「ガミースマイル」と聞いて、ピンとくる人も最近では多いのではないでしょうか。
笑うと、上の歯茎が強調されるガミースマイルの方は芸能人にも多く、職業柄、個性の一つとしても認められています。
でも、一般の方では「ガミースマイルがコンプレックスで人前で笑えない」という方の方が多いのです。
この記事では、芸能人におけるガミースマイルがもたらす印象と、ガミースマイルのデメリット。そして、ガミースマイルの治療法について解説します。
この記事を読むことで、ガミースマイルの症状や原因、治療法を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
- ガミースマイルって、他人から見るとどうみられているの?
- ガミースマイルの原因ってなに?
- ガミースマイルは治療しなければいけない?
- ガミースマイルの治療方法とは?
- 逆ガミーってどんな病気?
目次
芸能人のガミースマイルとは
ガミースマイルとは、笑った時に上唇が大きく上がり、前歯だけでなく歯肉(歯ぐき)までも見えてしまう状態のことをいいます。
一般的には、前歯の上の歯肉が3㎜以上見えることをガミースマイルと表現します。
このガミースマイルの方は、芸能人にも多く存在し、そのことを揶揄(やゆ)される記事を書かれることも、職業柄ないとはいえないでしょう。
しかし、好意的な見方として、「幼く見えてかわいい」「愛嬌のある笑顔」「口を閉じている時と、大きく笑った時のギャップが素敵」「インパクトのある顔立ち」などと評されることも多いのです。
職業によっては、ガミースマイルであっても、それを個性として生かしていくことも出来る場合があるのです。
ガミースマイルのデメリット
先述の通り、ガミースマイルは個性のうちの1つであり、歯肉が目立つからといって、治療が必要だというわけではありません。
ですが、どうしても気になってしまう方も多いでしょう。
一般的に正面から見た時の理想的な笑顔と言われている「スマイルライン」。
これは、笑った時に左右の口角が対称的に上がり、前歯の切縁(先端)を結んだラインが緩やかなカーブを描いている状態のことをいいます。そして、この時に上顎前歯部の7〜10割程度が見えていることも、理想的な笑顔の条件と言われているのです。
ガミースマイルは、理想的な笑顔以上に前歯が露出し、その上の歯肉まで見えてしまっている状態となります。
それに加えて、いわゆる「白色人種」であるコーカソイドの骨格では、ガミースマイルになりにくく、日本人を含む「黄色人種」であるモンゴロイドの骨格ではガミースマイルになりやすいということから、「黄色人種特有の恥ずかしい顔貌」と捉えてしまう方も多いようです。
どうしても、ガミースマイルの外見をコンプレックスに感じてしまうようなら、それはその人の中でのデメリットになってしまうかもしれません。
特に、笑った時の表情なので、笑顔を作れなくなることや常に口元を隠してしまう癖がついてしまうと、その方の行動や人間関係に影響が出てしまいかねません。
では、審美性以外のデメリットに関しては、どのようなことが考えられるのでしょうか。
ガミースマイルで感じやすいデメリットをまとめました。
口が閉じにくい
ガミースマイルの場合、笑った時に上唇が上後方に移動し、前歯及び前歯部歯肉が前方に出やすくなります。
そのため、前歯などが乾燥しやすく、その結果、口唇がひっかかって閉じにくさを感じる方が多いのです。
ドライマウス(口腔内乾燥症)になりやすい・口呼吸線が生じやすい
口が閉じにくいことなどによって、口腔内が乾燥しやすくなります。
口腔内の乾燥によって唾液が減少すると、唾液の自浄作用が低下し、齲蝕や歯周病に罹患しやすくなります。
そのメカニズムを前歯部に注目して紹介します。
前歯部の表面に付着したプラークに含まれる水分や唾液が蒸発することによって、プラークがより強く歯面に付着します。そして、その上にまたプラークが堆積しやすくなります。食後、洗いそびれた食器のような状態と例えられます。
また、唾液の蒸発によって、唾液内に含まれる抗菌作用が働かなくなり、歯面の脱灰(歯の表面が溶けること)が促進されます。この唾液内の抗菌作用の低下の影響は、歯肉・粘膜にも及びます。
