せずに、冷たいものがしみる、噛むと痛いなど、いつもと違う違和感があれば、すぐに歯科医師に相談しましょう。
この記事で学んだ知識を参考に、ご自身の症状を正確に伝え、適切な治療を受けることで美しく健康なセラミックの歯を長く維持することができます。


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