「矯正を考えているけれども、どこに行ったら良いのかわからない」といった話をよく見聞きします。
矯正歯科の選び方は、一般歯科よりも難しいということが言えるかもしれません。なぜなら、治療が長期にわたる、一度始めたら原則として転院できないといった要因があるためです。そして、大人になってからの矯正歯科選びは、この情報過多の時代、何を取捨選択すべきか難しいところです。
この記事では、歯列矯正で失敗しないために、いい矯正歯科の選び方を紹介していきます。
この記事を読むことで、いい矯正歯科の選び方や見つける方法を知ることができ、下記のような疑問や悩みを解決します。
- 矯正歯科の選び方のポイント
- 矯正相談に行くときの心構え
目次
矯正歯科を選ぶポイント
まず、矯正治療の進め方についてみていきましょう。
ほとんどの矯正歯科では、初回に矯正の診察・相談を受け、医院での矯正治療について説明を受けます。この時点では、まだ治療は始まっていません。
その後、精密検査(多くの歯科医院が有料)を行い、治療方針の最終決定および、治療の契約を交わして矯正治療がスタートします。
ここでは、精密検査に入る前の矯正相談の段階で、自分にとってのいい矯正歯科を選ぶことができるよう、押さえておくべきポイントについてお話していきます。
矯正歯科の認定医(認定歯科矯正医)を取得している
矯正治療は、歯科における一般治療とは大きく違います。そのため、矯正歯科としての高い水準を持った矯正医を選ぶ必要があります。
それには、矯正の認定医制度を基準とすることをおすすめします。
現在、矯正の認定医制度は転換期を迎えています。
今までは、主に3つの団体が独自の診査基準で認定を行ってきました。それを、統一した専門医制度にしようと「日本矯正歯科専門医機関」が2019年に発足しました。その後「一般社団法人日本歯科専門医機構」が2020年に発足し、現在、専門医制度の整備が行われているような状態です。今後は「日本矯正歯科専門医機関専門医」と統一されていくことが予測されます。
現時点では、下記の認定医の資格を持っているかを参考基準としていくと良いでしょう。
- 日本矯正歯科学会 認定医
- 日本成人矯正歯科学会 認定医
- 日本歯科矯正専門医認定機構(JBO) 認定歯科矯正医
各学会HPにて、認定医の検索が可能です。
初回の矯正相談で、誠意をもって対応してくれる
基本的に矯正治療は検査をしてみなければ、現在の口腔内及び顎骨の状態の診断も、治療方針の予測を立てるのも難しいものです。
しかし、相談に来た方にとっては、ここで矯正治療を本当に行っていくのかどうか決断する重要な機会でもあります。
「レントゲンの検査をしないとなんともいえない」
「まずは検査をしてみてからお話しましょう」
そのような言葉で先を急ぐのではなく、こちらからの話をしっかりと聞いて、ここの矯正歯科医院ではどんな治療法が可能なのか、どのような治療の選択肢があるのかなどを、しっかりと説明してくれるところを選びましょう。
ここで重要なのは、受診する側としても「ただなんとなく」行くのではなく、自分は何が一番気になっているのか、現時点での希望はあるのか(歯を出来るだけ抜きたくない、見えない矯正が良いなど)などを整理してから来院する必要がある、ということです。
治療方法に複数の選択肢がある
近年では「マウスピース矯正専門医です」などといった、1つの矯正装置しか用いないことを特色として掲げている矯正歯科医院もでてきました。
しかし、お口の中の状態はそれほど単純ではありません。口腔内の状態だけでなく、顎骨との関係や咬み合わせによって、最も適した治療方法を選ぶことが大切です。
そのためにも、最初から1つの治療法しか取り扱っていないところよりも、複数の治療の選択肢がある矯正歯科を選びましょう。
また、例えば最初からマウスピース矯正を希望している場合であっても、比較として他の治療法も説明してくれる医院をおすすめします。
それぞれの治療法の欠点をしっかりと説明してくれる
治療法が複数あれば、それぞれの利点・欠点は必ずあります。矯正医にとって利点は説明しやすいですが、欠点は言いにくいものです。しかし、欠点もしっかり説明できる矯正歯科こそ、治療に自信があるということができます。
さきほどの例のように、最初からマウスピース矯正を希望している場合であれば、マウスピース矯正の利点・欠点をしっかり説明し、他の治療法に対してもマウスピース矯正と比較した際の利点、そして、その治療法の欠点までもしっかり説明してくれる医院を選ぶのが良いでしょう。
金額や期間について具体的に説明してくれ、考える時間を取ってくれる
「早く治療を始めないと、大変なことになりますよ」などと、脅して治療を急かしてくるところはもってのほかですが・・・
「せっかく来たので、このまま検査までやってしまいましょう」
「とりあえず契約だけ先に済ませておきましょう」
などと勧める歯科医院は要注意です。
