子どもの歯並びが気になり始めると、「いつから矯正を始めるべき?」「ワイヤー矯正は痛そうで可哀想」「マウスピース矯正は子どもでもできるの?」といった不安や疑問を抱く保護者の方は多いのではないでしょうか。
最近の歯列矯正では、痛みが少なく目立ちにくいマウスピース矯正を選択するケースが増えていますが、子どもの矯正には成長段階に合わせた適切な開始時期や特有のメリット・デメリットが存在します。また、歯列矯正は50代、60代あるいはそれ以降でも施術可能な矯正法ですが、一般に代謝活動が活発な若いうちのほうが成果は早く出るといわれています。
このため、歯並びの乱れが気になるお子様には、自分の容姿が気になり始める年頃になる前に、できるだけ早く歯の矯正をしてあげたいとお考えになる保護者の方も多いでしょう。
この記事では、子供のマウスピース矯正の開始時期や成長に合わせた「Ⅰ期治療・Ⅱ期治療」の仕組みを詳しく解説します。
この記事を読むことで、お子様の歯並びの状態に応じた最適な矯正治療のタイミングや、マウスピース矯正を成功させるための注意点を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問が解決
- 子どものマウスピース矯正は何歳から始められる?
- Ⅰ期治療とⅡ期治療の違い
- マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて何が良いの?
- 途中でやめてしまうとどうなる?管理のコツは?
- 顎の成長を促す矯正と、歯を並べる矯正はどう違う?
目次
子供の歯列矯正はⅠ期とⅡ期に分けられる
マウスピース矯正の話をする前に、予備知識として少し小児矯正について理解が必要です。
一般的に子供の歯列矯正は、Ⅰ期(前期)治療とⅡ期(後期)治療に分かれます。おおまかに考えて「乳歯のみ、または乳歯と永久歯が混在している時期」がI期、「完全に永久歯に生え変わってからの時期」がII期と理解していただいて結構です。この年頃の歯列矯正には、マウスピース矯正以前に「床矯正(しょうきょうせい)」と呼ばれる矯正装置を使用するのが一般的ですから、それについても簡単に説明しておきます。
I期治療とは
I期治療とは、年齢でいうとおよそ3歳頃から12歳頃まで、歯の状態でいえば乳歯~永久歯が生え揃うまでの期間を指します。この時期は本格的な歯列矯正を行うⅡ期に備えての予備的な矯正治療を行う時期だとされています。この時期に行うべきこととしては、主に次の3点が挙げられます。
上顎と下顎のバランスを骨格ベースで整える
子供の骨格が柔軟で成長著しいこの時期、上顎と下顎の発達のバランスを整え、将来の歯列乱れの原因となる骨格の歪み・ズレなどを整えていきます。
永久歯がきれいに並ぶための「基礎」をつくる
この時期に歯列の歪み・凹凸などがあった場合、床矯正(歯列にワイヤー状の矯正装置を装着し、内側から外に歯列を押し出す矯正法)などで将来生えてくる永久歯が整然と並べるだけのスペースを確保しておきます。
悪い習慣が定着しないように機能改善を行う
たとえば口呼吸の習慣がある場合、放置しておくと開咬の原因になることがあります。口呼吸の習慣がつくのは歯以外のところにある問題のせいであったりすることもありますから、こうした状態を改善することでⅡ期以降の矯正の程度を引き下げ、体やメンタル面での負担を軽減することが期待できます。
Ⅱ期治療とは
Ⅱ期治療とは、子供の乳歯が抜けて永久歯が生え揃った時期、すなわちI期が終了した段階以降で顎の骨の成長が止まる高校生くらいまでの時期を指します。
Ⅱ期治療ではI期治療の矯正過程を引き継ぎ、生え揃った永久歯が望ましい歯列や咬み合わせを形成していけるよう補助していく形が基本です。
子供の歯列矯正はいつからがベスト?
