齲蝕や歯周病は予防できる疾患という認識が浸透し、多くの方が定期的に歯科医院を受診するようになりました。
その反面、虫歯や歯周病で痛みや腫れが出てから初めて歯科医院を受診するという方も、依然としています。
定期的なメインテナンスを受けるか、トラブルがあったときだけ受診するのか、この違いは一体何なのでしょうか。
それは、歯科疾患に対する意識や関心度の高低によるものです。その歯科領域の健康に関する意識の評価法のひとつにデンタルIQがあります。
このコラムでは、そのデンタルIQについてお話しします。
目次
デンタルIQとは
一般的にIQは、知能検査として知られています。
デンタルIQも“IQ”とありますから、歯科や顎顔面系の疾患などに対する専門的な知識レベルの高さを問うものと思われがちですが、実はそうではありません。
デンタルIQは、歯や口腔の健康状態についての関心度合いの高さを示す言葉です。したがって、専門知識の有無はデンタルIQに関係ありません。
デンタルIQに関する意識調査の結果
令和03年11月8日、公益社団法人日本歯科医師会が全国の20代〜60代の男女1万人を対象に「デンタルIQに関する意識と実態調査」を行いました。
参照元:デンタルIQは“歯とお口の健康への関心・意識の度合い”. 公益社団法人日本歯科医師会
デンタルIQの認知度
これによりますと、デンタルIQという言葉の認知度は2割にとどまりましたが、言葉の意味を説明すると9割が重要であると判断しました。
なお、デンタルIQという言葉を知っていると答えた2割の方々でも、その意味については3割ほどの方しか正しく理解できていませんでした。
デンタルIQのレベル
デンタルIQが実際どれくらいかもチェックされました。
質問数は15問で、正解数の平均は10.2問でした。
正解数が12以上をデンタルIQ高め、9以下をデンタルIQ低めとすると、男性30代が最も低く、次いで男性20代でした。
反対にデンタルIQが高かったのは女性60代が最も高く、女性50代が続きました。
デンタルIQと歯科健診の関係性
デンタルIQが高い人の4割は、少なくとも1年に1度は歯科で定期健診を受けています。一方、デンタルIQが低い人では1年に1回以上定期健診を受けている人は2割強ほどでしかありませんでした。
また、デンタルIQの高い人は、歯間ブラシやデンタルフロスを日常的に使って、プラークコントロールに努めているようです。
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デンタルIQと歯科疾患の関係性
デンタルIQと歯科疾患には何らかの関係性があるのでしょうか。
セルフケアの実践状況
2大歯科疾患とも言える齲蝕症や歯周病の発症には、日常のセルフケアが大いに関係しています。
具体的には「歯間部や歯肉溝のブラッシング」「しっかりと咀嚼する」「フッ化物配合歯磨剤を使う」「鼻呼吸」などです。
こうしたセルフケアが正しく実践できている人は、齲蝕症や歯周病の発症リスクが低く抑えられることが明らかになっています。
デンタルIQとの関係性で見ると、デンタルIQが高い人ほどセルフケアができています。デンタルIQの低い人は、総じてセルフケアができておらず、たとえば「歯間部や歯肉溝のブラッシング」や「鼻呼吸」で比べてみるとおよそ2割ほども低くなっています。
歯科領域の健康知識の認知度
「噛むことと認知症の関係性」「噛むことと消化機能の関係性」「歯列不正と歯科疾患の関係性」「8020と健康寿命との関係性」など、歯科領域の健康知識に関する認知度も調査されています。
これによりますと、歯科領域の健康知識の有無も、デンタルIQの高い人と低い人の間に相関関係が示されています。
歯科医院の受診のタイミング
定期健診ではなく、歯科領域でのトラブルを感じたときの歯科受診のタイミングについても調査されました。
デンタルIQが高い人は「すぐ歯科医院に行く」という答えが最も高く、半数以上でした。
反対にデンタルIQが低い人では、「放っておく」「しばらく様子を見る」などが高くなっています。
デンタルIQの低い人ほど、我慢できなくなるまで放置する傾向があるようです。
デンタルIQのセルフチェック
デンタルIQのセルフチェック法は、“いい歯は毎日を元気にプロジェクト”で、デンタルIQチェッカーとして公開されています。
デンタルIQチェッカーは、○✕タイプのクイズ方式なので簡単にセルフチェックできます。
【まとめ】デンタルIQって何?日本人の口に関する知識や関心はどの程度?
今回は、デンタルIQについてお話ししました。
デンタルIQは、歯科領域の健康に対する関心度合いを指す言葉です。
日本歯科医師会による大規模調査の結果、デンタルIQが高い人と低い人では、歯科疾患に対する考え方や意識に違いがあることが明らかになりました。
デンタルIQにご興味をお持ちになった方は、ぜひセルフチェックしてみてください。