子供の歯並びを改善するマウスピース矯正の種類・適応範囲・費用

子供の歯並びを改善するマウスピース矯正の種類・適応範囲・費用

近年、子供の歯並びの乱れに悩む保護者が増えています。
そして、かつて歯列矯正といえばワイヤー矯正が主流でしたが、今では見た目が気になりにくく、取り外し可能なマウスピース矯正が大人だけでなく、子供の矯正治療にも広まってきています。しかし、いざ子供のマウスピース矯正を検討しようと思っても、どのような種類があり、それぞれにどのような特徴があるのか、費用はどのくらいかかるのかなど、わからないことが多いのではないでしょうか。

この記事では、子供のマウスピース矯正の種類と特徴、費用について詳しく解説します。
この記事を読むことで、子供のマウスピース矯正に関する情報を体系的に理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。

こんな疑問が解決

  • 子供のマウスピース矯正にはどのような種類があるの?
  • 筋機能矯正装置とアライナー型矯正装置の違いは何?
  • それぞれの治療法はどんな子供に向いているの?
  • 治療にかかる費用や期間はどのくらい?
  • マウスピース矯正のメリットとデメリットは何?

マウスピース矯正とは

マウスピース矯正は、マウスピース型の矯正装置を使った歯列矯正です。
歯に直接接着する固定式で行われる従来型の矯正装置と違い、取り外しが可能なのが特徴です。食事や歯磨きのときに外すことができるため、日常生活への影響を最小限にとどめられるだけでなく、齲蝕のリスクを抑えられます。

マウスピース矯正のメリットとデメリットは?ワイヤー矯正との違いを比較しながら解説

子供のマウスピース矯正の分類

子供のマウスピース矯正は、作用の仕方から2種類に分類されます。

筋機能矯正装置

筋機能矯正装置は、口腔周囲筋の働きを利用した矯正装置です。
ムーシールド®︎、プレオルソ®︎、トレーナーシステム®︎、パナシールド®︎、EF line®︎などさまざまなタイプが開発されています。舌癖や開口などの不良習癖の改善や下顎骨の成長発育の促進などを通して、歯列不正を改善します。
現在、市販されている筋機能矯正装置のほとんどは既製品です。アライナー型矯正装置と違い睡眠時間を利用して作用させますので、日中はほとんど使用しません。

アライナー型矯正装置

アライナー型矯正装置は、オーダーメイドのマウスピースを使った矯正装置です。透明で目立たないマウスピースを定期的に交換することで、歯列不正を改善させます。
本来、アライナー型矯正装置は成人を対象とした矯正装置でしたが、小児矯正にも使えるタイプが開発されています。アライナー型矯正装置としては、現在、インビザラインファースト®︎が代表的です。

子供のマウスピース矯正の種類

代表的な子供のマウスピース矯正についてご紹介します。

ムーシールド

ムーシールドは、ムーカンパニーが製造する日本製の筋機能矯正装置です。
適応症は反対咬合です。上口唇の圧力の排除と舌位の改善により、歯列不正を解消します。
ムーシールドには、ムーシールドのほか、ムーシールド・ムータンというタイプもあります。サイズのラインナップは、ムーシールドがSサイズとMサイズ、ムーシールド・ムータンがExtra SmallサイズとLargeサイズになります。素材はムーシールドがポリメタクリル酸メチル、ムーシールド・ムータンが熱可塑性ポリウレタンです。ムーシールド・ムータンの方が柔軟性が高く作られています。

プレオルソ

プレオルソは、日本のフォレスト・ワン社が開発した筋機能矯正装置で3タイプあります。
適応症は、上顎前突症、下顎前突症、叢生、過蓋咬合、開咬症など幅広いです。口唇圧や頬圧の排除や舌の挙上作用により、口呼吸の解消や異常嚥下の改善に加え、歯列不正にも効果があります。
プレオルソは、歯列不正の症状に応じてTypeⅠからTypeⅢまで3タイプがラインナップされています。TypeⅡはノーマルサイズのハードタイプしかありませんが、そのほかのタイプはサイズや素材を選ぶことができます。TypeⅠは上顎前突症・叢生・過蓋咬合、TypeⅡは開咬症、TypeⅢは反対咬合の治療に用いられます。いずれも既製品ですが、加温することである程度の形態修正ができますので、各自に適した形態になるよう調整できます。