歯肉・粘膜の表面を覆っているはずの唾液が減少することによって、炎症が生じやすくなり、歯周病の進行にも繋がっていきます。
それが顕著な場合、笑った時に見える部分(乾燥しやすい部分)と口唇で覆われている部分(乾燥しにくい部分)の境界に色調の差が生じることもあります。
乾燥しやすい部分は赤褐色に変化し、その境目のことを「口呼吸線」といいます。
咬み合わせ不良による歯への負担の増大、顎関節症の可能性の増大
下顎に対して上顎が大きいことに起因するガミースマイルの場合、過蓋咬合(上の歯が下の歯に過剰に覆いかぶさって、咬み合わせが深くなってしまうこと)によって、歯への負担が大きくなるリスクが生じます。
また、咬み合わせが深くなると、顎関節の動きが制限されてしまいやすいので、顎関節症を生じる可能性も高まります。
ガミースマイルの原因とその治療法
先述のように、ガミースマイルにはデメリットが存在します。
そして、そのデメリットはガミースマイルの原因に起因しているといえるでしょう。
そこで、ガミースマイルの原因とその治療法について紹介します。
ガミースマイルの原因は、大きく分けて
- 骨格・歯並びによるもの
- 口腔周囲筋によるもの
- 歯の形や大きさ・歯肉の形によるもの
の3つに分けられます。
骨格・歯並びによるもの
骨格によるものの場合、上顎が下顎に対して大きいとガミースマイルになりやすくなります。その際は、歯列矯正に加えて、上顎の骨を小さくする外科的矯正治療を行うことが有効です。
歯並びによるものの場合、前歯が前方に傾いている、前歯の位置が低いといった歯並びの場合にガミースマイルになりやい傾向にあります。その際は、歯列矯正によって治療を行うことができます。
本来、歯は前方及び下方(萌出方向)に動かすことが比較的容易なのに対し、後方及び上方(萌出と逆方向)へ移動させるのは困難でした。
最近では、歯科矯正用のアンカースクリューと呼ばれるネジ状のものを顎骨内に固定し、それを用いて歯を動かすという治療法が確立されてきました。ごく小さな装置なのですが、このアンカースクリューの利用によって、治療期間の短縮や今まで外科手術が必要であった症例も、歯列矯正のみで治療できるようになってきました。
歯を上へ持ち上げたり、後方へ下げたりすることの多いガミースマイルの際の矯正治療では、とても有効な手段となっています。
口腔周囲筋によるもの
左右の頬の真ん中辺りに上唇挙筋という表情筋があります。上唇挙筋は、上唇を上方向に持ち上げる働きをします。
この上唇挙筋の働きが強過ぎることにより、必要以上に上唇が引き上げられてしまい、その結果、上顎前歯部歯肉まで露出してしまうことがあります。この場合、筋肉へのボトックス注射による治療法と、外科的治療法の2つがあります。
ボトックス注射
ボツリヌス菌から作り出された筋弛緩作用のあるボツリヌストキシンを筋肉に注射することにより、その筋肉の働きを弱めるものです。
ボトックス注射の効果は4〜6か月ですので、繰り返しボトックス注射を行う必要があります。
ボトックスでガミースマイルへの効果はどの程度?失敗して不自然にならないポイント
上唇粘膜切除術
上唇の裏側と歯肉の粘膜を一部切除し、縫い縮めることによって見える歯肉の量を調節する外科手術です。外科手術といっても、口腔内の見えない部分(上唇の裏側)の処置になるので、表からは見えず、傷跡も見えません。
上唇挙筋の働きが強いままでは後戻りしやすいため、筋肉の使い方を練習する必要があります。
ガミースマイルを改善する上唇粘膜切除術のメリットとデメリット
歯の形や大きさ、歯肉の形によるもの
前歯の形によっても、ガミースマイルは生じやすくなります。
歯全体が小さい矮小歯や歯冠の長径が短い場合は、歯肉までの距離が短いために上唇が少し上に上がっただけで歯肉まで露出しやすくなります。
また、歯の形は正常であっても、歯頚部(歯と歯肉との境い目)の歯肉が歯冠部方向に過剰に発達して、歯頚部寄りの歯冠の一部を覆い隠すように歯肉が被っている場合は、歯冠の長径が短く見え、その分歯肉が露出しやすくなります。
治療法としては、補綴処置、歯肉整形術、歯冠長延長術があります。
補綴処置
矮小歯(歯の大きさが通常の歯と比較して生まれつき小さい歯)や、歯冠長が極端に短い場合に適応されます。出来るだけ歯を削らないラミネートベニアなどがおすすめです。