何らかの歯列矯正は少なくともI期すなわち乳歯が生えた段階、年齢でいえば3歳程度から可能です。では、この時期の子供に不正咬合が見つかった場合はどのような治療が必要なのかといった点をもう少し詳しく掘り下げたいと思います。
乳歯列期の歯列矯正
I期前半、まだ乳歯が永久歯に生え変わり始める前の期間を「乳歯列期(にゅうしれつき)」といいます。
この時期は、永久歯が生えるための準備期間にあたり、子供の顎と歯の大きさのバランスを整える必要があります。
- 永久歯が望ましい状態に生えられるだけの顎のスペースがあるか
- 上下顎の大きさのバランス(反対咬合・上顎前突など)
- 上下の顎の上下左右のずれ(交叉咬合(こうさこうごう)・過蓋咬合(かがいこうごう)など)がないか
といった精密検査を行い、その結果に基づいて歯列矯正にふさわしい矯正装置の選択、生活習慣改善などの治療方針が提案されます。
混合歯列期の歯列矯正
乳歯から永久歯へ生え変わり、永久歯列が完成するまでの期間を「混合歯列期」といいます。
この時期は歯の生え変わりで歯と咬み合わせが大きく変化し、また顎の骨も成長し続けるため、非常に咬合が不安定な時期です。また、咬み合わせが骨の成長に影響を与えることもあり、場合によっては顔つきまで思わぬ変化が生じるおそれもあります。
この時期の子供に多く見られる不正咬合には、叢生(そうせい)いわゆる乱ぐい歯、「隙っ歯」ともいわれる正中離開、俗に「受け口」といわれる反対咬合、「出っ歯」といわれる上顎前突、奥歯を噛み締めても前歯の上下に隙間ができる「開咬」、そのほか反対咬合や過蓋咬合などがあります。
また、歯の生え変わりにまつわる心配として「乳歯の晩期残存」「歯の先天性欠如」「過剰歯」「萌出遅延」などの可能性があります。これらへの対処法としては歯列矯正だけでなく、抜歯を含む外科治療が必要な場合もあります。
プレオルソが開始できる時期
プレオルソとは、矯正専門の歯科医師が開発したマウスピース型の矯正装置です。「マウスピース矯正のジュニア版」と考えてください。
歯列矯正のほか咬み合わせ矯正、鼻呼吸のトレーニング、口腔習癖の改善など、子供の不正咬合を総合的に改善できる矯正装置といわれています。
プレオルソの公式サイトでは、5~6歳くらいから始めるのが望ましいとしています。中学生くらいまではそのまま矯正を続けるケースがあります。高校生くらいになると大人と同じマウスピース矯正に切り替えたほうが望ましいかもしれませんが、これは歯科医師の判断によります。
子供のマウスピース矯正が開始できる時期
マウスピース矯正のひとつに「インビザライン」という世界的に認知度が高く、症例数の多い矯正システムがあります。もともとは、成人向けに開発された矯正システムで、小児歯科では「永久歯が生え変わってから」のⅡ期以降でないと子供には使用できないとされてきました。
しかし、最近では症例データが増えたことや技術的な問題がクリアされてきたことにより、早ければ小学生低学年から中学生・高校生など10代に対応したプランが提供されており、比較的早い段階からマウスピース矯正が可能となっています。
顎が小さい子供が増加中?
「現代の子供は昔よりも柔らかい、噛まなくても飲み込めるものばかり食べるので、顎の力が衰え、顎が小さくなった」これが歯並びの悪さの原因などという話を耳にすることがあります。しかし「昔に比べて子供の顎が小さくなった」ということを証明する有意な検査資料などは見当たりません。
ただし、顎の骨はともかく顎の筋肉があまり発達しなくなっている=子供の頃から顎を鍛える機会が減っていることは事実でしょう。顎のサイズではなく、顎・口まわりの筋肉の衰えが歯列の乱れを招いているという仮設は成り立つようです。
子供の歯並びが悪くなる原因
子供の歯並びが悪くなる原因は、先天的なもの(遺伝、生まれつき)、後天的なもの(口腔習癖など)に大別できます。これらについて代表的なものを説明していきましょう。
おしゃぶりと歯並びの関係
乳幼児期の子供におしゃぶりを与えるのは悪いことではありませんが、「鼻呼吸が身につく」などのメリットと「歯並びが悪くなる原因になる」などのデメリットが共存します。
2歳半くらいをメドとしてやめさせるべき、という意見が多いようです。
口呼吸と歯並びの関係
乳幼児期~幼児期に「鼻孔が狭い」などの理由で鼻呼吸がしづらいと、口呼吸の癖がつく原因になります。
口呼吸は「口が常に半開きになり、顎・口まわりの筋肉が発達しない」といった理由で、子供の歯並びが悪くなる原因になると考えられています。
悪癖と歯並びの関係
子供によく見られる口腔習癖(歯並びを乱す原因になる悪癖)には「吸指癖(指を吸う)、舌癖(舌で歯を押す)、咬唇癖(唇で歯を押す)、爪噛み」などがあります。これらの悪癖によって、歯に一定方向への強い力が頻繁に加わることが原因で、歯は望まない方向に動いてしまいます。