矯正治療は年単位で期間がかかる治療です。そして、治療費も保険適用されず、高額になります。
複数の歯科医院で説明を聞いて比較検討し、しっかり納得してから治療に進むべきです。また、具体的な金額および、治療期間を説明してくれるかどうかも重要です。
「全体で大体いくら位」
といった、大まかなものではなく、費用の具体的な内訳を説明し、書面で渡してもらうのが理想的です。
最近では、複数の治療計画ごとの簡単な説明と見積書を渡してくれる医院も少なくありません。自宅に帰って、じっくり熟考出来る環境を作ってくれるというのも、医院の評価点ではないでしょうか。
通院しやすい
「月に1回の通院だから遠くても大丈夫」
そう考えている方も多いかと思います。
しかし、実際は矯正装置の不具合やワイヤーが一部外れてしまったなど、急患来院する機会も考えていかなくてはいけません。無理なく通院できる圏内に医院があることは、とても重要です。
また、診療時間や休診日も確認しておく必要があります。夜は何時まで診療を行っているのか。土日祝日は休診か否かなどです。
これらが、ご自身のライフスタイルに合致するのかを確認しておきましょう。
予約のとりやすさも大切です。
「人気がありすぎて、2か月に1度しか予約が取れない」
これでは、どんなに技術が素晴らしくても治療期間が延びるばかりです。1か月に1度の診療が可能な状態にすることも、医院の手腕のひとつです。
担当医制である
矯正治療においては、口腔内の経時的変化を追っていくことが大切です。
毎回ドクターが変わるところは避けましょう。
「矯正医は院長先生一人だけだから大丈夫」と思っていても、実際の処置は一般治療の先生が流れ作業的に行い、最後に院長先生がチェックするだけというところも実はあるのです。
一般歯科医院で、月1日だけ矯正の先生が来て診察を行っているところも要注意です。
矯正診療日は良いのですが、万が一に矯正診療日以外に装置の不具合が生じた場合、矯正医が不在のために処置が出来ない可能性があります。そのような場合の対処法については、事前に確認しておく必要があります。
また、大学などから派遣されている矯正医の場合、1~2年で別のドクターに交代することが多いのです。常勤は良くて、非常勤の矯正医が全て悪いというわけではありません。しかし、矯正医が不在の時はどう対処するのか、矯正医が今後交代する可能性はあるのか、その場合は引継ぎ方法が確立されているのかなどは、しっかりとした見極めが大切です。
一般歯科・口腔外科との連携がとれている
矯正治療中にう蝕が出来てしまった場合や抜歯が必要になった場合、連携の取れている歯科医院があるととてもスムーズです。
「どこでも良いから、治療(抜歯)してきてください」ですと、一般歯科の方から「矯正装置を外さないと処置できません」と断られてしまうこともあります。
提携先がなくても、しっかりと連携を取ってくれる矯正歯科であれば、安心ですね。
矯正医との相性
最後にこれが一番大切かもしれません。
「今までの条件全て満たしているけれども、何となくこの先生と合わない」といったこともあります。
そんな時は、自分のその気持ちを優先させましょう。
感情論でも良いのです。
「丁寧に説明してくれているのだけれども、意味がわからない」
このような場合も、相性が良くないのかもしれません。
矯正医とは、長い付き合いになります。
途中で嫌になって、治療が中断することがないよう、出来るだけ気持ちよく通院できるところを選びましょう。
【まとめ】いい矯正歯科の選び方と信頼できる歯科医師に出会う方法
ここでは、いい矯正歯科の選び方と、信頼できる歯科医師に出会うポイントについて紹介してきました。
この記事では、矯正歯科や矯正医の選び方として、以下のポイントをご紹介いたしました。
- 矯正歯科の認定医を取得している
- 初回の矯正相談で誠意を持った対応をしてくれる
- 患者側に治療方法の選択肢を複数提示してくれる
- 治療法の欠点をしっかりと説明してくれる
- 検討する時間をもらえる
- 金額や期間について具体的に説明してくれる
- 通院しやすい
- 担当医制
- 一般歯科等と連携がとれている
- 担当医や歯科医院との相性が良い
信頼できる歯科医師に出会うことは、とても重要です。
矯正治療を始めようと思ったら、少なくとも2院以上の矯正歯科で矯正相談を受けることをおすすめします。その際には、自分の現時点での考えを伝えられるようにして臨みましょう。
矯正治療には様々な方法があり、その全てに利点・欠点があります。どれが正解、どれが間違っているというものではないのです。だからこそ、ご自身の希望やライフスタイルに合った治療法を選んでいくことが大切です。
また、治療を開始する前に、担当医との相性やスタッフを含めた医院全体の印象を肌で感じる機会として、矯正相談はとても重要です。その矯正相談を通じて、信頼できる歯科医師に出会えることを願っております。