伝染性単核球症(キス病)とは?【原因・症状・診断・治療・予防】

伝染性単核球症(キス病)とは?【原因・症状・診断・治療・予防】

「最近、体がだるくて熱がなかなか下がらない」「喉がひどく腫れていて食事がつらい」といった症状に悩まされてはいませんか?
もしかするとそれは、単なる風邪ではなく「伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)」かもしれません。
この病気は主に唾液を介して感染することから、別名「キス病」とも呼ばれています。
あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、実は誰もが感染する可能性のある身近な疾患です。特に思春期から青年期にかけて発症しやすく、放置すると重症化したり、日常生活に支障をきたすような合併症を引き起こしたりするリスクも秘めています。

この記事では、伝染性単核球症(キス病)の原因・症状・診断方法・治療法、そして日常生活でできる予防法までを詳しく解説します。
この記事を読むことで、伝染性単核球症の全体像と適切な対処法を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。

こんな疑問が解決

  • 伝染性単核球症(キス病)とはどのような病気なのか?
  • どのような経路で感染し、どんな症状が出るのか?
  • 風邪や他の病気とどのように見分けるのか?
  • 感染してしまった場合、どのような治療が必要なのか?
  • 周囲への感染を防ぐための注意点は?

伝染性単核球症(キス病)の原因

伝染性単核球症の原因ウイルスは、エプスタインバーウイルス(EBウイルス)と呼ばれるヒトヘルペスウイルス4型に感染することで発症します。
ただし、EBウイルスによる感染症はほとんどが無症状であるため、EBウイルスに感染したからといって全ての人が伝染性単核球症を発症するわけではありません。
感染経路として血液製剤の輸血がありますが、EBウイルスを排出している者とのキスによるものがほとんどです。
EBウイルスはキスによって上咽頭で増殖後、Bリンパ球に感染し、異型リンパ球が発生します。
EBウイルスに初感染後、EBウイルスは宿主内のBリンパ球に半永久的に残存し、無症状のまま中咽頭から間欠的に排出されます。

伝染性単核球症(キス病)の症状

伝染性単核球症は症状として、頭痛・咽頭痛・全身倦怠感・リンパ節の腫れなどが挙げられますが、症状の程度には個人差が大きく、健康な人では2週間程度で症状が治まり通常の生活に戻ることができます。ただし、全身倦怠感は数か月続くことがあります。
EBウイルスは感染しても気がつきにくい疾患ではありますが、何らかの全身疾患を持っている患者さんでは重症化や合併症のリスクが高まるため注意が必要です。また、EBウイルス感染後の症状は先にも述べたようにほとんどが無症状ですが、潜伏期間は30~50日になります。

発熱

午後や夕方に39.5℃付近でピークとなりますが、40.5℃まで達することもあります。

咽頭炎

重度の咽頭炎の場合、有痛性および滲出性のことがあります。

リンパ節腫脹

前頸部および後頚部リンパ節の両側の腫脹がみられます。

その他の症状

その他の症状として以下のものが挙げられます。

  • 脾腫
  • 軽度肝腫大・肝打診痛
  • 眼窩周囲浮腫
  • 口蓋の点状出血
  • 斑状丘疹状の発疹
  • 黄疸

伝染性単核球症(キス病)の診断

伝染性単核球症の症状は他のウイルス・細菌感染症の症状でも見られるものであり、咽頭炎・発熱などの所見のみでは鑑別診断が困難となります。ただし、前頸部リンパ節の腫脹がみられる場合には伝染性単核球症の疑いがあります。
伝染性単核球症は、次の血液検査によって確定診断されます。

異好抗体検査

異好抗体は各種カード凝集試験により測定されますが、異好抗体は5歳未満の患者では50%、成人でも保有率は80~90%です。
また、一部の急性HIV感染症患者で偽陽性となることもあります。したがって、異好抗体が陰性の場合には、伝染性単核球症の異好抗体の力価と保有率は疾患の第2週~3週に上昇することから、症状出現後7~10日後に検査を繰り返すことで確定診断します。