また、口呼吸は歯に力を加えませんが、上記で説明したように顎の筋肉の発達の妨げになることから歯並びの悪さの原因になります。
遺伝と歯並びの関係
「歯並びが悪い」ということ自体が遺伝するわけではないのですが、親子の顔が似ているように、骨格や骨の形状、歯の大きさなどが遺伝で似る結果、歯並びの悪さも遺伝してしまうことの原因となります。
親、もしくは親戚の多くに同じ不正咬合が見られる場合、子供に同じ兆候がみられないか幼いうちから注意して観察しておく必要があるでしょう。
虫歯と歯並びの関係
「乳歯は虫歯になってもどうせ永久歯に生え変わる」と子供の虫歯を軽視する保護者の方もいらっしゃるようですが、虫歯によって乳歯が早く失われると永久歯の成長に悪い影響を与え、永久歯の歯並びが悪くなってしまう原因となります。
できるだけ早いうちに小児歯科で適切な治療を受けさせましょう。
不正咬合で起こるリスク
幼児期~子供の頃の不正咬合は、症例によっては成長につれて自然治癒する可能性もゼロではありませんが、大抵の場合は永久歯や歯列に影響を与え、不正咬合の度合いが増していくことを想定しておくべきでしょう。
歯並びの悪さは、単に「ものが噛みにくい」というだけでなく、顔が左右対称でなくなる(バランスが崩れる)・滑舌が悪くなるなど、成長につれて子供の心身に与える影響が大きくなりかねません。確かに「大きくなってみないとわからない」面もありますが、できるだけ早く歯科医師に診せておくべきでしょう。
子供のマウスピース矯正のメリット
子供でも始められるマウスピース矯正には、前述したとおりプレオルソやインビザラインをはじめとしたマウスピース矯正などがあります。子供の歯列矯正にマウスピース矯正を選択することのメリットには次のようなものが挙げられます。
取り外しが可能だから虫歯になりづらい
歯に矯正装置を固定するタイプの矯正方法は、歯が磨きづらく大人でも虫歯になりやすいといわれています。細かなブラシコントロールの難しい子供ではなおさらのことでしょう。
マウスピース矯正ならマウスピースを一時的に取り外すことができますから、適切なブラッシングやフロッシングで虫歯を予防しやすいといったメリットがあります。
装着感が良く気にならない
ワイヤーやブラケットをつかった矯正法では、舌を傷つけたり違和感が強かったり、あるいは子供の目にも矯正装置がよく目立ったりと、いろんな意味で負担が大きいものと思われます。
「マウスピース矯正ならまったく違和感がないか?」といわれると個人差もあるでしょうが、少なくとも他の矯正法よりは目立たず、違和感も少ないと言われています。
おすすめはできませんが、どうしても嫌がるようなら一時的にマウスピースを外して様子をみることもできるでしょう。これはマウスピース矯正の大きなメリットとも言えます。
子供のマウスピース矯正のデメリット
子供のマウスピース矯正には上記のようなメリットがある反面、デメリットも存在します。
装着時間の管理を子供任せだと失敗する可能性がある
マウスピースを自分で外すことができるのはマウスピース矯正の大きなメリットですが、子供の場合、判断力や自制心の不足から「保護者が見ていないところで勝手にマウスピースを外す」「ちゃんと装着していたと嘘をつく」といった可能性も否定できません。
装着時間を守る大切さを教えることも大切ですが、周囲の大人が注意して管理してあげる環境でないと「外せること」が大きなデメリットとなり、矯正自体が失敗することにもつながりかねません。
歯の生え変わりや成長過程によっては大人になってから矯正が必要になる
マウスピース矯正は子供の歯の成長過程を骨格などからある程度予測し、予測に基づいて次に装着するマウスピースを設計製作します。しかし、成長は完全には予測しきれません。このため、大人になって成長が止まってから改めて矯正治療を追加しなくてはならない場合があります。これはデメリットというより、成長期における小児矯正の限界ともいえるでしょう。
子供と大人のマウスピース矯正の違い
子供と大人のマウスピース矯正は目的が大きく違います。
成長期の子供は成長が著しいだけでなく、年齢によって細かく成長の内容が異なります。このため、一般的な矯正歯科ではなく小児歯科や小児矯正歯科の歯科医師と相談しながら矯正を進めていく必要があります。こうした違いを理解せずに早期から安易に矯正を始めてしまうと、高校生~大学生になったとき、思いがけない弊害が生じないとも限りません。スタートのハードルの低さがデメリットにならないよう、保護者にも一定の理解や知見が必要でしょう。
子供のマウスピース矯正のよくある質問
子供のマウスピース矯正に際して、よく歯科医師に寄せられる質問とその答えを掲載しておきます。
Q.子供のマウスピース矯正での通院頻度はどれくらいですか?