ただ単に歯を大きくするのではなく、下の前歯との咬み合わせなどに注意する必要があります。
歯肉整形術
歯冠部を歯肉が覆ってしまっている際に適応されます。
レーザーや電気メスなどを用いて、歯冠部に覆いかぶさっている歯肉を除去し、歯肉縁を歯頚部(歯冠と歯根の境目)に合わせる治療法です。
簡単な外科処置の部類に入りますが、後戻りしやすいという欠点もあります。
歯冠長延長術
歯冠部を歯肉が覆っているのではなく、歯が歯槽骨の中に埋まってしまっているために、歯の長さが短くなってしまっている状態の際に適応されます。
本来、この術式は歯肉の下まで虫歯が及んでしまった場合などに、健常な歯面を歯肉より上に出して、補綴していくために用いられる処置となります。
ガミースマイルの場合は、歯肉の中に埋まっている歯冠部を表に出すために歯槽骨を削り、歯肉縁を下げていく処置となります。
ここで注意が必要なのが、歯の位置が正しいのか、歯槽骨のラインが正しいのか、ということです。歯の位置が正常なのに対して、歯槽骨頂のラインが歯冠側に寄り過ぎているのであれば、処置の対象となります。しかし、歯槽骨頂のラインが正しく、歯が萌出しきれていないのであれば、骨を削るよりも矯正治療の適応となります。
矯正治療よりも、歯冠長延長術のほうが短期間で行うことが出来ますが、削った歯槽骨は二度と戻りません。知覚過敏や虫歯、歯周病のリスク増大にもつながりかねません。しっかりとした診断が必要となります。
逆ガミースマイルとは?
逆ガミーという言葉は、歯科用語ではありません。
笑った際に上唇が大きく上がり、上顎前歯の歯肉まで見えてしまうことをガミースマイルというのに対し、逆ガミーは「笑った時に下の前歯のみが見える」という意味で作られた造語のようなものです。
スマイルラインの上下が逆転してしまったイメージです。
一般的に、笑った時に下の歯しか見えないと年齢よりも老けて見えやすく、せっかくの笑顔が明るく見えない・・・という印象を与えやすくなります。
原因としては、上顎に対し下顎が大きい、反対咬合、口腔周囲筋の衰えによって口角が上に上がらないなどが考えられます。
気になる場合は、原因を突き止めて、必要があれば治療をすることをおすすめします。
【まとめ】芸能人のガミースマイル事情は?デメリットと治療法を解説
ガミースマイルがもたらす印象とそのデメリット、原因と治療法について解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
- ガミースマイルとは、笑った際に上唇が大きく上がり、上顎前歯部歯肉まで見えてしまう状態のこと
- ガミースマイルは年齢よりも幼く見える、愛嬌のある笑顔、普段と笑った時のギャップが素敵と評されることもあるが、一般的には黄色人種特有の顔貌として敬遠されることが多い
- ガミースマイルのデメリットは、口が閉じにくい、口腔内乾燥症になりやすい、虫歯や歯周病のリスクが上がる、歯や顎関節への負担増大の可能性がある
- ガミースマイルの原因とその治療法
骨格・歯並びが原因の場合:歯列矯正、外科的矯正
口腔周囲筋による場合:ボトックス注射、上唇粘膜切除術
歯や歯肉の大きさ、形による場合:補綴処置、歯肉整形術、歯冠長延長術 - 逆ガミーとは、笑った時に下の前歯のみが見えることを表す造語のようなもので、歯科用語ではない
- ガミースマイルは個性のひとつとしての捉え方も出来る
- ガミースマイルは原因や程度にもよるが、機能的に問題を生じていないのであれば、治療しなければいけないものではない
ガミースマイルの程度やその原因は人それぞれです。
ガミースマイルだからといって、必ずしも治療しなければいけないというものではありません。ただし、ガミースマイルの原因の中には、将来的な健康被害が潜んでいることも考えられます。
それぞれの原因に合った治療法を選択しないと、後戻りやかえって審美性を損ねることにもなりかねません。
まずは、ガミースマイル治療を行なっている歯科医師に相談して、現在の状態およびその原因やリスクをしっかりと突き止めた上で、治療に進むかどうかを決めるようにしましょう。
「理想的な笑顔」も、人それぞれです。
まずは鏡に向かって、自分自身を最も輝かせる笑顔を練習するのも良いのではないでしょうか。