トレーナーシステム

トレーナーシステムは、オーストラリアで開発された筋機能矯正装置です。
適応症は、過蓋咬合や交叉咬合、叢生、開咬症などの歯列不正や口呼吸や舌癖などの不良習癖です。
トレーナーシステムは、歯列不正が発生する前に口腔機能を改善し、歯列不正を予防するという従来からの方法と異なるアプローチが特徴です。このため、対象年齢が2歳から13歳以上までと非常に幅広く、対応するマウスピースのラインナップも豊富です。年齢や症状の変化に応じて、マウスピースを交換し、歯列不正の発生を予防します。

パナシールド・プラス

パナシールド・プラスは、舌を挙上することで下顎骨を後方に誘導する筋機能矯正装置です。
適応症は、反対咬合です。
パナシールド・プラスは、SサイズとLサイズの2種類あります。いずれもエラストマーという材料で作られており、口腔内でのサイズ調整が可能です。

EF line(EFライン)

EF lineは、フランスのダニエル・ローレットにより開発された筋機能矯正装置で12タイプあります。
適応症は、叢生、過蓋咬合、交叉咬合、正中不一致、上顎前突症、下顎前突症などです。矯正治療の後の保定装置として使えるタイプもあります。いずれのEF lineも柔軟性の高いポリ塩化ビニルで作られており、装着時の違和感を軽減しています。

インビザライン・ファースト

インビザライン・ファーストは、アメリカのアライン社が開発した未成年用のマウスピース矯正です。
適応症は、上顎前突症や下顎前突症、開咬症、過蓋咬合、交叉咬合など、ほぼ全ての歯列不正です。
インビザライン・ファーストは成人向けのインビザラインと異なり、歯列弓の拡大と歯の動的矯正が同時にできることが特徴です。コンピューターを使って歯の将来位置だけでなく、歯列弓の拡大シミュレーションも可能です。萌出途上の低い歯冠にも作用できますし、永久歯を理想的な位置に萌出できるよう誘導できます。

子供のマウスピース矯正の対象年齢

マウスピース矯正の対象年齢は、矯正装置によって違いがあります。

ムーシールド

ムーシールドも、ムーシールド・ムータンも、サイズによって対象年齢を区分しています。
ムーシールドは、Sサイズが乳歯列期(3〜5歳ごろ)、Mサイズが混合歯列期(6〜11歳ごろ)です。
ムーシールド・ムータンは、Extra Smallサイズが乳歯列期(3〜4歳ごろ)、Largeサイズが混合歯列期(7〜11歳ごろ)を対象としています。

プレオルソ

プレオルソは、4〜10歳ごろを対象とした筋機能矯正装置です。
顎骨の成長に応じて、適切なサイズを選んで使用します。

トレーナーシステム

トレーナーシステムは、対象年齢を乳歯列期(2〜5歳)、混合歯列期(6〜12歳)、永久歯列期(13歳以上)に分類しています。
乳歯列期は、インファントトレーナーを利用します。インファントトレーナーは、鼻呼吸や正常な嚥下、舌癖予防を目的としています。
混合歯列期は、T4Kトレーナー(ソフト・ハード)を利用します。T4Kトレーナーは、柔軟性の高いソフトタイプを6〜8か月使用したのち、ハードタイプに切り替えます。
永久歯列期は、T4AフェーズⅠやT4AフェーズⅡを利用します。フェーズⅠはソフトタイプ、フェーズⅡはハードタイプです。どちらも、第二大臼歯まで覆えるサイズになっていますし、萌出してくる犬歯位置を調節するために犬歯部が高めになっているのが特徴です。
このほか、マルチブラケット法での矯正治療時において同時に筋機能矯正ができるT4Bトレーナー、口呼吸防止用のTMJ-MBV、歯軋り防止用のブラキシガードなどがあります。

