笑顔は、人の第一印象を決定づける大変重要な役割を果たしています。しかし、笑ったときに歯肉が過剰に露出してしまう「ガミースマイル」は、特に審美的な観点からコンプレックスの原因となり、お子様の心理面に影響を与えることが指摘されています。
「うちの子のガミースマイルは、成長するにつれて自然に治るのだろうか?」「いつ頃から治療を始めれば良いのか?」と不安を感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、子供のガミースマイルの原因や自然治癒の可能性、適切な治療法、そして治療開始の適齢期を詳しく解説します。
この記事を読むことで、子供のガミースマイルに関する正しい知識と、外科的な処置を伴わない治療の選択肢を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問が解決
- 子供のガミースマイルの原因には、どのようなものがあるのか?
- 子供のガミースマイルは、永久歯が生え揃うまでに自然に治癒することは期待できるのか?
- 子供のガミースマイルの治療法として、具体的にどのような矯正装置や訓練が用いられるのか?
- 顎骨の成長を利用して効果的に治療を進める、最適な開始時期(適齢期)は何歳頃か?
- 子供のガミースマイル治療は、医療保険の適用を受けることができるのか?
目次
ガミースマイルとは
ガミースマイルとは、笑ったときの上顎前歯部上部の歯肉露出のことです。
成人に限らず、成長途上にある子供にも認められることがあります。
子供のガミースマイルの原因
子供のガミースマイルの原因は上顎骨の垂直方向への過成長や上顎骨の歯槽突起の挺出、上顎前歯の萌出異常、上口唇の幅の異常などです。代表的な歯列の異常には、過蓋咬合や上顎前突が挙げられます。
過蓋咬合とは、上顎前歯部と下顎前歯部の垂直被蓋が異常に深い咬合関係のことです。上顎前突は下顎遠心咬合や上顎近心咬合という咬合関係のことで、前者は上顎の歯列弓に対して下顎の歯列弓が遠心位に咬合するもの、後者は下顎の歯列弓が正常な位置で上顎歯列弓が近心位に咬合しているものです。
成人のガミースマイルの原因にある歯肉増殖については、子供の場合は稀です。
子供のガミースマイルの症状
ガミースマイルかどうかを診断する際の基準が、笑ったときの上口唇のリップラインと上顎前歯部との位置関係です。
リップラインは、低位、中位、高位の3段階で分類されます。低位は、笑ったときに上顎前歯の一部しか露出しない状態です。中位は、歯肉が上顎前歯の辺縁から1〜3㎜露出した状態、高位は3㎜以上露出した状態を指します。
通常、リップラインが高位であるとガミースマイルと診断されます。なお、歯が未萌出の赤ちゃんは、いくら歯肉が露出していたとしても、ガミースマイルとは診断されません。
子供のガミースマイルは自然に治る?
子供のガミースマイルは、前述したように歯列不正が大きく関係しています。
残念ながら子供の歯列不正は自然に治ることはありません。したがって、子供のガミースマイルもまた自然に治ることは期待できません。
子供のガミースマイルの治療法
子供のガミースマイルの治療法は、子供の持つ成長発育という特性を利用したものになります。成人のガミースマイル治療のように、上唇挙筋挙上術や顎矯正手術などの侵襲性の高い外科治療は選択肢とはなりません。
矯正歯科治療
ガミースマイルの原因となる不正咬合としては、過蓋咬合や上顎前突が挙げられます。過蓋咬合や上顎前突を認めるガミースマイルは、矯正歯科治療で改善が図れます。
過蓋咬合の改善法としては、前歯の圧下や臼歯の挺出、もしくはその両方が行われます。
過蓋咬合の治療に使われる矯正装置としては、臼歯の萌出促進や前歯の圧下を目的とした咬合挙上板やアクチバトール、マルチブラケット装置へのユーティリティ・アーチの応用などが挙げられます。
オーバージェットが6㎜以上であると上顎前突と診断されますが、その治療では上顎前歯の舌側移動や下顎骨、下顎歯列の近心移動、もしくはその両方が行われます。
