子供の歯並びを改善するマウスピース矯正の種類・適応範囲・費用

子供の歯並びを改善するマウスピース矯正の種類・適応範囲・費用

成人の矯正治療では、従来からのマルチブラケット法に加え、マウスピースを利用したアライナー法が急速に普及してきています。

さらに今では、成人だけでなく小児向けプランを提供している、マウスピース矯正メーカーも出てきています。

このコラムでは、子供のマウスピース矯正について、種類や適応症、治療費などについてご紹介します。

目次

マウスピース矯正とは

マウスピース矯正は、マウスピース型の矯正装置を使った歯列矯正です。

歯に直接接着する固定式で行われる従来型の矯正装置と違い、取り外しが可能なのが特徴です。食事や歯磨きのときに外すことができるため、日常生活への影響を最小限にとどめられるだけでなく、齲蝕のリスクを抑えられます。

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子供のマウスピース矯正の分類

子供のマウスピース矯正は、作用の仕方から2種類に分類されます。

筋機能矯正装置

筋機能矯正装置は、口腔周囲筋の働きを利用した矯正装置です。

ムーシールド®︎、プレオルソ®︎、トレーナーシステム®︎、パナシールド®︎、EF line®︎などさまざまなタイプが開発されています。舌癖や開口などの不良習癖の改善や、下顎骨の成長発育の促進などを通して、歯列不正を改善します。

現在、市販されている筋機能矯正装置のほとんどは既製品です。アライナー型矯正装置と違い、睡眠時間を利用して作用させますので、日中はほとんど使用しません。

アライナー型矯正装置

アライナー型矯正装置は、オーダーメイドのマウスピースを使った矯正装置です。透明で目立たないマウスピースを定期的に交換することで、歯列不正を改善させます。

本来、アライナー型矯正装置は、成人を対象とした矯正装置でしたが、小児矯正にも使えるタイプが開発されています。アライナー型矯正装置としては、現在、インビザラインファースト®︎が代表的です。

子供のマウスピース矯正の種類

代表的な子供のマウスピース矯正についてご紹介します。

ムーシールド

ムーシールドは、ムーカンパニーが製造する日本製の筋機能矯正装置です。適応症は、反対咬合です。上口唇の圧力の排除と舌位の改善により、歯列不正を解消します。

ムーシールドには、ムーシールドのほか、ムーシールド・ムータンというタイプもあります。サイズのラインナップは、ムーシールドがSサイズとMサイズ、ムーシールド・ムータンがExtra SmallサイズとLargeサイズになります。

素材は、ムーシールドがポリメタクリル酸メチル、ムーシールド・ムータンが熱可塑性ポリウレタンです。ムーシールド・ムータンの方が柔軟性が高く作られています。

プレオルソ

プレオルソは、日本のフォレスト・ワン社が開発した筋機能矯正装置で、3タイプあります。

適応症は、上顎前突症、下顎前突症、叢生、過蓋咬合、開咬症など幅広いです。口唇圧や頬圧の排除や、舌の挙上作用により、口呼吸の解消や異常嚥下の改善に加え、歯列不正にも効果があります。

プレオルソは、歯列不正の症状に応じてTypeⅠからTypeⅢまで3タイプがラインナップされています。TypeⅡはノーマルサイズのハードタイプしかありませんが、そのほかのタイプはサイズや素材を選ぶことができます。TypeⅠは上顎前突症・叢生・過蓋咬合、TypeⅡは開咬症、TypeⅢは反対咬合の治療に用いられます。

いずれも既製品ですが、加温することである程度の形態修正ができますので、各自に適した形態になるよう調整できます。

トレーナーシステム

トレーナーシステムは、オーストラリアで開発された筋機能矯正装置です。適応症は、過蓋咬合や交叉咬合、叢生、開咬症などの歯列不正や口呼吸や舌癖などの不良習癖です。

トレーナーシステムは、歯列不正が発生する前に、口腔機能を改善し歯列不正を予防するという従来からの方法と異なるアプローチが特徴です。このため、対象年齢が2歳から13歳以上までと非常に幅広く、対応するマウスピースのラインナップも豊富です。年齢や症状の変化に応じて、マウスピースを交換し、歯列不正の発生を予防します。

パナシールド・プラス

パナシールド・プラスは、舌を挙上することで下顎骨を後方に誘導する筋機能矯正装置です。適応症は、反対咬合です。

パナシールド・プラスは、SサイズとLサイズの2種類あります。いずれもエラストマーという材料で作られており、口腔内でのサイズ調整が可能です。

EF line(EFライン)

EF lineは、フランスのダニエル・ローレットにより開発された筋機能矯正装置で、12タイプあります。

適応症は、叢生、過蓋咬合、交叉咬合、正中不一致、上顎前突症、下顎前突症などです。矯正治療の後の保定装置として使えるタイプもあります。

いずれのEF lineも柔軟性の高いポリ塩化ビニルで作られており、装着時の違和感を軽減しています。

インビザライン・ファースト

インビザライン・ファーストは、アメリカのアライン社が開発した未成年用のマウスピース矯正です。適応症は、上顎前突症や下顎前突症、開咬症、過蓋咬合、交叉咬合など、ほぼ全ての歯列不正です。

