子供の受け口(反対咬合)はいつから治せる?小児矯正や自分で治す方法も解説

子供の受け口(反対咬合)はいつから治せる?小児矯正や自分で治す方法も解説

小児の不正咬合には、切端咬合や過蓋咬合、開咬などいろいろな種類があります。

その中で上下顎の乳前歯の被蓋関係が連続して2歯以上唇舌的に逆になっている不正咬合を反対咬合といいます。

実は、乳歯列期の反対咬合、いわゆる受け口は、小児の不正咬合の中でも発現頻度が高く、年齢的推移では1歳6か月〜4歳のトップになっています。

乳歯の反対咬合は治療したほうがいいのでしょうか。

そして、治療するならいつごろからとりかかるべきなのでしょうか。

今回は、矯正治療の方法も含めて、小児の反対咬合について解説します。

目次

小児の反対咬合とは

乳歯列期の反対咬合は、歯性反対咬合、骨格性反対咬合、そして機能性反対咬合の3種類に分けられます。

歯性反対咬合は、上下顎乳前歯の歯軸の傾斜異常によって生じた反対咬合です。

骨格性反対咬合は、上顎骨の劣成長や下顎骨の過成長が原因です。

機能性反対咬合は、乳前歯部の咬合干渉によって下顎の顎位が前方に誘導される反対咬合です。

これらのうち、自然治癒の可能性があるのは歯性反対咬合のみで、残りの反対咬合は早期に治療すべきとされています。

ただし、自然治癒の可能性があるとはいえ、歯性反対咬合も治癒するまでの期間に顎骨や顎関節の成長発育に悪影響を及ぼしますので、早期治療が望ましいです。

小児の反対咬合を放置すると

小児期の反対咬合などの上下顎の対向関係の異常は、放置すると顎骨の発育の抑制や過成長、筋機能の発達抑制などを引き起こす可能性が高いです。

こうした悪影響は、咀嚼障害や発声障害などの口腔機能障害として出現します。

咀嚼障害

反対咬合になると、咀嚼筋群の協調失調や顎反射の低下により咀嚼運動の周期や開閉口時間が延長することが知られています。

すなわち咀嚼リズムの悪化による咀嚼障害が引き起こされます。

構音障害

反対咬合では、上下顎前歯の切端間に舌尖を置くことで生じる歯間音が発生しやすくなります。

この原因は、発音の際に空気が必要以上に漏れ、発音しにくくなることです。

特にサ行やタ行の発音が難しくなります。

下顎骨の過成長

機能性反対咬合では、下顎を前方に突出させて咬合します。

下顎骨は下顎頭部での軟骨性骨形成によって、前下方に成長します。

下顎位の突出による刺激は、下顎骨の上後方への骨形成を過剰に促進するため、下顎骨の過成長をきたします。

矯正治療の時期

反対咬合や交叉咬合などの小児の上下顎の対向関係の異常が認められる場合は、顎骨の成長発育や筋機能の発達に悪影響を及ぼすリスクがあります。

何歳ごろから矯正治療にとりかかるべきなのでしょうか。

開始時期

原則として、乳歯列期から処置を開始することが推奨されます。

乳歯列期の反対咬合は、年とともに自然治癒することもありますが、異常を認める発育環境の改善という視点からも乳歯列期の段階から処置を開始したほうが良いです。

また、乳歯列の不正咬合の原因の40%は不良習癖と言われていますので、習癖の是正はできるだけ早期に行うべきです。

治療期間

口腔領域の成長発育は、部位によっては10歳前後でほぼ完了するところもありますが、全体的には18歳ごろまで継続します。

顎骨だけでなく歯槽部の成長発育も利用できるので、成長発育が完了するまでの期間、治療を継続することが望ましいです。

小児の反対咬合の治療法

小児の反対咬合を認めた場合、どのような治療法があるのでしょうか。

子供矯正の種類と使われる装置の役割

咬合調整

機能性反対咬合であれば、咬合調整だけで改善できる場合があります。

例えば、乳犬歯が咬合干渉することで下顎前歯が逆被蓋になっている場合、上下顎の乳犬歯の切端を削合することで、解消されることがあります。

ただし、咬合調整は歯牙の削合を伴う処置なので、歯髄炎などのリスクを下げるためにも数回に分けて行わなければなりません。

急速拡大装置

急速拡大装置

急速拡大装置とは、上顎臼歯に装着する固定式の矯正装置で、上顎骨の狭窄による骨格性反対咬合の治療に効果があります。

