ペリソルブとは?従来の歯周病治療との違いやメリットとデメリット

ペリソルブとは?従来の歯周病治療との違いやメリットとデメリット

歯周病の治療は、原因菌が潜むプラークの除去と、プラークが付着する温床となりうる歯石の除去などによるプラークコントロールによって行われてきました。

しかし、プラークコントロールだけでは歯周病が改善されない方や、プラークや歯石の除去が困難な方もおられます。

そこで開発されたのが、ペリソルブという薬剤を使った歯周病治療です。

ペリソルブとはどのような薬剤なのでしょうか。

今回は、ペリソルブについて、成分や有効性、術式などを含めてご説明いたします。

目次

ペリソルブとは

ペリソルブとは

歯周病の原因菌の一種である嫌気性菌のフォルフィロモナス・ジンジバーリス(Porphyromonas.gingivalis)は、歯周ポケット深部の上皮細胞の中に生息していますが、これを除去するのは非常に困難です。

この他にも上皮細胞には100種類以上の細菌が侵入していると言われています。これらの細菌が生息している限り、歯周病治療の効果は期待しづらくなります。

そこで、これらフォルフィロモナス・ジンジバーリスなど上皮細胞に入り込んだ細菌を除去し、歯周病の治療効果を高めるために開発された薬剤がペリソルブです。

成分

ペリソルブは、ジェルとリキッド(液体)で構成されています。

ジェルの成分は、主成分をアミノ酸としており、その他の成分として塩化ナトリウム(Nacl)・カルボキシメチルセルロース(CMC)・水(H2O)・水酸化ナトリウム(NaOH)が配合されています。

リキッドの成分は、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)です。

すなわち、ペリソルブはアミノ酸と次亜塩素酸ナトリウムを主成分としており、アミノ酸による細胞の保護作用と、次亜塩素酸ナトリウムの殺菌作用で、歯周病に効果を発揮するように作られている薬剤です。

作用機序

アンモニアの水素原子を塩素原子に置き換えて作られた化合物をクロラミンといいますが、ペリソルブもクロラミンの一種です。

ペリソルブは、クロラミン反応を利用して作用させます。

クロラミン反応により、歯石やプラークを軟化させると同時に、口腔内細菌に対する抗菌作用により歯周病の原因菌を殺菌します。

適応症

歯肉縁上歯石、歯肉縁下歯石を認める歯周炎の治療やインプラント周囲炎の治療に適応があります。

ペリソルブの術式

ペリソルブを使った歯周病治療は、以下のような術式で行われます。

①ペリソルブの混和

ペリソルブのシリンジのキャップを外し、ジェルとリキッドのシリンジをねじってつなぎます。

プランジャーを交互に10〜15回くらい押して、ジェルとリキッドが均質になるまで混ぜ合わせます。

混和が完了したら、透明なシリンジの側に全て押し出します。

②チップの装着

シリンジに装着するシリンジは2種類あります。治療部位に適したシリンジを選んで装着します。

③ペリソルブの塗布

混和したペリソルブを歯周ポケットに塗布し、歯周ポケットの歯肉縁まで満たします。

④ペリソルブを作用させる

30秒間放置し、ペリソルブを病巣に十分作用させます。

⑤スケーリングとルートプレイニング

ペリソルブが病巣に十分作用したら、通常通りのスケーリングとルートプレイニングを行います。

⑥処置の反復

上記の手順を3〜5回繰り返し、病巣を徹底的に除去します。

なお、歯周ポケット内の歯周病の原因菌の除菌目的だけでペリソルブを作用させる場合は、⑤のスケーリングとルートプレイニングを行わず、炎症部位にペリソルブを30秒間塗布し、水洗します。