インビザライン・ファーストは、成人向けのインビザラインと異なり、歯列弓の拡大と、歯の動的矯正が同時にできることが特徴です。コンピューターを使って歯の将来位置だけでなく、歯列弓の拡大シミュレーションも可能です。萌出途上の低い歯冠にも作用できますし、永久歯を理想的な位置に萌出できるよう誘導できます。

子供のマウスピース矯正の対象年齢

マウスピース矯正の対象年齢は、矯正装置によって違いがあります。

ムーシールド

ムーシールドも、ムーシールド・ムータンも、サイズによって対象年齢を区分しています。

ムーシールドは、Sサイズが乳歯列期(3〜5歳ごろ)、Mサイズが混合歯列期(6〜11歳ごろ)です。

ムーシールド・ムータンは、Extra Smallサイズが乳歯列期(3〜4歳ごろ)、Largeサイズが混合歯列期(7〜11歳ごろ)を対象としています。

プレオルソ

プレオルソは、4〜10歳ごろを対象とした筋機能矯正装置です。顎骨の成長に応じて、適切なサイズを選んで使用します。

トレーナーシステム

トレーナーシステムは、対象年齢を乳歯列期(2〜5歳)、混合歯列期(6〜12歳)、永久歯列期(13歳以上)に分類しています。

乳歯列期は、インファントトレーナーを利用します。インファントトレーナーは、鼻呼吸や正常な嚥下、舌癖予防を目的としています。

混合歯列期は、T4Kトレーナー(ソフト・ハード)を利用します。T4Kトレーナーは、柔軟性の高いソフトタイプを6〜8か月使用したのち、ハードタイプに切り替えます。

永久歯列期は、T4AフェーズⅠやT4AフェーズⅡを利用します。フェーズⅠはソフトタイプ、フェーズⅡはハードタイプです。どちらも、第二大臼歯まで覆えるサイズになっていますし、萌出してくる犬歯位置を調節するために犬歯部が高めになっているのが特徴です。

このほか、マルチブラケット法での矯正治療時において同時に筋機能矯正ができるT4Bトレーナー、口呼吸防止用のTMJ-MBV、歯軋り防止用のブラキシガードなどがあります。

パナシールド・プラス

パナシールド・プラスは乳歯列期から永久歯列期まで幅広い年齢を対象とし、サイズで分類しています。

Sサイズは乳歯列期から混合歯列前期(3〜9歳ごろ)、Lサイズは混合歯列後期から永久歯列期(9歳以上)を対象年齢にしています。なお、3歳未満は使用できません。

EF line

EF lineは、対象年齢について、歯列の発達状態から3段階に分類しています。

  1. 乳歯列期・混合歯列期前期(4〜8歳)
  2. 混合歯列期中期・混合歯列期後期(8〜11歳)
  3. 混合歯列期後期・永久歯列期(11〜15歳)

EF lineの矯正装置は、それぞれの年齢と症状に応じて作られており、適したタイプを選択して使用します。

インビザライン・ファースト

インビザライン・ファーストは、年齢ではなく歯の萌出状況によって適否を判断しています。

  1. 第一大臼歯が萌出
  2. 切歯のうち2本が2/3以上萌出
  3. 少なくとも、3/4顎に乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯、または未萌出の犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯が2本以上ある

①〜③すべて満たした場合に、インビザライン・ファーストの適応と判断します。

子供のマウスピース矯正の費用

矯正治療は、保険診療の給付の対象外です。子供のマウスピース矯正も同じで、それぞれの歯科クリニックが独自に治療費を設定しています。そこで、ここでは一般的な治療費の相場をご説明します。

定期的な調整費用を別にしてあるところもあります。紛失時の費用も含め、詳しい治療費は主治医にご相談ください。

筋機能矯正装置

筋機能矯正装置を使った場合の治療費は、いずれのタイプであっても8〜16万円ほどです。

現在利用されている筋機能矯正装置のほとんどが既製品なので、後述するアライナー型矯正装置と比べると費用が抑えられているようです。

アライナー型矯正装置

インビザライン・ファーストでの治療費は、80〜100万円ほどです。

成人のインビザラインの治療費は80〜120万円ほどが多いので、インビザライン・ファーストの治療費も同じ程度に設定されているようです。

【まとめ】子供の歯並びを改善するマウスピース矯正の種類・適応範囲・費用

このコラムでは、子供のマウスピース矯正について、種類や適応症、治療費なども含めてご説明しました。

筋機能矯正装置は既製品、アライナー型矯正装置はオーダーメイドという違いから、適応症の種類、治療費などに大きな差が出ています。

症状と適応症、そして治療費を十分理解した上で、適切な矯正装置を選ぶことが大切です。


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