急速拡大装置には拡大ネジが設けられており、このネジを回すことで上顎正中口蓋縫合を離開させ、上顎歯列弓を拡大させます。

1日1回拡大ネジを回すと、1日あたり0.20.25mmほどのペースで上顎骨を拡大できます。

緩徐拡大装置

緩徐拡大装置は、歯列に頬側に向かう圧力を加えることで、歯槽骨を拡大する矯正装置で、上下顎それぞれに適応があります。

急速拡大装置と異なり、加えられる力が弱いので縫合部を拡大するような作用はありません。

金属バンドで固定するタイプと、床装置で取り外しが可能な可撤式の2種類があります。固定式はワイヤーの弾性で歯列弓を拡大します。一方、可撤式では、床装置の中央に設けられた拡大ネジを回転させることで歯列弓を拡大します。

拡大ネジは1回につき90度回転させます。90度の回転で0.25mm拡大できるようになっており、1週間に1回ずつ回転させて歯列弓を広げます。

筋機能矯正装置

筋機能矯正装置とは、可撤式矯正装置の一種です。

代表的なものは、咬合斜面板です。

咬合斜面板は下顎に装着し、斜面板に上顎の乳前歯が接触することで上顎乳前歯の前方傾斜と下顎前歯の後退を促進することで、反対咬合を解消します。

日中の装着を嫌がる場合には、エラスティック・オープン・アクチベーター(E.O.A)とよばれる夜間装着型もあります。

このほかに、既成のマウスピースタイプもあります。

既製品のマウスピースでは、ほとんどの製品で、サイズが豊富に作られており、そこから適したサイズを選ぶようになっています。

上顎骨前方牽引装置

上顎骨前方牽引装置は、上顎骨の劣成長による骨格性反対咬合の治療に用いられる矯正装置です。おおむね7〜10歳ごろにかけて用いられます。

上顎骨前方牽引装置は、前顎部とオトガイ部の二点を固定源として、上顎の歯列にエラスティックをかけます。このエラスティックの作用で上顎骨に前方に向かう圧力を加えます。装着時間は1日あたりおよそ10時間です。

こうして、上顎骨前方牽引装置は上顎骨の前方への成長を促進して上顎骨の劣成長を解消します。

チンキャップ

チンキャップ

チンキャップとは、後頭部のバンドとオトガイ部の半球状の当て部で構成される矯正装置で、下顎骨の過成長による骨格性反対咬合の治療に適応があります。

チンキャップを使用すると後頭部を固定源として、下顎骨の過成長を抑制する効果が得られます。チンキャップは、1日あたり10時間程度装着します。

この矯正装置はおおむね10歳以降の子供の下顎前突症の改善に用いられます。

小児の反対咬合のセルフケア

未就学の低年齢児の乳前歯部の反対咬合、もしくは交叉咬合であれば、程度にもよりますが、自分で改善を試みることができます。

まず、割り箸やアイスクリームについている木製のヘラなどを準備します。

反対咬合や交叉咬合を生じている乳前歯の口蓋側にヘラを当てて、数秒間唇側方向へ向けて圧力をかけるだけです。これを1日あたり数回繰り返します。しばらく継続していると前歯部の被蓋関係が改善され、反対咬合や交叉咬合が解消されます。

低年齢児の反対咬合が気になっている場合は、歯科医師の診察を受け、相談のうえで是非お試しください。

小児の反対咬合と保険診療

小児の反対咬合の治療は、保険診療の適応外となります。

しかし、永久歯の矯正治療と異なり、治療期間は長期に及びます。そこで、乳歯列期・混合歯列前期・混合歯列後期・第二大臼歯萌出以降期など、歯列の成長発育段階に応じて料金を設定しているなど、永久歯の矯正治療と異なる算定方法を採用している歯科医院が多いです。

【まとめ】子供の受け口(反対咬合)はいつから治せる?小児矯正や自分で治す方法も解説

今回は、小児の反対咬合とその治療法などについてご説明しました。

小児の反対咬合は自然治癒することもありますが、顎骨などへの影響を考えると早期に治療する方が望ましいです。

もし、小児の反対咬合症例を認めた場合は、今回の記事を参考にしていただければと思います。


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