パナシールド・プラス

パナシールド・プラスは乳歯列期から永久歯列期まで幅広い年齢を対象とし、サイズで分類しています。
Sサイズは乳歯列期から混合歯列前期(3〜9歳ごろ)、Lサイズは混合歯列後期から永久歯列期(9歳以上)を対象年齢にしています。なお、3歳未満は使用できません。

EF line

EF lineは、対象年齢について、歯列の発達状態から3段階に分類しています。

  1. 乳歯列期・混合歯列期前期(4〜8歳)
  2. 混合歯列期中期・混合歯列期後期(8〜11歳)
  3. 混合歯列期後期・永久歯列期(11〜15歳)

EF lineの矯正装置は、それぞれの年齢と症状に応じて作られており、適したタイプを選択して使用します。

インビザライン・ファースト

インビザライン・ファーストは、年齢ではなく歯の萌出状況によって適否を判断しています。

  1. 第一大臼歯が萌出
  2. 切歯のうち2本が2/3以上萌出
  3. 少なくとも、3/4顎に乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯、または未萌出の犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯が2本以上ある

①〜③すべて満たした場合にインビザライン・ファーストの適応と判断します。

子供のマウスピース矯正の費用

矯正治療は保険診療の給付の対象外です。子供のマウスピース矯正も同じで、それぞれの歯科クリニックが独自に治療費を設定しています。
ここでは一般的な治療費の相場をご説明します。定期的な調整費用を別にしてあるところもあります。紛失時の費用も含め、詳しい治療費は主治医にご相談ください。

筋機能矯正装置

筋機能矯正装置を使った場合の治療費は、いずれのタイプであっても8〜16万円ほどです。
現在利用されている筋機能矯正装置のほとんどが既製品なので、後述するアライナー型矯正装置と比べると費用が抑えられているようです。

アライナー型矯正装置

インビザライン・ファーストでの治療費は、80〜100万円ほどです。
成人のインビザラインの治療費は80〜120万円ほどが多いので、インビザライン・ファーストの治療費も同じ程度に設定されているようです。

【まとめ】子供の歯並びを改善するマウスピース矯正の種類・適応範囲・費用

子供の歯並びを整えるマウスピース矯正について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。

この記事のおさらい

  • 子供のマウスピース矯正には「筋機能矯正装置」と「アライナー型矯正装置」の2種類がある
  • 筋機能矯正装置は、お口周りの筋肉の力を利用し、舌癖などの悪習癖を改善して歯並びを整える
  • アライナー型矯正装置は、オーダーメイドのマウスピースを定期的に付け替えて歯を動かす
  • 治療法によって対象年齢や適応症が異なり、費用にも違いがある

筋機能矯正装置は既製品、アライナー型矯正装置はオーダーメイドという違いから、適応症の種類、治療費などに大きな差が出ています。また、マウスピース矯正はワイヤー矯正に比べて見た目の抵抗が少なく取り外し可能であるため、歯磨きや食事がしやすいといったメリットがあります。しかし、お子さん自身が装着時間を守る必要があるため、保護者の方のサポートが不可欠です。
この記事で得た知識を参考に症状と適応症、そして治療費を十分理解した上で、お子さんの歯並びについて専門の歯科医師に相談し、最適な治療法を見つける一助となれば幸いです。


関連記事

子供の受け口(反対咬合)はいつから治せる?小児矯正や自分で治す方法も解説

子供の受け口(反対咬合)はいつから治せる?小児矯正や自分で治す方法も解説

子供矯正の種類と使われる装置の役割

子供矯正の種類と使われる装置の役割

子供の歯並びを改善するマウスピース矯正の種類・適応範囲・費用

子供の歯並びを改善するマウスピース矯正の種類・適応範囲・費用