EBV血清学的検査

伝染性単核球症は、異型リンパ球が白血球の30%程度を占めることが特徴的です。この異型リンパ球は白血病リンパ球に類似していますが、伝染性単核球症は全体のリンパ球の形態は均一ではないことから白血病との鑑別が可能となります。

伝染性単核球症(キス病)の治療

伝染性単核球症に特別な治療法は必要なく、身体がしんどいときには安静にする、痛みがひどいときには解熱鎮痛薬を飲むなどといった治療法で十分に効果があります。

安静

症状が重い最初の1~2週間は安静にし、症状軽快後は通常の生活に戻ることができます。
ただし、伝染性単核球症には脾腫がみられる場合があるため、激しい運動やコンタクトスポーツにより腫脹した脾臓が破裂する危険性があります。このため、1か月経過後に医療機関を再受診し、超音波検査などで脾臓が正常な大きさに戻っていることを確認する必要があります。

鎮痛薬

伝染性単核球症は発熱・疼痛を伴うことがありますので、高熱や痛みがひどい場合にはアスピリン・イブプロフェンなどの非ステイロイド系抗炎症薬やカロナールなどのアセトアミノフェンを使用します。

抗菌薬

扁桃炎などに混合細菌感染を合併している場合には、抗菌薬が投与される場合があります。その場合、抗菌薬はペニシリン系を避け、セフェム系・マクロライド系・ニューキノロン系抗菌薬の使用が推奨されます。

コルチコステロイド

コルチコステロイドは迅速な解熱作用・抗炎症作用があり、咽頭炎や高熱を軽減しますが、合併症のない症例には基本的に推奨されていません。

入院

伝染性単核球症は基本的には上記の治療法が行われますが、合併症を引き起こしている場合は更なる治療が必要です。
例えば、摂食困難による栄養状態不良、重度の肝機能障害、心筋炎、上気道狭窄による呼吸苦、溶結性貧血、特発性血小板減少症などの重度の合併症がみられる場合には、専門の医療機関での入院治療が必要となることがあります。

伝染性単核球症(キス病)の予防

伝染性単核球症のワクチンは、開発されていません。
EBウイルスは唾液を介して感染するため、できる限り回し飲みや口移しを控えることが唯一の対策になります。

【まとめ】伝染性単核球症(キス病)とは?【原因・症状・診断・治療・予防】

伝染性単核球症(キス病)の原因から症状、診断、治療、そして予防法について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。

この記事のおさらい

  • 伝染性単核球症は「EBウイルス」が原因で、主に唾液を介して感染する
  • 主な症状は、発熱、喉の痛み(咽頭炎)、首のリンパ節の腫れの3つ
  • 診断には血液検査(異型リンパ球の確認など)が用いられる
  • 特別な特効薬はなく、安静と症状を和らげる治療(対症療法)が基本となる
  • 回復後もしばらくは脾臓破裂のリスクを避けるため、激しい運動を控える必要がある

伝染性単核球症は聞き慣れない病名に不安を感じる方もいるかもしれませんが、多くの場合は適切な安静と対症療法によって、数週間で回復に向かう病気です。しかし、脾臓の腫れなど特有の症状があるため、自己判断で激しい運動を再開するのは危険を伴うこともあります。また、口腔内に症状が現れることも多いため、歯科医院での検診をきっかけに見つかるケースもあります。
もし、長引く発熱や喉の腫れ、首周りの違和感がある場合は、無理をせず早めに医療機関を受診しましょう。早期に適切な診断を受けることが、早期回復と合併症予防への第一歩となります。

出典・参照

林宰央他. 歯科臨床で遭遇する伝染性単核球症. 歯科学報. 115(1): 29-33. https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/3549/1/115_29.pdf, (参照 2021-6-8)

Kenneth M. Kaye. 伝染性単核球症. MSDマニュアル 家庭版. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/16-感染症/ヘルペスウイルス感染症/伝染性単核球症, (参照 2021-6-8)

Kenneth M. Kaye. 伝染性単核球症. MSDマニュアル 家庭版. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/13-感染性疾患/ヘルペスウイルス/伝染性単核球症, (参照 2021-6-8)

伝染性単核症とは. 国立感染症研究所. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/444-im-intro.html, (参照 2021-6-8)


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