入れ歯が痛い原因と安定剤の選び方と使い方

入れ歯が痛い原因と安定剤の選び方と使い方

「せっかく作った入れ歯なのに使うと痛くて困っている」「食事のたびに痛みを感じて、外出も億劫になってしまった」といったお悩みはありませんか?
入れ歯は、お口の状態に合わせて作製した後、何度か調整を重ねることで徐々に馴染んでいくものです。しかし、一度はぴったり合ったはずの入れ歯でも、加齢によるお口の変化や噛み合わせのズレ、あるいは新しい入れ歯に慣れていないといった理由で、突然痛みが生じることがあります。
痛みがあると満足に食事ができず、生活の質にも関わるため、早急な対策が必要です。

この記事では、入れ歯が痛い原因とその対処法、そして一時的な症状の緩和に役立つ「入れ歯安定剤」の選び方と正しい使い方を詳しく解説します。
この記事を読むことで、なぜ入れ歯に痛みが出るのかという根本的な原因を理解でき、ご自身の症状に合わせた適切なケアや市販の安定剤をどのように使い分ければよいのかといった疑問を解決します。

こんな疑問が解決

  • なぜ今まで使っていた入れ歯が急に痛くなったのか?
  • 新しい入れ歯が痛い場合、そのまま使い続けても大丈夫?
  • 自分の症状には「クリーム」「パウダー」「クッション」どの安定剤が合う?
  • 入れ歯安定剤をずっと使い続けても問題はないのか?

入れ歯が痛い原因

入れ歯による痛みの原因は様々です。

入れ歯の歯肉や粘膜に触れる部分(粘膜面)が合っていない場合

入れ歯が直接粘膜や歯肉に触れる部分には、筋肉や繊維といった軟組織と骨や歯といった硬組織が混在しています。これらの組織は、口腔内の環境の変化や加齢などにより変動するため、入れ歯が合わなくなります。このため入れ歯が今まで強く当たっていなかった場所に強く当たる、入れ歯と粘膜や歯肉の間に隙間ができて食片が入りやすくなり、痛みを生じるということが起こります。

咬合(咬み合わせ)が高い

咬合が高いと歯肉や粘膜が圧迫されるため、食事をする時に咀嚼することによって痛みを生じることがあります。また、咬合が高くなることによって、顎関節にも痛みが波及することがあります。ただし、咬合が元々低く、治療のために咬合を上げる治療をしている場合もありますので注意が必要です。

入れ歯を支える金属の金具が痛い

部分入れ歯の場合は、入れ歯を支える金具(クラスプ)が付いている入れ歯があります。
歯が歯周病でグラグラする、虫歯で歯が崩壊している歯にクラスプをかけると入れ歯からの力がクラスプを通じて歯に伝わり、痛みを生じる場合があります。また、日々の入れ歯の出し入れでクラスプが緩み、粘膜や歯肉に接触することによって痛みを生じることもあります。

唾液が少ない

加齢による唾液腺の萎縮変性、多剤服用に唾液分泌量の低下、自己免疫疾患等により、口腔内の唾液の量が低下すると口腔内が乾燥します。乾燥すると入れ歯によるわずかな刺激にも敏感になり、痛みを生じることがあります。

新製した入れ歯を入れた場合

新しくした入れ歯を入れた場合、歯科医院で調整してもらった直後は痛くないとしても、まだ新しい入れ歯に歯肉や粘膜、骨が慣れていないため、しばらく使用していると痛くなることがあります。

入れ歯が痛い時の対処法

痛みが出た場合、自分でどうにかせず、かかりつけの歯科医院を受診することが大切です。

入れ歯の歯肉や粘膜に触れる部分(粘膜面)が合っていない場合

強く当たっている部分を目視や当たりをチェックする材料を使用して把握し、リリーフ(強く当たらないように削合する)します。
粘膜や歯肉に炎症が起きている場合や明らかに適合が合わない場合は、粘膜調整材を使用して粘膜を安静化させ、裏装材という粘膜面の裏打ち材料を使用して粘膜面のみを新製することもあります。

咬合(咬み合わせ)が高い

咬合紙(咬み合わせを印記する紙)を使用し、当たりが強い部分を把握し、咬合調整をします。
残存歯の本数が少ない場合は、咬み合わせが不安定なことがあるため、何回かに分けて探りながら調整することもあります。

入れ歯を支える金属の金具が痛い

プライヤー(クラスプを調整する器具)を使用して、クラスプを粘膜や歯肉に当たらないように調整します。クラスプが変形していたり、折れている場合はクラスプのみ新製することもあります。
歯が虫歯や歯周病でクラスプをかけるだけの力がない場合は虫歯や歯周病の治療をし、それでもダメな場合は他の歯にクラスプをかけることもあります。

