「無意識のうちに口がぽかんと開いている」「朝起きると喉がヒリヒリ痛む」といった経験はありませんか?
呼吸とは酸素を取り込んで二酸化炭素を排出することで、細胞内でATP(アデノシン三リン酸)という生命活動に欠かせないエネルギーを生産する大切な生理代謝です。本来、人間は鼻で呼吸をするのが自然な状態ですが、現代では知らず知らずのうちに「口呼吸」が習慣化してしまっている方が少なくありません。
口呼吸は単なる癖のように思われがちですが、実は放置すると虫歯や歯周病のリスクを高めるだけでなく、歯並びの悪化や全身の免疫力低下など、健康に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。健康を維持するためには、口呼吸のメカニズムを正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。
この記事では、口呼吸が起こるメカニズムや主な原因、放置することで生じるリスク、そして歯科や自宅で取り組める改善方法までを詳しく解説します。
この記事を読むことで、自分や家族がなぜ口呼吸になってしまうのかという背景を理解でき、健康を守るための具体的な治し方を知ることで、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問が解決
- なぜ鼻ではなく口で呼吸してしまうのか、その根本的な原因を知りたい
- 口呼吸が原因で虫歯や歯周病になりやすくなるって本当?
- 子どもの口呼吸や歯並びへの影響について
- 自宅で簡単にできる口呼吸のトレーニング方法
- 歯科医院や耳鼻科ではどのような治療が行われるのか把握したい
目次
口呼吸のメカニズムと原因
鼻呼吸の場合、鼻腔を通過する際に鼻の絨毛や粘液で外から入ってきた異物が除去されます。また、鼻腔によって空気が温められるため、肺には温かく、湿った空気が送られます。これによって気管や肺が保護されます。
対して口呼吸の場合は異物が除去されていないのに加え、乾燥した適温に温められていない空気が肺に送られます。さらに口呼吸を続けると必要以上に二酸化炭素を排出してしまい、血中の二酸化酸素濃度が低下します。二酸化炭素濃度が低下すると、末梢の血流が悪くなります。それによって各臓器に十分な酸素を運べなくなり、結果として代謝が悪くなります。
口呼吸の自覚症状としては口が乾きやすい、気がつくといつも口を開けてしまっている、風邪をひきやすい、鼻が詰まりやすい、いびきをする、朝起きた時喉が痛いといったものがあります。
ちなみに、どういったことが原因で口呼吸になるのでしょうか。口呼吸の原因には以下のことが考えられます。
- 開咬などの歯列不正や上顎骨の劣成長によるもの
- 口腔周囲筋の筋力低下
- 姿勢の悪さ
- 花粉症、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎といった耳鼻科疾患
- 過度な飲酒による鼻粘膜の拡張による鼻づまり
- 肥満による気道の狭窄
口呼吸の問題点
口呼吸ををすると、なぜ問題があるのかを説明いたします。
感染症に罹患しやすくなる
鼻腔を通らない乾燥した空気が体内に侵入するため、抗原が体内に入りやすくなり、アレルギー疾患や膠原病、気管支喘息に罹患しやすくなります。また、上咽頭の免疫が賦活されないため、慢性扁桃炎、誤嚥性肺炎といった細菌やウイルスが原因となる感染症にも罹患しやすくなってしまいます。
虫歯や歯周病の原因となる
口腔内には唾液が存在します。唾液の中にはリゾチーム、ペルオキシターゼなどの抗菌物質が含まれ、口腔内の細菌感染を防いでいます。また潤滑作用やムチンによる粘膜保護作用によって、歯牙、歯肉、頬粘膜が守られています。
口呼吸を行うと口腔内が乾燥して唾液が乾燥してしまい上記の作用が弱まってしまうので、虫歯や歯周病にかかりやすくなってしまうのです。
歯列不正の原因になる
