着色したり変色したりした歯の色調を改善させる方法はいろいろあります。
よく知れられている方法のひとつにホワイトニングがありますが、ホワイトニングは歯を削らずに歯を白くすることができる反面、即効性がなく、すぐに歯を白くしたいときにはあまり適しているとは言い難いところもあります。
すぐに歯を白くしたいときにおすすめの方法のひとつに、ホワイトコートという施術があります。
ホワイトコートとは、どのような歯の色調改善法なのでしょうか。
今回は、手軽に歯を白くできるホワイトコートについてご説明します。
目次
ホワイトコートとは
ホワイトコートとは、歯科用色調遮蔽材料に分類される歯面コーティング材の一種です。
ホワイトニングは修復物や補綴物には効果がありませんが、ホワイトコートは修復治療、補綴治療が行われた歯にも対応できるなど、色調改善を目的とした幅広い症例に対応できるのが特徴です。
ホワイトコートのメリット
ホワイトコートにより歯の色調を改善するメリットについてご説明します。
歯を削らない
ホワイトコートは、歯面に直接塗布して色調の改善を図ります。
歯を削合することがない可撤性の遮蔽材料なので、歯の受ける侵襲性が低いのが利点です。
即日処置
ホワイトコートは、施術した日に全ての処置が終了します。
1日で希望する色調に改善することができます。
色調が豊富
ホワイトコートのカラーバリエーションは、9カラーです。
透明感のあるカラーを希望する方は、エナメルやA1、B1が適しています。
自然な色調を希望する方は、OA1、OA2、OA3、ホワイト系の色調を希望するならOB1、OB0がおすすめです。
金属補綴物や修復物の金属色を遮蔽する場合は、オペークを用います。
主訴に適した最適な色調を選べるのがホワイトコートの利点です。
欠けにくい
ホワイトコートは、成分のモノマー組成によって高い強度を獲得しています。
曲げ強さが高いため、辺縁部分に生じやすいチッピングが起こりにくくなっています。
なお、欠けにくいと除去しにくくなってしまうものですが、ホワイトコートは弾性率を低くしていますので、除去しなければならないときは、塗布したホワイトコートの一点に探針などを引っ掛けると容易に除去できます。
エナメル質を傷めない
ホワイトコートのエッチングプライマーの酸性度は、マイルドに設定してあります。したがって、エナメル質表層の脱灰を最小限にとどめています。
ホワイトコートのデメリット
ホワイトコートを用いて歯の色調を改善する場合のデメリットは、以下の通りです。
厚みが出やすい
歯を削ることなく、既存の歯面にそのまま塗布しますので、厚みが生じることは避けられません。
剥離
剥がれにくい特性を持っていますが、決して剥離しないわけではありません。
3か月ほどで自然に剥離し始めます。
咬合面には使えない
咬合圧に耐えられるほどの強度を備えていませんし、削合せずに咬合面に塗布するとその部分が早期接触を起こし、咬合位が変化するリスクもありますので、咬合面には塗布できません。
ホワイトコートの適応症
ホワイトコートが適しているのは主に以下のような症例ですが、これ以外にも使用することはできます。
ホワイトニング
結婚式やイベント、プレゼンテーションなどが迫っているような方で、それまでに歯の色調を白く整えたいと考えている方に適しています。
変色したコンポジットレジン
保険診療のコンポジットレジンは、経時的に徐々に黄色く変色してしまいます。
変色したコンポジットレジンの色調を改善するには、コンポジットレジンや歯を削合して除去しなくてはなりません。
歯を削合してまで色調を改善させたくはない方もホワイトコートなら、コンポジットレジンを除去することなく、色調を改善できます。
変色歯
テトラサイクリン歯や、歯牙フッ素症のような変色歯の色調も改善できます。
金属補綴物の色調改善
全部鋳造冠や複雑金属インレーのように、金属が露出するような補綴物、修復物であっても、金属色を遮蔽して、色調を改善できます。
ホワイトコートの注意点
ホワイトコートの治療時の注意点についてご説明します。
剥離したら
ホワイトコートが部分的に剥がれた場合は、剥離した部分だけ塗布しなおすと周辺部分との色調の差が現れてしまいますので、全て除去してホワイトコートを新しく塗布します。
食べ物や嗜好品の制限
ホワイトコートは塗布直後、着色しやすいので、2〜3日ほどの間、カレーやコーヒー、紅茶、タバコなど着色しやすい食べ物や嗜好品は避けるようにしてください。
歯肉粘膜の白化
プライマーが歯肉に付着すると白化することがありますが、短時間で自然に消退します。
ベースコートの範囲
ベースコートは、切端付近には塗布しません。
ホワイトコートの治療の流れ
一般的なホワイトコートの治療の流れについてご説明します。
1.診察・相談
ホワイトコートを実際に行う前に、どのような点を改善したいのか、ホワイトコートで改善できるのか、そしてホワイトコートの特徴や治療費などを説明します。
2.診断と検査
口腔内診査、レントゲン写真・口腔内写真撮影などを行います。
口腔内写真は、元の歯の色調を記録するためにも必須です。
3.施術
①歯面清掃と乾燥
まず、ホワイトコートを塗布する歯面を歯面研磨材とラバーカップやポリッシングブラシを使って、清掃・研磨します。そして、歯面研磨材が残存しないように水洗したのち、乾燥させます。
②プライマーの塗布と乾燥
歯面にプライマーを塗布し、20秒間放置した後エアーで乾燥させます。金属補綴物や修復物の場合は、金属接着性プライマー処理を行います。
③ベースコートの塗布
ベースコートをまず唇側面に塗布し、その後隣接面や歯頚部に塗布します。
金属補綴物や修復物の場合は、金属色を遮蔽するためにオペークを一度塗布し、その上から色調改善用のベースコートを塗布します。
④光重合
歯科用の可視光線照射器を使って、一定時間光照射して、ベースコートを硬化させます。
⑤未重合層の除去
この後のトップコートの表面硬化性を高めるため、乾燥ガーゼを使って歯面の表層の未重合層を除去します。
⑥トップコートの塗布と光重合
平筆を使って、トップコートをベースコートの上に薄く均一に塗布します。そして、歯科用の可視光線照射器を使って光照射します。
⑦重合確認と咬合確認
トップコートの未重合層の有無を確認し、必要に応じて光照射を繰り返したり、乾燥ガーゼで除去したりします。
ホワイトコートと保険診療
ホワイトコートは、保険診療の適応を受けていませんので、自費診療になります。自費診療は、各歯科医院が治療費を設定しています。
天然の変色歯か金属補綴物かなど、症例によって治療費に違いがありますが、天然歯の場合で1歯あたり2,000〜3,000円、金属補綴物で1歯3,000〜5,000円などが相場のようです。
数本まとめて行うと費用がお安くなるようなところもあり、正確なところは受診する歯科医院でご相談ください。
【まとめ】手軽に歯を白くできるホワイトコートのメリットとデメリット
今回は、歯の色調を改善する方法のひとつであるホワイトコートについてご説明しました。
ホワイトコートの長所は、下記などです。
- 歯を削らない
- 即日処置
- 色調が豊富
- 欠けにくい
- エナメル質を傷めない
厚みが出やすい、咬合面には使えないなどの短所もありますが、即効性があり、できるだけ早く歯の色調を改善したい方に適しています。