前期混合歯列期であれば、咬合斜面板やアクチバトールによる下顎骨の前方への成長誘導と咬合挙上、上顎前歯の舌側移動を図ります。後期混合歯列期では、マルチブラケット法による器械的な咬合挙上に加えて、顎外固定法を併用した歯の前後的移動などの積極的な歯の移動の推進による治療が行われます。
MFT(口腔筋機能療法)
MFT(口腔筋機能療法)は舌や口腔顔面筋など口腔周囲筋の機能異常を改善したり、口腔周囲筋の筋機能力を利用して不正咬合を改善する治療法です。
子供のガミースマイルの関係性が高い筋肉としては、口輪筋の異常が挙げられます。
口輪筋の筋力が弱い場合、前歯の前突や開咬などを引き起こします。口輪筋の訓練方法としては、口唇で糸をかけたボタンを引っ張る訓練や太い紐を口唇で手繰り寄せる訓練、口唇で物を挟み一定時間保持させる訓練などがあります。上口唇に指でマッサージをするのも有効です。
機能的矯正装置
口腔周囲の軟組織の機能的な働きや張力を矯正力として利用する装置です。
代表的な機能的矯正装置にアクチバトールがあります。アクチバトールはF.K.Oともよばれる装置で、上下顎にわたって一塊になったレジン床と誘導線で構成されます。上顎前突や過蓋咬合などの改善に効果があり、ガミースマイルも改善できます。
そのほかの機能的矯正装置としては、リップバンパーがあります。リップバンパーは、前歯相当部にバンパーをつけた直径1.0㎜ほどの唇側線を第一大臼歯に装着したバンドの頬面管に前歯唇側面から2〜3㎜離れるように挿入します。口唇の緊張を緩和し、上顎前歯の舌側移動を促進することで、上顎前突を改善させます。
子供のガミースマイルの治療開始時期
子供のガミースマイルの治療開始時期は、矯正歯科治療の開始時期とも考えることができます。矯正歯科治療の開始時期としては、顎骨の成長発育が盛んな時期が推奨されています。また、歯の移動という視点でみれば、歯の交換期である7〜8歳から11〜12歳ごろにかけての乳歯と永久歯が混在している混合歯列期が適しています。
顎骨・顔面・歯列の成長期を積極的に利用することが望ましいため、できる限り若いうちから治療にかかる方が良いでしょう。なお、終了時期は、第二大臼歯の萌出が完了し、顎骨の成長発育が終了する時期が望ましいです。
子供のガミースマイルと保険診療
保険診療の適応を受けているのは、病気の治療に限られます。
子供のガミースマイルの治療は、審美的な問題に対する治療となりますので保険診療の適応を受けていません。治療費は治療法だけでなく、受診した歯科クリニックによっても違いがありますので、詳しい費用に関しては、主治医とよく相談しましょう。
【まとめ】子供のガミースマイルは自然に治るの?治療開始の適齢期についても解説
本記事では、子供のガミースマイルの原因や治療の適齢期について詳しく解説しました。
この記事を通じて、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
この記事のおさらい
- 子供のガミースマイルは、不正咬合などの歯列不正が大きく影響しており、自然に治ることは期待できない
- ガミースマイルの原因としては、上顎骨の垂直的な過成長や前歯の萌出異常、口輪筋などの口腔周囲筋の機能異常が挙げられる
- 子供のガミースマイル治療は、成人のような侵襲性の高い外科手術ではなく、成長発育を利用した「矯正歯科治療」「MFT(口腔筋機能療法)」「機能的矯正装置」が第一選択となる
- 治療開始の適齢期は顎骨の成長が盛んであり、乳歯と永久歯が混在する7~12歳頃の「混合歯列期」が推奨される
- 子供のガミースマイル治療は審美的な改善を目的とするため、原則として保険診療の適用外
子供のガミースマイルは見た目の問題だけでなく、時に不正咬合など、機能的な問題とも密接に関わっています。治療を開始する時期によって、将来的な笑顔の美しさと口腔機能に大きな違いが生じる可能性があります。そのため、子供のガミースマイル治療は、成長期の特性を積極的に利用することが成功の鍵となります。
お子様のガミースマイルが気になる場合は、適切な診断と、その子の成長に合わせた治療計画を立てるためにも、一度専門の歯科クリニックに相談してみましょう。早期に原因を精査し、適切な治療法を選ぶことが大切です。