A.マウスピース矯正の通院頻度は平均的にはおよそ1か月とされており、大人と子供に大きな違いはありません。ただし歯科医師の判断や歯の状態によっては、もっと受診間隔が短くなる可能性もあります。
Q.子供のマウスピース矯正は痛みがありますか?
A.マウスピース矯正用のマウスピースはこまめに交換していきますので、成長によって窮屈になることが原因で子供が「痛い」と訴えるようなこともあります。もし痛みを訴えるようなら我慢させず、歯科医院を受診しましょう。「痛がるのでしばらくマウスピースを外して様子を見る」といった自己判断は避けるようにしましょう。
Q.子供のマウスピース矯正で抜歯はしますか?
A.「マウスピース矯正で、どんな症例でも抜歯せずに治せる」などと宣伝している矯正歯科もあるようですが、状況によって抜歯が必要になることもあります。特に子供の乳歯の場合は、健常な永久歯の妨げにならないよう抜歯が必要になる場合があります。
Q.矯正期間中に虫歯ができたらどうなりますか?
A.マウスピース矯正では、矯正と並行して虫歯治療が可能ですが、矯正を虫歯治療の期間は止める場合もあります。矯正治療には、定期的に歯科医師の検診を受けることで、子供の虫歯を早期発見できるというメリットもあります。
Q.子供のマウスピース矯正は何歳までできますか?
A.一般的には「顎の骨の成長が終わるまで」で、それ以降は大人向けのマウスピース矯正に切り替えます。矯正システムによっては、子供から大人までシームレスな矯正が可能なものもあります。
【まとめ】子供のマウスピース矯正はいつからできるの?
子供のマウスピース矯正の開始時期やメリット・注意点について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
この記事のおさらい
- 子どもの矯正は、骨格を整える「Ⅰ期」と永久歯を並べる「Ⅱ期」に分かれる
- マウスピース矯正は、永久歯が生え始める混合歯列期から本格的に検討できる
- 顎を広げたり、口周りの筋肉を鍛えたりすることで将来の抜歯リスクを減らせる
- メリットは「虫歯になりにくい」「目立たない」「痛みが少ない」こと
- 失敗しないためには、装着時間の徹底した管理と専門医による適切な診断が不可欠
お子様の矯正は、単に歯をきれいに並べるだけでなく、成長期の骨格を整えて将来の健やかなお口の環境を作る大切なステップです。
取り外しができるマウスピース矯正は、清潔を保ちやすく痛みが少ない一方で、本人の協力や保護者の方のサポートが欠かせない治療でもあります。
お子様の歯並びや顎の成長には個人差があります。少しでも「早いかな?」と迷った時こそ、まずは歯科医院で相談し、お子様にとってベストなタイミングで治療をスタートさせてあげましょう。
参考文献
“子どもの矯正歯科治療、始める前に”ココ”をチェック!”. 日本臨床矯正歯科医会. http://www.jpao.jp/15news/1525trendwatch/vol13/index02.html, (参照 2019-05-27)
“床矯正治療を始めましょう”. 国際歯科学士会. http://www.icd-japan.gr.jp/pub/vol43/vol43_20.pdf, (参照 2019-05-27)
“日歯8020TV 乳歯列期の不正咬合の見つけ方とその対処法”. 日本歯科医師会. https://www.jda.or.jp/tv/33.html, (参照 2019-05-27)
“日歯8020TV 混合歯列期の不正咬合の見つけ方とその対処法”. 日本歯科医師会. https://www.jda.or.jp/tv/34.html, (参照 2019-05-27)
“プレオルソ”. Forest-one. http://www.forest-one.co.jp/ortho_detail_1_1/, (参照 2019-05-27)

