歯の色が気になるけれど「歯を削りたくない」「ホワイトニングのように時間がかかるのは困る」「イベントまでに急いで歯を白くしたい」といった悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
短期間で手軽に歯を白くできる方法として、近年注目を集めているのが「ホワイトコート(歯のマニキュア)」です。これは、歯科用のコーティング材を歯の表面に直接塗布することで、歯を削ることなく色調を改善する審美歯科の治療法です。
この記事では、手軽に歯を白くできるホワイトコート(歯のマニキュア)の具体的な特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。
この記事を読むことで、ホワイトコートの施術内容、他の歯を白くする方法との違い、そして治療の適応症や注意点を深く理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問が解決
- ホワイトコートとは具体的にどんな治療法で、すぐに歯を白くできるのは本当か?
- 従来のホワイトニングやセラミック治療と比べて何が違うのか?
- 歯を削らずに変色したコンポジットレジンや金属の被せ物の色も改善できるのか?
- 厚みが出たり、剥がれたりといったホワイトコート特有のデメリットや注意点
- ホワイトコートは保険が適用されるのか、費用相場はどれくらいか?
目次
ホワイトコートとは

ホワイトコートとは、歯科用色調遮蔽材料に分類される歯面コーティング材の一種です。
ホワイトニングは修復物や補綴物には効果がありませんが、ホワイトコートは修復治療、補綴治療が行われた歯にも対応できるなど、色調改善を目的とした幅広い症例に対応できるのが特徴です。
ホワイトコートのメリット
ホワイトコートにより、歯の色調を改善するメリットについてご説明します。
歯を削らない
ホワイトコートは、歯面に直接塗布して色調の改善を図ります。歯を削合することがない可撤性の遮蔽材料なので、歯の受ける侵襲性が低いのが利点です。
即日処置
ホワイトコートは施術した日に全ての処置が終了します。1日で希望する色調に改善することができます。
色調が豊富
ホワイトコートのカラーバリエーションは9カラーです。
透明感のあるカラーを希望する方は、エナメルやA1、B1が適しています。自然な色調を希望する方は、OA1、OA2、OA3、ホワイト系の色調を希望するならOB1、OB0がおすすめです。金属補綴物や修復物の金属色を遮蔽する場合はオペークを用います。
主訴に適した最適な色調を選べるのが、ホワイトコートの利点です。
欠けにくい
ホワイトコートは、成分のモノマー組成によって高い強度を獲得しています。曲げ強さが高いため、辺縁部分に生じやすいチッピングが起こりにくくなっています。
なお、欠けにくいと除去しにくくなってしまうものですが、ホワイトコートは弾性率を低くしていますので、除去しなければならないときは塗布したホワイトコートの一点に探針などを引っ掛けると容易に除去できます。
エナメル質を傷めない
ホワイトコートのエッチングプライマーの酸性度はマイルドに設定してあります。したがって、エナメル質表層の脱灰を最小限にとどめています。
ホワイトコートのデメリット
ホワイトコートを用いて歯の色調を改善する場合のデメリットは以下の通りです。
厚みが出やすい
歯を削ることなく、既存の歯面にそのまま塗布しますので厚みが生じることは避けられません。
剥離
剥がれにくい特性を持っていますが、決して剥離しないわけではありません。3か月ほどで自然に剥離し始めます。
咬合面には使えない
咬合圧に耐えられるほどの強度を備えていませんし、削合せずに咬合面に塗布するとその部分が早期接触を起こし、咬合位が変化するリスクもありますので咬合面には塗布できません。
ホワイトコートの適応症
ホワイトコートが適しているのは主に以下のような症例ですが、これ以外にも使用することはできます。
ホワイトニング
結婚式やイベント、プレゼンテーションなどが迫っているような方で、それまでに歯の色調を白く整えたいと考えている方に適しています。
変色したコンポジットレジン
保険診療のコンポジットレジンは、経時的に徐々に黄色く変色してしまいます。
変色したコンポジットレジンの色調を改善するには、コンポジットレジンや歯を削合して除去しなくてはなりません。歯を削合してまで色調を改善させたくはない方も、ホワイトコートならコンポジットレジンを除去することなく、色調を改善できます。
変色歯