歯が並ぶ位置は、口腔周囲筋による外からの力と舌圧による内からの力のバランスが取れたところに並びます。口呼吸になると口腔周囲筋が弛緩するため、力のバランスが崩れ、歯列不正が起こってします。
睡眠の質が下がる
口呼吸のまま睡眠をすると舌根が沈下しやすくなり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。その結果、睡眠中の血中の酸素が低下し、狭心症や心筋梗塞、脳卒中といった循環器疾患に罹患しやすくなります。
口呼吸の治療
口呼吸の治し方(治療法)をご紹介いたします。
鼻炎が原因になっている場合は耳鼻科へ
口呼吸の原因が副鼻腔炎や慢性鼻炎、アレルギー性鼻炎が原因になっている場合があります。この場合はそもそも鼻の空気の通りが悪いので、物理的に口呼吸になってしまいます。一度耳鼻咽喉科へ受診し、治療を受けましょう。
歯科矯正治療
子供で上顎骨の劣成長の場合、鼻周辺の骨へ影響して鼻呼吸がしづらい場合があります。まだ成長のピークが来ていなければ、歯科矯正治療で鼻呼吸へと改善する場合があります。
口腔機能訓練(あいうべ体操)
あいうべ体操とは、自分で口を動かして鼻呼吸から口呼吸へ導く体操です。毎食後に10回前後行い、1日30回以上が目標です。口腔周囲筋や舌筋が鍛えられることによって改善されます。
やり方としては、
- 「あー」と口を大きく開く
- 「いー」と口を大きく横に広げる
- 「うー」と口を強く前へ突き出す
- 「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす
といったものです。
この❶から❹が1クールです。
口腔機能訓練(とじろーくん)
株式会社日本歯科商社から「とじろーくん」という、口腔周囲筋を鍛えるトレーニング器具が販売されています。6歳未満のお子様から高齢者や要介護者まで使用でき、唾液分泌も促します。
正しい足育
足指がしっかり使えていないと、姿勢が悪くなり猫背になります。猫背になると開口筋が優位に働いてしまうため、口呼吸になってしまいます。また、サイズの合っていない靴を履いている、食事の際にしっかりと足が接地していないと姿勢が悪くなります。
このような私生活における指導も、非常に大事になってきます。
口にテープをする
ドラックストアや日用品店では、口にテープを貼ることで鼻呼吸を促すテープが売られています。これを利用することも有効です。安価で仕入れることができますが、デメリットとしては顔の皮膚がかぶれる可能性があります。
過度な飲酒や肥満に対する生活指導
口呼吸に限ったことではありませんが、過度の飲酒や肥満は様々な疾患を引き起こします。
【まとめ】口呼吸の原因と治し方
口呼吸が身体に及ぼすリスクとそのメカニズム、そして具体的な治し方について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
この記事のおさらい
- 口呼吸では鼻のフィルターを通さない乾燥した空気を吸い込むため、感染症やアレルギーのリスクを高める
- 口呼吸によって唾液の自浄作用が失われることで、虫歯・歯周病の悪化や口臭の原因になる
- 口呼吸は歯列不正(悪い歯並び)や睡眠時無呼吸症候群など、多岐にわたるトラブルを引き起こす
- 口呼吸の改善には、歯科での矯正治療や耳鼻科での鼻炎治療、さらには「あいうべ体操」などの口腔機能訓練が有効
- 正しい姿勢や足育、生活習慣の見直しも口呼吸防止には欠かせない
口呼吸は、口腔内を乾燥させて細菌を繁殖させるだけでなく、全身の代謝や免疫バランス、さらには顔の骨格形成にまで影響を与える大きな問題です。しかし、原因に合わせた適切なアプローチを行うことで、鼻呼吸へと改善していくことは十分に可能です。
「ただの癖だから」と見過ごさず、早い段階で対策を始めることが将来の健康を守ることにつながります。もし自分や子どもが口呼吸になっていると感じたら、まずは今回ご紹介したトレーニングを試したり、歯科医院へ相談したりすることから始めてみてください。鼻呼吸を習慣化して、健やかな毎日を取り戻しましょう。

