入れ歯の洗浄や洗い方と日常使用時の注意点

入れ歯の洗浄や洗い方と日常使用時の注意点

入れ歯は補綴装置(失った歯や歯の一部を補う装置)の一つで、可綴式(自分の意思で取り外し可能な装置)の装置です。
この入れ歯を使い始めたばかりの方や長年使用している方の中には、「毎日洗っているけれど、本当にこの方法で合っているのかな?」「最近、入れ歯の汚れや臭いが気になってきた」といった不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
入れ歯は失った歯の機能を補う大切な装置ですが、適切なお手入れができていないと、入れ歯そのものが傷むだけでなく、残っている歯の寿命を縮めたり、全身の健康にまで悪影響を及ぼしたりする可能性があります。

この記事では、入れ歯の種類ごとの特徴から正しい洗浄やお手入れの方法、そして日常使用における注意点までを詳しく解説します。
この記事を読むことで、自分の入れ歯に合った最適な清掃方法や洗浄剤の選び方を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。

こんな疑問が解決

  • 入れ歯をしっかり磨いているつもりなのに、なぜ汚れや臭いが残るの?
  • 市販の入れ歯洗浄剤は、どれを選んでも同じなの?
  • 寝る時に入れ歯を外したほうがいい理由は何?
  • 入れ歯を洗う時に、普通の歯磨き粉を使ってはいけないのはなぜ?
  • 部分入れ歯や特殊な入れ歯(金属床、磁石式など)特有のお手入れのコツは?

入れ歯の種類と役割

入れ歯は虫歯や破折等で失った歯を補う補綴装置の一つです。また、入れ歯のことを専門的には「義歯」や「デンチャー」と言います。
自分で取り外しができるため、他の補綴装置と比べると清掃性は良いですが、固定式ではないため、異物感を感じやすいのが欠点です。
そんな入れ歯の種類には、主に二つあります。

総入れ歯

総入れ歯

上顎または下顎のどちらか、あるいは両方の歯が全くない状態の口腔内に装着する入れ歯です。
床と呼ばれる口腔内の粘膜や歯肉に直接接触する部分と、人工歯といわれるダミーの歯から構成されます。床や人工歯は、通常プラスチックで作製されます。

部分入れ歯

部分入れ歯

残存歯がある場合に装着する入れ歯です。
床と人工歯から構成されますが、追加としてクラスプという残存歯に維持や支持を委ね、金属で構成される装置が付与されています。

特殊な入れ歯

その他、特殊な入れ歯もみていきます。

ノンクラスプデンチャー

ノンクラスプデンチャー

クラスプのない部分入れ歯です。特殊なプラスチックを使用しており、クラスプがない分、審美性は良いですが、破損した際の修理ができないという弱点があります。

コーヌステレスコープデンチャー

残存歯に内冠という被せ物を被せ、入れ歯に外冠という被せ物を付与します。内冠に外冠を茶筒のようにはめ込むことで、入れ歯を維持させようとする入れ歯です。

金属床義歯

金属床義歯

床や人工歯の一部が金属で作製されるものです。強度や耐久性が出ますが、保険適用外の入れ歯となります。

マグネットデンチャー

床の粘膜と接する面に磁石を装着し、対応する磁石を残存歯やインプラントに装着し、磁石の力で入れ歯を維持しようするものです。

入れ歯を清掃しないとどうなる?

入れ歯の清掃不良は、単純に口腔内の細菌数の増加を意味します。よって、義歯性口内炎の原因になるだけでなく、虫歯や歯周病の進行とも関連してきます。また、褥瘡性潰瘍(じょくそうせいかいよう)や扁平苔癬(へんぺいたいせん)といった口腔粘膜疾患を憎悪させる要因ともなります。
全身的な影響としては、不顕性肺炎や誤嚥性肺炎といった重篤な疾患へと繋がります。よって、入れ歯の清掃は口腔内の衛生管理に止まらず、全身の健康管理のためにも大切です。

入れ歯の手入れの仕方と洗い方

入れ歯の手入れは、主に機械的洗浄と化学的洗浄に分けることができます。

機械的清掃

入れ歯用のブラシを用いて流水下で刷掃します。
付着している食物残渣を軽く取り除く程度の力で磨くことが重要です。そうしないと、床や人工歯のプラスチックが磨耗してしまいます。また、歯磨剤を使用して磨いてしまうと歯磨剤成分の中のシリカ、リン酸水素カルシウム、水酸化アルミニウム、無水ケイ酸といった研磨成分が義歯を摩耗させるだけでなく、変色の原因ともなるため使用してはいけません。
ノンクラスプデンチャーは、通常の入れ歯に比べると柔らかい素材のプラスチックを使用しているため、通常の入れ歯用のブラシだと傷つきやすいです。よって、柔らかいブラシを使用することをお勧めします。
マグネットデンチャーのマグネットの部分はデリケートな部分なため、柔らかい歯ブラシや綿棒を使用すると良いです。