テトラサイクリン歯や歯牙フッ素症のような変色歯の色調も改善できます。
金属補綴物の色調改善
全部鋳造冠や複雑金属インレーのように金属が露出するような補綴物、修復物であっても、金属色を遮蔽して色調を改善できます。
ホワイトコートの注意点
ホワイトコートの治療時の注意点についてご説明します。
剥離したら
ホワイトコートが部分的に剥がれた場合は、剥離した部分だけ塗布しなおすと周辺部分との色調の差が現れてしまいますので、全て除去してホワイトコートを新しく塗布します。
食べ物や嗜好品の制限
ホワイトコートは塗布直後は着色しやすいので、2〜3日ほどの間、カレーやコーヒー、紅茶、タバコなど着色しやすい食べ物や嗜好品は避けるようにしてください。
歯肉粘膜の白化
プライマーが歯肉に付着すると白化することがありますが、短時間で自然に消退します。
ベースコートの範囲
ベースコートは切端付近には塗布しません。
ホワイトコートの治療の流れ
一般的なホワイトコートの治療の流れについてご説明します。
1.診察・相談
ホワイトコートを実際に行う前に、どのような点を改善したいのか、ホワイトコートで改善できるのか、そして、ホワイトコートの特徴や治療費などを説明します。
2.診断と検査
口腔内診査、レントゲン写真・口腔内写真撮影などを行います。口腔内写真は、元の歯の色調を記録するためにも必須です。
3.施術
①歯面清掃と乾燥
まず、ホワイトコートを塗布する歯面を歯面研磨材とラバーカップやポリッシングブラシを使って清掃・研磨します。そして、歯面研磨材が残存しないように水洗したのち、乾燥させます。
②プライマーの塗布と乾燥
歯面にプライマーを塗布し、20秒間放置した後エアーで乾燥させます。金属補綴物や修復物の場合は、金属接着性プライマー処理を行います。
③ベースコートの塗布
ベースコートをまず唇側面に塗布し、その後隣接面や歯頚部に塗布します。
金属補綴物や修復物の場合は、金属色を遮蔽するためにオペークを一度塗布し、その上から色調改善用のベースコートを塗布します。
④光重合
歯科用の可視光線照射器を使って、一定時間光照射してベースコートを硬化させます。
⑤未重合層の除去
この後のトップコートの表面硬化性を高めるため、乾燥ガーゼを使って歯面の表層の未重合層を除去します。
⑥トップコートの塗布と光重合
平筆を使って、トップコートをベースコートの上に薄く均一に塗布します。そして、歯科用の可視光線照射器を使って光照射します。
⑦重合確認と咬合確認
トップコートの未重合層の有無を確認し、必要に応じて光照射を繰り返したり、乾燥ガーゼで除去したりします。
ホワイトコートと保険診療
ホワイトコートは、保険診療の適応を受けていませんので自費診療になります。自費診療は各歯科医院が治療費を設定しています。
天然の変色歯か金属補綴物かなど、症例によって治療費に違いがありますが、天然歯の場合で1歯あたり2,000〜3,000円、金属補綴物で1歯3,000〜5,000円などが相場のようです。数本まとめて行うと費用がお安くなるようなところもあり、正確なところは受診する歯科医院でご相談ください。
【まとめ】手軽に歯を白くできるホワイトコートのメリットとデメリット
短期間で歯を白くできるホワイトコート(歯のマニキュア)の仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
この記事のおさらい
- ホワイトコートは、歯を削らずに歯面にコーティング材を塗布し、即日で歯の色調を改善できる審美歯科治療である
- 最大のメリットは「即日処置が可能」であり、結婚式などのイベントを控えた方やすぐに効果を得たい方に適している
- ホワイトニングでは効果がない、変色したレジンや金属補綴物の色調改善にも対応する
- デメリットとして「厚みが出やすい」「約3か月ほどで自然に剥離し始める」「咬合面には使えない」といった点が挙げられる
- 自費診療(保険適用外)であり、費用は天然歯か補綴物かなど、症例や歯科医院によって異なるため事前の相談が必須
ホワイトコートは、手軽さと即効性を兼ね備えた非常に魅力的な歯の色調改善方法です。しかし、一時的な効果であることや、噛み合わせの面には適用できないなど、万能ではありません。
このコラムで解説したメリットとデメリット、そして治療の流れをしっかりと理解し、ご自身のライフスタイルや理想とする白さ、耐久性の希望に合わせて、最適な審美歯科治療を選択してください。
後悔のない治療を行うためにも、まずは信頼できる歯科医院でホワイトコートの特徴や注意点について詳しく相談することから始めましょう。