ペリソルブのメリット

ペリソルブを使った歯周病治療には、さまざまなメリットがあります。

スケーリングやルートプレイニングの作業性の向上

ペリソルブの作用を受けると、歯肉縁上・歯肉縁下を問わず、歯石やプラークが軟化されます。

非常に硬い歯肉縁下歯石も軟らかくなるため、スケーリングだけでなくルートプレイニングの作業性が高まります。

スケーリングやルートプレイニング時に発生しやすい疼痛や出血を抑えながら、処置できるようになります。

歯周外科治療の成績の向上

歯周基本治療では歯周ポケットが改善しない場合には、歯周外科治療が適応となります。

歯周外科治療で、歯周ポケットを除去し、歯周病の改善を図るわけですが、その成否は十分なプラークコントロールにあります。

ペリソルブには、歯周ポケット内の細菌の増殖を抑える効果がありますので、歯周外科治療の成績を向上させます。

菌血症のリスクを軽減

通常、スケーリングやルートプレイニングを行うと、歯肉に創部を形成し、そこからの出血を認めます。

プラークはバイオフィルムという別名があるほどの細菌塊ですし、歯石はそのプラークが付着する温床となっています。

プラークや歯石を除去すると、含まれていた細菌が遊離して歯肉の創部から侵入しますので、菌血症を引き起こすリスクが生じます。

ペリソルブには、バイオフィルムを形成している細菌塊を殺菌する効果がありますので、スケーリングやルートプレイニング後の菌血症の発症リスクを軽減することができます。

歯周病治療時の疼痛の緩和

ルートプレイニングでは、ハンドスケーラーで歯根表面を掻爬して歯肉縁下歯石を除去します。

一般的に歯肉縁下歯石は硬いために強い力で歯根表面を掻爬せざるを得ないので、疼痛が避けられません。

ペリソルブを作用させると、歯肉縁下歯石も軟化し、より優しくルートプレイニングできるようになりますので、処置時の疼痛が緩和されます。

健全歯周組織への為害性がない

ペリソルブが作用するのは、歯周病に罹患した歯周組織だけです。健全な歯周組織に影響することはありません。健全組織への為害性がないのもペリソルブのメリットです。

インプラント周囲炎の改善

インプラント周囲炎は、インプラントの周囲にプラークや歯石が付着することで生じます。インプラント周囲炎は進行すると、インプラントを支持する周囲骨の吸収を引き起こし、インプラントが脱落する原因となります。

インプラント周囲炎も、歯周病と同じく口腔内の細菌が原因で起こります。インプラント周囲炎の原因菌に対しても、ペリソルブは抗菌作用を発現しますので、インプラント周囲炎の治療にもペリソルブは有効性を示します。

ペリソルブのデメリット

ペリソルブのデメリットは多くありませんが、ないわけではありません。

ペリソルブの混和は直前でなければならない

ペリソルブは、混和してから30分ほどで効果が減弱してしまいます。そのため、ペリソルブをあらかじめ混和して保存しておくことはできません。

ペリソルブの混和は、治療の直前に行う必要があります。

保険診療の適応がない

現在、ペリソルブは保険診療の適応が得られていません。したがって、ペリソルブを使った歯周病治療は自費診療となり、治療費が高額になるというデメリットがあります。

ペリソルブを使った歯周病治療の治療費は、それぞれの歯科医院が治療費を定めていますので、具体的な費用はそれぞれの歯科医院でご相談いただくことになり、一般的には1歯あたり数千円とするか、1/6顎を1ブロックとして1ブロック18,000〜20,000円くらいの費用設定が多いようです。

ペリソルブと従来の歯周病治療との違い

では、ペリソルブを用いた歯周病治療と、歯周基本治療や歯周外科治療などの従来から行われている歯周病治療とではどのような違いがあるのでしょうか。

歯周基本治療との違い

歯周基本治療は、プラークコントロールやスケーリング、ルートプレイニング、機械的歯面清掃などによる歯周病の初期治療です。

その目的は、歯周病の原因菌を含むプラークを物理的に除去し、かつ口腔内の環境をプラークが付着しにくくすることにあります。すなわち歯周基本治療は、プラークの物理的除去と再付着の予防が重視されています。

一方、ペリソルブを用いた歯周病治療では、薬理作用によるプラークの除去と、歯周病の原因菌の除菌が行われます。

歯周基本治療とペリソルブによる治療を比較してみると、物理的な除去を行うのか、薬理学的な治療効果を得るのかという点に違いがあることがわかります。

歯周外科治療との違い

先に述べたように、歯周基本治療で歯周ポケットの改善などの効果が得られない場合に行われるのが、歯周外科治療です。

歯肉弁を形成するなどの違いはありますが、基本的には歯周基本治療と同じくプラークや歯石の物理的な除去によるプラークコントロールが中心です。

ペリソルブによる歯周病治療と歯周外科治療の違いも、やはり物理的なプラークコントロールか、薬理作用によるプラークコントロールかという点にあります。

【まとめ】ペリソルブとは?従来の歯周病治療との違いやメリットとデメリット

今回は、歯周病の治療薬ペリソルブについてご説明しました。

ペリソルブは、プラークや歯石を軟化して除去しやすくするだけでなく、歯周ポケットの上皮細胞内に侵入した歯周病菌を殺菌する効果もある薬剤です。

従来の歯周病治療では難しい上皮細胞内の歯周病菌を殺菌することで、歯周病の治療効果を高められますので、これからの歯周病治療に普及が望まれる薬剤です。


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