化学的清掃

機械的清掃のみでは、どうしても義歯の清掃が細部まで行き届かないことが現実です。
そこで提案したいのが、入れ歯用洗浄剤を使用した化学的清掃です。特に義歯性口内炎の原因や歯周病と関連する菌の一つであるカンジタ菌は、機械的清掃では完全に除去されないため、洗浄剤による化学的清掃が有効です。ただし、プラスチックで作製された入れ歯は、60度以上の熱湯につけると入れ歯が変形してしまうので注意が必要です。
また、入れ歯にも歯と同じように歯石が沈着することがあります。軽度の場合は歯石除去成分が配合された洗浄剤で落とすことも可能ですが、量が多いと洗浄剤で落とすことは難しくなるため、歯科医院で除去してもらう必要があります。

洗浄剤の選び方

洗浄剤の選び方

市販の洗浄剤にはアルカリ性過酸化物系、次亜塩素酸塩系、酸系、酵素系の4種類が単独または混合されて売られています。
洗浄剤には殺菌、消臭、洗浄の作用があり、それぞれの洗浄剤で効能が異なります。
アルカリ性過酸化物は発泡作用で汚れを落とし、活性酸素で汚れを分解します。次亜塩素酸塩は漂白作用や殺菌作用が強いです。酸は歯石や着色除去には非常に有効です。酵素はタンパク質分解作用があり、残存した食物を分解します。
洗浄剤の形状としては、使い勝手の良い錠剤タイプ、手先の細かい作業が高齢や障がいによって難しい場合などに使用されるスプレータイプ、旅行をはじめとした持ち歩きに便利なシートタイプがあります。基本的な総入れ歯であればどれを使用しても問題ありませんが、それ以外の入れ歯は下記に記す注意が必要です。

※次亜塩素酸塩やクエン酸などの酸が含まれている洗浄剤は、部分入れ歯、コーヌステレスコープデンチャー、マグネットデンチャー、金属床義歯といった金属を使用している入れ歯に使用すると、金属の腐食がすすむ可能性があります。できれば、防錆剤が配合された入れ歯用洗浄剤を使用すると良いです。
※ノンクラスプデンチャーは、アルカリ性の義歯洗浄剤は床が変性する可能性があるため、中性や酸性の洗浄剤を使用した方が良いです。
※チタンが義歯の中に入っている場合は、アルカリ性の義歯洗浄剤は使用できません。アルカリ性の溶液によってチタン表面の不導体膜が除去されて変色してしまうからです。

入れ歯を管理、使用する際の注意点

  • 入れ歯を装着した際やお食事の際に痛みや違和感を感じた場合、入れ歯が破損した場合は、すぐに歯科医師や歯科衛生士に相談することが大切です。
  • 寝るときは基本的には入れ歯を外しておきます。なぜならば、入れ歯が接する粘膜や組織の安静化をはかることや不潔になりやすい入れ歯を外し、化学的清掃の時間として利用するためです。
  • 顎関節症の方や顎の位置が安定しない患者さんの場合は、入れ歯を装着したまま寝ることを推奨する場合があります。
  • 入れ歯を外して保管する際は、乾燥と変形を防ぐために水中もしくは湿潤下で保管することが大切です。
  • ノンクラスプデンチャーは変色しやすいため、カレーやコーヒーといった着色物の食事をする際は早めに水洗いすると良いです。
  • マグネットデンチャーは磁石を使用しているため、医科でMRIを撮影する際は注意が必要です。

【まとめ】入れ歯の洗浄や洗い方と日常使用時の注意点

入れ歯の正しい洗浄方法と、長持ちさせるための日常の注意点について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。

この記事のおさらい

  • 汚れを落とす「ブラシ清掃」と菌を除去する「洗浄剤」の併用が不可欠
  • 一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれており、入れ歯を傷つけるため使用厳禁
  • 洗浄剤にはタイプがあり、部分入れ歯やチタン製などは成分に注意が必要
  • 乾燥や熱湯(60度以上)は、入れ歯の変形を招く大きな原因になる
  • 基本的に寝る時は外し、水や専用液の中で保管して粘膜を休ませる

入れ歯はただ洗えば良いというわけではなく、ブラシによる「機械的清掃」と、洗浄剤による「化学的清掃」の両方を正しく組み合わせることが重要です。また、ご自身が使用している入れ歯の素材(金属の有無やプラスチックの種類)に合わせた洗浄剤選びが、装置の故障や変色を防ぐ鍵となります。
入れ歯の適切な管理は、口腔内の衛生を守るだけでなく、誤嚥性肺炎などの全身疾患の予防にも直結します。もし使用中に痛みや違和感がある場合は、無理に使い続けず、すぐにかかりつけの歯科医院を受診してください。定期的(3か月〜半年に一度)なプロによるメンテナンスと日々のセルフケアを両立させ、お口の健康を長く保っていきましょう。


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