「キシリトールは歯に良い」という話は、テレビCMやパッケージの表示などで一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。キシリトールは、スーパーやコンビニで売られているガムやタブレットの多くに配合されており、今や私たちの生活に欠かせない甘味料となっています。
しかし、なぜキシリトールが虫歯予防に効果的なのか、その具体的なメカニズムや正しい摂取方法まで詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。
キシリトールは、天然の樫の木や白樺などを原料とする糖アルコールの一種です。砂糖と同等の甘さを持ちながらカロリーは控えめで、何より他の甘味料にはない特別な「虫歯を防ぐ力」を持っています。その効果はWHO(世界保健機関)などの国際機関でも認められており、正しく活用することで日々のオーラルケアの質を大きく向上させることができます。
この記事では、キシリトールの虫歯予防における効果と虫歯を防ぐメカニズム、そして効果を最大限に引き出すための効率的な摂取方法を詳しく解説します。
この記事を読むことで、キシリトールがなぜ虫歯菌の働きを抑えるのか、他の甘味料と何が違うのかを論理的に理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
こんな疑問が解決
- キシリトールを食べるとなぜ虫歯になりにくくなるの?
- 他の「糖類ゼロ」の甘味料とキシリトールの違い
- 効果的な食べ方や選ぶべき商品の基準
- キシリトールさえ食べていれば、歯磨きは適当でも大丈夫?
キシリトールとは

キシリトールは砂糖と同程度の甘さがありますが、砂糖のカロリーが約4cal/gに対して、キシリトールのカロリーが約3cal/gと砂糖に比べてやや少ないです。
1970年代にフィンランドでキシリトールと歯との関係の研究が開始し、1983年には国際的な機関である国連食料農業機関(FAO)や世界保健機関(WHO)からも効果が認定された物質です。日本においても1997年に厚生労働省から認可を得ています。
キシリトールは天然にも存在する糖アルコールの一種です。樫の木や白樺から精製され、工業的にはキシランヘミセルロースを加水分解し、水素添加することで生成することができます。
キシリトールは水に溶けると熱を奪う性質があり、口の中に入れると独特の冷感があります。また体内で代謝するにあたり、インスリン(血糖を下げるホルモン)が必要ないため、糖代謝に異常のある人が摂取しても影響は少ないとされています。
糖アルコールにはソルビトール(甘味度は砂糖の60%から70%)、マンニトール(甘味度は砂糖の70%程度)、マルチトール(低カロリー甘味料)などが存在しますが、虫歯予防の効果が認められているのはキシリトールだけです。
キシリトールが虫歯にならないメカニズム

キシリトールが虫歯予防に関与するメカニズムを語る前に、まずどうして虫歯になるのでしょうか。
甘いお菓子やジュースがお口の中に入ると、それを細菌が食べ酸を産出します。この酸が歯の表面を脱灰し、酸性状態にします。すると歯の中に含まれるカルシウムやリン酸が溶けます。これが脱灰です。
脱灰によってカルシウムやリン酸が失われたとしても、通常は唾液の緩衝作用で中性にし、さらに唾液中に含まれるカルシウムやリン酸が歯に沈着し再石灰化へと誘導します。しかし、脱灰の状態が長く続いてしまうと、唾液の緩衝作用や再石灰化作用が追いつかなくなり、初期虫歯へと繋がります。これが虫歯のできるメカニズムです。
キシリトールは口腔内に入ると味蕾(みらい)が刺激されて、唾液分泌が促されます。唾液分泌促進により口腔内のカルシウム濃度が上昇し、またキシリトールとカルシウムが結合して再石灰化の能力が向上します。これは、ソルビトールやマルチトールといった他の糖アルコールにもみられる特徴です。
キシリトール独自の特徴としては、プラーク中のショ糖を分解するシュクラーゼの活性を低下させ、プラーク中での酸産生を抑制します。またアンモニア濃度を上げることによって、産生された酸を中和することができます。
さらにキシリトールには、ミュータンス連鎖球菌群を含む連鎖球菌に対する抗菌性もあります。具体的には、キシリトールを細菌内に取り込むと、ホスホエノールピルビン酸依存ホスホトランスフェラーゼシステムによって、キシリトール5リン酸に代謝されます。このキシリトール5リン酸は、これ以上代謝することなく細胞内に蓄積され、糖代謝の一翼を担う酵素であるホスホフルクトキナーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、ピルビン酸キナーゼを阻害し、細菌の生命維持に必要なエネルギー産生を低下させます。
ミュータンス菌の中には、キシリトールを取り込まない性質を持ったものもいます。キシリトールに非感受性のミュータンス菌です。この非感受性のミュータンス菌はキシリトール摂取を継続していくと、感受性のミュータンス菌が減少する代わりに増加していきます。しかし、非感受性のミュータンス菌は酸産生が少ないため、数が増加したとしてもそれほど問題ではありません。
効率の良いキシリトールの摂取方法

キシリトール含有の食品(野菜や果物)やケーキやジュースを食べたり飲んだりしても、キシリトールの効果を発揮することはありません。なぜならば、キシリトールが低濃度であり、口腔内に貯留することができないからです。
キシリトールの効果を十分に発揮するものは、キシリトールが高濃度含有されているガムやタブレットです。キシリトールが50%以上配合されているガムやタブレットを5gから10gほど毎食後に摂取し、少なくとも3か月以上摂取しなければ十分な効果を得ることができません。
ただし、キシリトールを摂取する前にもっと大切なことがあります。それはしっかりと歯を磨くことと、フッ化物の応用を積極的に進めることです。キシリトールによる虫歯予防は、これらが前提として成り立つものであり、逆に言えばこれらがしっかりと確立していないと十分な効果が発揮できません。
【まとめ】キシリトールの虫歯予防における効果と成分について
キシリトールの虫歯予防における効果と成分について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
この記事のおさらい
- キシリトールは唾液の分泌を促進し、歯の再石灰化をサポートする
- キシリトールには他の糖アルコールにはない、ミュータンス菌の酸産生を抑制する独自の効果がある
- 虫歯予防として活用するなら、キシリトール50%以上配合のガムやタブレットが効果的
- 1日5~10gを目安に3か月以上継続して摂取することが推奨される
- キシリトールはあくまで補助的なもので、毎日の丁寧な歯磨きとフッ化物の活用が前提となる
キシリトールは単なる「砂糖の代用品」ではなく、唾液の分泌を促して再石灰化を助ける効果や虫歯の原因菌であるミュータンス菌の活動を直接阻害するという独自の働きを持っています。しかし、その恩恵を十分に受けるためには、含有量や摂取期間、そして何より基本となるブラッシングとの組み合わせが重要です。
キシリトールは、私たちの歯を守るための強力なサポーターです。しかし、魔法の薬ではないため、これだけに頼るのではなく、日々の正しいブラッシングや定期的な歯科検診と組み合わせることが大切です。正しい知識を持ってキシリトールを習慣に取り入れ、いつまでも健康で強い歯を維持していきましょう。

