成人矯正は単に見た目の改善だけでなく、口腔の健康を保つためにも重要な治療です。しかし、歯並びが気になる一方で「大人になってからの矯正は費用が高いのでは?」「治療に時間がかかり、日常生活に影響が出るのでは?」といった不安を抱える方も多いでしょう。
矯正治療は、原則的に保険診療の適応外の治療です。そのため、自費診療となる矯正治療の治療費は一般的に高額となります。そして、近年では矯正治療の選択肢が多様化し、ライフスタイルに合わせた方法が選べるようになっており、その治療費や治療期間に関する情報は、治療法を選ぶ際に非常に重要な要素となっています。
では、歯並びを矯正するための歯列矯正にはどのような方法があって、治療費や矯正期間はどのように違うのでしょうか。
この記事では、大人の歯並びの矯正治療について詳しく解説します。
この記事を読むことで、大人の歯列矯正に関する費用、期間、種類について理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問が解決
- 大人になってからでも矯正治療は可能なのか
- どのような特徴を持つ矯正方法があるのか
- 治療期間はどのくらいかかるのか
- 費用はどれくらいで、保険適用されることはあるのか
- 大人の矯正治療に年齢制限はあるのか
目次
大人の矯正治療の種類
大人の矯正治療は、主流であるマルチブラケット法に加え、舌側にブラケットを装着するリンガルマルチブラケット法や可撤式アライナー法などさまざまな方法が開発されています。
マルチブラケット法
マルチブラケット法とは、歯の表面にブラケットという金具を装着し、ブラケットに設けられている溝にU字型の弾性ワイヤーを装着し、ワイヤーの弾力性を利用して歯を移動させる矯正治療です。
現在のマルチブラケット法は、エッジワイズ法が主流です。マルチブラケット法は、100年ほどの歴史があり、矯正治療というとこの方法がイメージされるほどメジャーな治療法です。ほぼ全ての歯列不正の治療が可能で、顎矯正手術の術前矯正にも使われています。
こうした優れた特徴の一方で、ブラケットとワイヤーが目立つことによる審美的な影響や、ブラケットとワイヤーを常に装着し続けるために、食事や歯磨きが難しくなる、頬や唇に傷をつけてしまう、定期的に歯科医院でワイヤーを交換しなければならないなどの難点もあります。
リンガルマルチブラケット法
歯の表面ではなく、歯の舌側、つまり裏側にブラケットや弾性ワイヤーを装着する治療法です。現在では、インコグニート®︎というブラケットをオーダーメイドで製造する治療法も開発されています。
インコグニート®︎では、ひとりひとり異なる歯の形に合わせたブラケットを製作するため、ブラケットがコンパクトでかつ歯にフィットします。そのため、矯正装置そのものが非常にコンパクトになっています。しかも、歯にフィットしますから外れにくいという利点もありますし、歯磨きがしやすくなるため、虫歯や歯周病にもなりにくくなります。
このように数多くの利点がある一方、舌側にブラケットを装着するのは難度が高く、どこででも受けられるわけではありません。ブラケットをオーダーメイドして治療自体も難しいため、治療費も高くなる傾向にあります。
可撤式アライナー法
可撤式アライナー法とは、矯正装置としてマウスピースを利用した矯正治療です。可撤式アライナー法では、マウスピースをコンピュータで設計し、工作機械で自動的に作成します。歯科治療のデジタル化の魁とも言える治療法で、アメリカのインビザライン®︎が代表的です。
可撤式アライナー法で用いられるマウスピースは、いずれも透明度が高い上にたいへん薄く作られており、装着していてもわからないほど目立たない審美性の高さに特徴があります。また食事や歯磨きのときは外すことができるため、日常生活への影響もほとんどありません。こうした利点の一方、マウスピースを規定時間装着しなければ効果が得られない、新しいマウスピースに定期的に交換しなければ予定通り治療が進められない、顎矯正手術の術前矯正には使えないなどの難点もあります。
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顎矯正手術
上顎前突症や下顎前突症、小下顎症、顔面部左右非対称など、顎骨の骨格性の異常を呈する病気を顎変形症と言います。顎変形症では矯正治療で歯を移動させるだけではなく、骨格の異常も改善する必要があります。そこで、行われるのが顎矯正手術です。