唾液が少ない

唾液腺マッサージやガムを咬んでもらうことによって唾液腺を刺激し、なるべく口腔内を湿潤状態にしてもらいます。
他にも水分をこまめに摂取してもらう、人工的な保湿剤を使用する、常用薬が原因で乾燥している場合は医科の先生に薬の種類を変えてもらうといった方法があります。

新製した入れ歯を入れた場合

多少痛いのであれば、少し慣れるまで様子を見る場合があります。明らかに歯肉や粘膜に傷がある場合は、その部分をリリーフします。
痛みが強い場合は無理に入れ歯を口腔内に装着せず、すぐにかかりつけの歯科医院を受診することが大切です。

入れ歯安定剤とは

入れ歯安定剤とは、入れ歯をお口の中で安定させるためのものです。痛みがある、咬合が合わない、お食事や喋る際に外れやすいといった症状を緩和するために使用します。ただし、長期的に入れ歯安定剤を使用することにはリスクもあります。
一つは、合っていない入れ歯を無理に安定させている可能性があるため、合っていない部分の歯肉が圧迫され、顎骨が吸収されてしまうことです。顎骨が吸収されると、入れ歯を支えることが困難になります。もう一つは、安定剤を使用してお手入れが十分でないと、細菌が繁殖し、口腔内の衛生環境が悪化し、誤嚥性肺炎にもつながります。
あくまで、入れ歯安定剤は一時的な症状の緩和として使用することをお勧めします。

入れ歯安定剤の選び方

入れ歯安定剤は大きく分けて4つのタイプがあります。
それぞれ特徴があり、入れ歯の状態やご自身のお口の中の状態に合わせた選択が大切です。

パウダータイプ

合成系の材料で作られたものと、天然系の材料で作られたものの2種類があります。
使い方は粘膜面を湿らせ、パウダーをふりかけます。メリットは違和感が少なく、洗浄も簡単だということです。デメリットは、慣れるまで時間がかかる点と粘着力が強くないことです。
入れ歯を新製した際や入れ歯の違和感が少ない時は、パウダータイプから使用すると取り扱いが単純のため便利です。

クリームタイプ

使い方は、クリームを入れ歯の粘膜面にまんべんなく薄く塗ります。粉末タイプより粘着力が強いです。味もなく、臭いも少ないですが、成分に配合されている白色ワセリンが溶出することがあります。最近では、白色ワセリン無配合のクリームタイプもあります。
入れ歯が緩い、または食片が入れ歯と粘膜や歯肉の間に入り込み痛みを感じる場合は、クリームタイプをお勧めします。

クッションタイプ

クッション材として酢酸ビニル樹脂が配合されており、クッション性を出す材料となります。使い方は粘膜面に指で材料を塗り広げ、口腔内に装着し、溢れた材料を綺麗に取り除いて使用します。これにより、入れ歯による突き上げや衝撃を緩和しますが、長時間使用すると歯肉や粘膜、顎骨、咬合に影響を与えます。
入れ歯がガタつく場合に使用しますが、使用は一時的にし、早めにかかりつけの歯科医院を受診することをお勧めします。

シートタイプ

シートタイプは入れ歯の粘膜面に貼れば良いので、使い勝手が良いのが特徴です。クリームタイプと同じくらいの粘着力があります。
長時間使用すると溶けるタイプと溶けないタイプがあります。貼るだけなので外出時やご旅行の際にお勧めです。

【まとめ】入れ歯が痛い原因と安定剤の選び方と使い方

入れ歯が痛い原因と安定剤の選び方・使い方について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。

この記事のおさらい

  • 入れ歯が痛むのは、粘膜の不適合、噛み合わせの不備、唾液不足など、複数の理由がある
  • 痛みを無理に我慢せず、歯科医院で調整(削合や裏打ち)を受けることが最も重要
  • 入れ歯安定剤は「パウダー」「クリーム」「クッション」「シート」の4種類があり、症状に合わせて選ぶ
  • 安定剤はあくまで一時的な緩和手段。長期使用は顎の骨の吸収や細菌繁殖のリスクがある

入れ歯の痛みは、単に「形が合っていない」だけでなく、噛み合わせの高さや唾液の減少、支えとなる金具(クラスプ)の影響など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。痛みがあるまま放置すると、歯肉の炎症を招くだけでなく、顎の骨が痩せてさらに合わなくなるという悪循環に陥ることもあります。
入れ歯に痛みを感じたら「自分でどうにかしよう」とせず、まずはかかりつけの歯科医院を受診してください。適切な調整を受けながら、必要に応じてご自身の状態に合った安定剤を正しく活用することで、快適な食事と会話を取り戻しましょう。


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