顎矯正手術には、上顎骨に行われるLe fort(ル・フォー)1型・上顎前方歯槽部骨切り術、下顎骨に行われる下顎枝矢状分割術・下顎枝垂直骨切り術、オトガイ形成術などがあります。オトガイ形成術は、下顎の先端であるオトガイ部の骨に対する骨切り手術です。下顎枝矢状分割術や下顎枝垂直骨切り術を行っても、オトガイ部の左右の非対称感や突出感などが改善しない場合に組み合わせて行われます。
いずれの手術も、外来で行われる手術ではなく、入院で全身麻酔下にて行われる侵襲性の高い手術となります。手術の術式は、症状に応じてそれぞれ単独、もしくは上下顎組み合わせて行われます。
大人の矯正治療の治療期間
大人の矯正治療の治療期間は、方法による違いはあまりありません。
矯正治療の治療期間
大人の矯正治療では、マルチブラケット法、可撤式ライナー法、いずれの場合もおよそ2〜3年です。
顎矯正手術の治療期間
顎矯正手術は、まず手術前に手術を前提とした矯正治療、すなわち術前矯正が必要です。術前矯正ののち、顎矯正手術が行われます。手術後もしばらくの間、術後の矯正治療が続きます。これらすべての治療に要する期間は、およそ2〜3年です。
手術を行うにもかかわらず一般的な矯正治療の治療期間と大差ありませんが、これは病院での手術に要する期間が術後の経過観察を含めて1〜2か月に過ぎないからです。
大人の矯正治療の費用
大人の矯正治療の治療費は、矯正治療の方法によって異なります。
マルチブラケット法
現在の矯正治療の主流であるマルチブラケット法の相場は、50〜80万円程度ですが、用いる矯正装置によって違いがあります。例えば、一般的な金属製に変わり、審美性の高いブラケットを使うと10〜15万円ほど高くなる傾向にあります。
リンガルマルチブラケット法(舌側)
リンガルマルチブラケット法は治療の難易度が高いため、費用は通常のマルチブラケット方と比べて高額になる傾向があり、80〜120万円程度です。特に、リンガルマルチブラケット法で優れた治療成績を示すインコグニートは、ブラケットをオーダーメイドで製作するため、より高額で120〜180万円程度のところが多いでしょう。
可撤式アライナー法
可撤式アライナー法は、多くのメーカーからさまざまなタイプが開発されています。
この方法の先駆者であり、代表格とも言えるインビザライン®︎の場合、80〜100万円ほどが相場となっています。そのほかの可撤式アライナー法の費用も、概ねこの前後です。
顎矯正手術
顎矯正手術を前提とした矯正治療は、保険診療の給付の対象となっております。一般的な保険治療の自己負担割合である3割の場合、自己負担額は矯正治療でおよそ20〜30万円です。
顎矯正手術の費用は、下顎骨形成術がオトガイ形成術で約7,800点、下顎枝矢状分割術や下顎枝垂直骨切り術で約31,000点、上顎骨形成術が約28,000点です。これに入院や全身麻酔の費用などが加わるため、自己負担額は30〜40万円ほどとなります。
なお保険診療の場合、窓口での自己負担額が一定額を超えた場合に、一定額以上の金額を支給される高額療養費制度が利用できますから、治療費の支払い額は大幅に減額されます。
大人の矯正治療の年齢制限
大人の矯正治療には、年齢制限はありません。20代の方でも、40代の方でも受けていただけます。
【まとめ】大人の歯並び矯正の費用・期間・種類
大人の歯並び矯正に関する費用、期間、種類について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
この記事のおさらい
- 大人の矯正治療には、マルチブラケット法、リンガルマルチブラケット法、可撤式アライナー法、顎矯正手術がある
- 各矯正方法の費用は、マルチブラケット法が50〜80万円程度、リンガルマルチブラケット法が80〜180万円程度、可撤式アライナー法が80〜100万円程度で歯科医院によって費用が異なり、顎矯正手術は50〜70万円で高額療養費制度が利用可能
- 矯正治療の期間は一般的に2〜3年
- 大人の矯正治療には年齢制限がなく、20代の方でも40代の方でも受けられる
歯列矯正の方法には、それぞれメリット・デメリットがありますが、目的や生活スタイルに合った治療法を選ぶことが重要です。
不安や疑問があれば、まずは矯正歯科を標榜している歯科医院へ相談し、歯科医師のアドバイスを受けながら、ご自身に合った適切な治療法を選択するようにしましょう。